国土交通大臣が、5日、県の撤回処分を不服とした沖縄防衛局長の審査請求を認め、撤回は違法だとして取り消す裁決を下した。政府内部の、まさに自作自演というべき茶番劇に怒りの声が沸き上がっている。
今回の裁決の大きな理由とされたのが、国交相が日下部東工大名誉教授に依頼した鑑定書である。この鑑定書は、①改良工事の工法選択は適切で実行は可能、②適切な施工管理を実施することで、安定性を確保した施工は可能、③環境への影響の検討は概略検討としては適切と結論したものである。
鑑定書の詳細な検討については今後、各方面からなされるだろうが、ここでは2つの疑問点を指摘しておきたい。
まず、この鑑定書が書かれたのは、本年3月14日である。ところが、3月22日には、国交省の審理員意見書が出され、今回、ほぼ意見書通りの裁決がなされている(沖縄タイムス 2019.4.6)。鑑定書が出されてから審理員意見書をまとめるまでわずか8日間しかなかった。鑑定書の内容が十分に検討されたとは思えない。。
また、この鑑定書は、政府の従来の見解をそのまま適切としたものだが、次のような指摘は見過ごせない。
・「引き続き詳細検討が行われ、断面の修正、地盤調査・土質試験の追加の可能性も含め、『必要があれば前段階に溯って再検討を行う』ことは想定されている。」
・「詳細設計で要求される詳細調査では、必要に応じ、より密度の高い地盤調査や土質試験を実施するなどしてより精緻な解析を実施するのが有益と考えられる。」
・「必要に応じ、追加の地盤調査・土質試験が計画・実施されることも想定される。」
すなわち国交相が依拠した日下部名誉教授の鑑定書は、さらなる地盤調査・土質試験の必要性を指摘しているのだ。政府報告書は、あくまでも概略検討の段階では認められるとしても、今の調査内容のままでは、詳細設計に入ることはできないとしている。
政府はまず、追加の地盤調査・土質試験を実施しなければならない。