沖縄県内全域から辺野古埋立のための土砂が調達される。特に問題となるのは、南部地区(糸満・八重瀬)での土砂採取である。この一帯では、戦争当時、多くの人たちが亡くなり、今も、多くの遺骨が残されたままになっている。南部地区の土砂を戦争のための軍事基地造成のために使うことは許されないという怒りの声が高まっている(本ブログ 11月28日等を参照されたい)。
(沖縄ドローンプロジェクト提供)
具志堅隆松さんが特に訴えておられるのが、糸満市の魂魄の塔付近、東京の塔の北側斜面で始まった土砂採取である。具志堅隆松さんらのガマフヤーのメンバーは、この付近で本年9月末から遺骨収集活動を始められている。
しかし今年9月、沖縄総合事務局はこの一帯について、採掘業者から出された鉱山開発のための施業案を認可してしまった。すでに現地は、立木が一面に伐採され、重機が持ち込まれて土地の形質変更が始まっている。
(沖縄ドローンプロジェクト提供)
いろいろ調べてみると、この一帯は「沖縄県戦跡国定公園区域」の「普通地域」に指定されており、自然公園法第33条1項により「土石の採取、土地の形状変更」等にあたっては事前に知事への届出が必要である。届出がないまま開発行為を始めた場合は、同法第86条により罰則規定まで定められている。
ところが、沖縄県自然保護課で確認したところ、この一帯の開発にあたっては、県への届出が出されていないことが判明した。明かな自然公園法違反である。そのため県は先月半ば、業者に対して工事を中止するよう指示したという。
(「沖縄県戦跡国定公園区域」 沖縄県自然保護課のホームページより)
現地は、「沖縄県戦跡国定公園区域」の「普通地域」(上の図の青色部分)だが、すぐ上には平和創造の森公園の東京の塔があり、「第2種特別地域」(赤色部分)に指定されている。東京の塔直下の斜面を崩して土砂を採取すれば、「第2種特別地域」に影響が出ることも危惧される。
沖縄県は、今回の違法行為に対して、工事中止命令は出したが、今後の対応については「現在、検討中」という。辺野古への土砂を搬出している琉球セメント安和鉱山の森林法違反の林地開発事件もそうだが、こうした違反行為に対する県の対応には残念な点も多い。県の毅然とした対応を求めたい。
防衛局は、辺野古埋立のための土砂採取について、「必要な環境対策は、各調達先の事業者において講じられている」、「防衛局としてコメントする立場にはない」と言い続けている(2020.8.21 防衛省交渉等)。しかし、実際には土砂採取に際しては、違法行為が相次いでいるのが実態だ。