辺野古新基地建設に関連して、シュワブ基地内の既設建物解体工事が進められている。どの建物にもアスベストが使われているが、昨年7月に防衛局が大気汚染防止法に基づく手続きを行わないまま解体作業に入ったことが問題となり、工事は長く中断のやむなきに至った。その後も我々は、その処理方法や説明会の開催等をめぐって防衛局や県に対して申し入れを続けてきた。こうした取組みができたのも、防衛局や県に対して何回もの公文書公開請求を続けてきたからだ。
昨年12月8日には、アスベスト除去作業の状況をチェックするために県の環境生活部、土木建築部、名護市、名護労働基準局が現地への立入り調査を行った。その際に県の職員が撮影した写真、報告書を公文書公開請求したところ、1月23日(金)、その開示があった。
結果は、63枚の写真の全てが不開示とされた。その理由は、「沖縄防衛局に確認したところ、『写真の開示を米国が認めていないため、公にすることにより、米国との信頼関係が損なわれる恐れがある』として不開示を求めていることから、当該写真を開示することにより、今後の立入等、県の事務の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあるため」というものだった。(沖縄県情報公開条例第7条第7号に該当するという。)
(全て不開示となったアスベスト処理に関する立入調査写真(一部))
不開示となった写真は、たとえば建物前の掲示板、保護具やマスク等の使用機材、養生の状況、廃石綿の梱包状況、保管コンテナ、コンクリート殻分別状況等の写真だ。防衛局から県に寄せられた文書では、「開示を米国が認めていない」というが、これらの写真は米軍施設に関するものではなく、マスクや保護具等の写真の開示まで米国が認めないというのは信じがたい。県には米軍からの不開示を求める文書も寄せられておらず、おそらくは、アスベスト問題で追求されることを恐れた防衛局が勝手に言っている疑いが強い。
たとえば北部訓練場のヘリパッド工事でも、赤土等流出防止条例に基づき、県環境生活部は何回も現地への立入調査を続けてきた。ヘリパッド等の米軍施設の写真だが、今まで、防衛局・米軍から開示に対してクレームがついたことはなく、県も全てのて現地写真を公開してきた。今回の事例はそうした従来の経過からみても不当極まりない。
米軍基地内のアスベスト問題は、従来から大きな社会問題となってきた。まさに県民の命と健康にかかわる問題である。「米軍が公開を認めていない」というのなら、アスベスト問題だけではなく、枯葉剤等の問題についても事態は改善されない。これらの情報を公開することは県の責務でもある。
辺野古新基地建設問題では、県への公文書公開請求に対して防衛局がクレームをつけることが多い。今、大きな問題となっている大浦湾への「仮設桟橋」(大型突堤)造成についても、防衛局から県に岩礁破砕許可申請が出され、そこに平面図、断面図、位置図等の図面が添付されているが、これらの図面についても県は、防衛局からの要請により不開示とした。(海底ボーリング調査の位置図も不開示とされた。)
(「仮設桟橋」(大型突堤)の平面図・位置図等も全て墨ぬりされた。)
このように、県が防衛局からの要請をそのまま受け入れ、関連文書を不開示とすることが多いのだが、問題は、それが辺野古埋立を承認した仲井眞前知事当時の県行政のことではなく、翁長知事となった今もそのまま続いていることだ。
翁長知事は辺野古埋立に反対し、埋立承認に関する検証委員会を立ち上げる。今後の取組みに期待したいが、まずは、防衛局の介入を排し、辺野古埋立に関する全ての文書の公開から始めてほしいものだ。