沖縄県は、辺野古への土砂海上搬送を続けている本部塩川港へのベルトコンベア設置を許可してしまった。4月以降、本部町島ぐるみ会議は、この許可は港湾法や港湾管理条例に違反し、許可基準にも抵触するとして、毎月のように北部土木事務所との交渉を続けてきた。
ベルトコンベア設置については、以前は本部町が荷捌地使用許可を出していたが、突然、県が港湾施設用地使用許可に切り替えた。そのため、使用料が年間840万円も安くなったが、これは県の損害であり、業者の不当利得と言わざるを得ない。許可を出した北部土木事務所長自身が、「私も差額があまりに大きいと思います」「港湾課とも検討しているところです」と認めざるを得ないのだが、それでも毎月の許可を出し続けている。
そのため、本部町島ぐるみ会議と沖縄平和市民連絡会は8月27日、426名の請求人で、沖縄県監査委員に監査請求を行った。
このの住民監査請求については、このブログでも何回か説明してきたので参照されたい。
今日(10月15日・金)、監査委員から、「本件使用許可は財務会計行為には当たらない」として「却下」という監査結果が送られてきた。内容についてはいっさい審議していない。
以下、この監査結果の問題点について説明する。
1.沖縄県監査委員は、「本件使用許可は、--- 港湾管理という行政目的の実現のためになされる行為であり、--- 住民監査請求の対象となる財務会計行為の対象ではない」として、請求を却下した。請求人が求めた、港湾法、港湾管理条例違反等の問題については、全く判断していない。
しかし今回の使用許可書は、北部土木事務所長による「許可」だけではない。使用許可書では、港湾使用料の算定結果を記載し、「納入の際は納入通知書の記載事項に従い、期限内に指定金融機関でお支払いください」とも指示している。申請者は、この許可書と納入通知書を受けて使用料を納入している。使用許可には、①使用許可と、②使用料の決定の二つがあるのである。
通常の監査請求は、違法・不当な公金支出を争う場合が多い。その場合、財務会計行為をチェックするためには、支出負担行為書等が問題となる。しかし、今回のような県への納入額の算定根拠、不足等が問題になる場合はいったいどうするのか? 今回のような監査委員の決定では、納入額の算定根拠、不足等については、住民監査請求で争うことが不可能となってしまう。
2.この点について、監査委員が却下とした根拠は、東京地裁(H5年3月22日)判決だけである。この判決は、「使用許可の取消し」について争ったもので、使用料についても争われたものかどうかは分からないが、地裁レベルの一つの判決文だけが監査委員の判断の根拠というのも納得がいかない。
現に、公共施設の使用許可については、札幌高裁判決(H24年5月25日)のように、「使用許可処分は、住民訴訟の対象となる財務会計行為に該当する」というような判例もある。
今回、沖縄県監査委員は、全く審理にも入らずに「却下」としたが、少なくとも、審理を行い、使用許可処分や使用料の決定根拠等について検討する必要があったことはいうまでもない。
3.私たちは、2018年にも、本部塩川港の管理問題について監査請求を行った。その内容は今回のような使用料に関するものではなく、港湾の管理に関するものだったが、当時の沖縄県監査委員は私たちに陳述の機会を与え、内容についても十分審査した上で「却下」とした(監第914号)。
地方自治法では、「監査委員は、監査を行うに当たっては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない」と定めている。今回の監査結果は、この定めにも違反する。
4.今回の許可、使用料決定は北部土木事務所長が決裁したものである。通常の監査請求は、違法不当な財務会計行為を行った県職員に対して損害賠償を求める場合が多い。
しかし私たちは、今回の監査請求ではデニー県政との関係を考慮し、北部土木事務所長への損害賠償請求をあえて行わず、業者に対する不当利得返還請求と、今後の許可を出さないよう求めるにとどめた。監査請求の審査の中で、県当局にきちんと今回の許可や使用料の根拠を説明させ、それに対する監査委員の判断を求めることが目的で、住民訴訟に入ることは想定していなかった。
今回の監査結果を不服として住民訴訟に入ることでデニー県政との対立関係に入ることは避けたいが、今回のような審査すら拒否した監査結果を放置することもできないので当惑している。
今後の対応については、弁護士さんらとも相談して決定したい。
******************************
以下、監査結果全文を掲載する。