チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

<検証>「知事が承認を取消しても工事は進める」と繰り返す菅官房長官---それでは何の工事が始まるのか?

2015年07月19日 | 沖縄日記・辺野古

  7月16日、第3者委員会が仲井真前知事の埋立承認には瑕疵があったという報告書を翁長知事に提出した。これを受けて翁長知事は8月下旬にも埋立承認の取消を決断するものと思われる。しかし菅官房長官は、再三に渡って「知事が承認を取り消しても工事は進めていく」と開き直っている(たとえば、本年5月26日、6月16日の記者会見)。

 政府は、知事の埋立承認の取消に対して、再度、行政不服審査請求等で知事の取消の効力を形式的に停止し、工事を強行するだろう。それでは海上ボーリング調査終了後、辺野古・大浦湾では一体、どのような作業、工事が始まるだろうか? いろんな人たちからこの質問を受けるので、私が考えていることをまとめてみたい。

 埋立承認の際の留意事項に「実施設計について事前に県と協議する」とされていることから、さすがの防衛局も、ケーソン等の護岸工事にすぐに着手することはできない。そこで考えられるのは、昨年12月5日、仲井真前知事が任期切れ直前に設計概要の変更申請を駆け込み承認した大浦湾沿岸部での工事用仮設道路の造成だ(下の図の黒い太線②)。以下、この点について説明する。

*大浦湾の「工事用仮設道路②」は海に「根固め用袋材」を並べて造成される

 昨年9月、防衛局は「工事用仮設道路の追加」等の設計概要変更申請を県に提出した。これは、国道329号線を高架で渡り大浦湾に至る「工事用仮設道路①」、そこから大浦湾 に沿って辺野古に向かう「工事用仮設道路②」等からなる。この設計概要変更申請については、仲井真前知事が任期切れ直前の昨年12月5日に駆け込みで承認してしまった。

 シュワブ基地の大浦湾沿いは、砂浜もあるが下の写真のように岸壁となったところが多い。そのため「工事用仮設道路②」は、上の地図では分かりにくいが、ほとんどは陸域部ではなく海域部に造成される。

(シュワブ基地の大浦湾沿岸には崖となった箇所が多いため、「仮設道路」は手前の海に設置される。)

 

 上が「工事用仮設道路」の断面図である。これを見ると、「工事用仮設道路」は、海に「根固め用袋材」を置き、その上に割栗石、砕石を敷き並べて造成される。「根固め用袋材」とは、ナイロン等の網の中に石材を入れたものだ。

 

*すでに基地内には大量の「根固め用袋材」が準備されている---何時でも着工可能

  シュワブ基地内には、すでにこの「根固め用袋材」が大量に準備されている。今年1月以降、各マスコミがシュワブ基地内を写した写真に次のようなものがあった。これらが、「根固め用袋材」「港湾築堤マット」だ。「根固め用袋材」はナイロンの網の中に石材を入れたもの、「港湾築堤マット」は金属製の網の中に石材を入れたものを言う。

 

   (2015.3.4 琉球新報)            (2015.3.13  RBCニュース)

 実はこれらの「根固め用袋材」「港湾築堤マット」は、辺野古先端近くに予定されていた「仮設岸壁」のために準備されたものだ。しかし、「仮設岸壁」の設置が困難となったため、これらの「根固め用袋材」「港湾築堤マット」は「工事用仮設道路」造成に転用されようとしている。

 

*しかも、旧米軍兵舎を解体したコンクリート殻も「仮設道路」造成のために海に投入される恐れが!

 我々は、旧米軍兵舎解体により大量に積まれているコンクリート殻が埋立材として大浦湾に投入されるのではないかと追求してきた。アセスの評価書や埋立承認願書では、これらのコンクリート殻は外には搬出せず、現場内で再生路盤材として利用するとされている。しかし、再生路盤材として使える場所は限られており、大量のコンクリート殻の行方は明確にはされていない。

  (辺野古近くで続いていた旧米軍兵舎解体工事) 

 これに対して政府は、「コンクリート殻は『石材として海に投入』したり、『埋立材として使用する予定』はない」と回答してきた(糸数慶子議員の質問主意書に対する答弁書)。しかし、本年5月、県民会議の要請を受けて県が防衛局に照会したところ、防衛局は、「コンクリート殻については、再生路盤材として、陸上の仮設作業ヤードや仮設道路、飛行場関連施設等への活用を考えています」と回答している(5月15日の回答文書)。

 防衛局は「仮設道路」にコンクリート殻を使用すると認めている。しかし「工事用仮設道路②」はほとんどが海域部に造成されるものだから、これは「コンクリート殻を海に投入する」ことでもある。アセス評価書や埋立承認願書には記載していなかったことであり、認めるわけにはいかない。

 

*「『仮設工』は県との事前協議の対象ではない」とする防衛局のデタラメ

 仲井真前知事の設計概要変更申請の承認も得ている、造成のための資材も準備されているということで、この「 工事用仮設道路②」の造成が強行される恐れはきわめて強い。しかも、工事用仮設道路は終了後に撤去されるものであるから、防衛局は、県との事前協議の対象ではないと主張するだろう。すでに井上防衛局長は、「仮設の場合、県との実施設計協議の対象ではない」と主張している(2015.6.14 沖縄タイムス)。工事強行の条件は全て揃っているのだ。

 また、大浦湾に沿った「 工事用仮設道路②」の造成だけではなく、「 工事用仮設道路①」の国道329号線を横断する高架道路の設置が強行される恐れもある。

 

*翁長知事は、埋立承認の取消と同時に仲井真前知事の設計概要変更申請承認の取消を!

 「工事用仮設道路」造成は、名護市の文化財調査との関係ですぐには着工できないという報道もあった。しかし、先にも述べたように「工事用仮設道路②」はほとんどが海域部に設置されるため、陸域部で進められる文化財調査とは関係なしに工事を始めることができる。

 この「工事用仮設道路」造成強行を阻止するためには、翁長知事は、埋立承認の取消だけに終わってはならない。知事の権限をフルに使って、工事強行を止めなければならない。

 辺野古新基地建設事業に関して、今まで県知事が行った行政処分は、埋立承認以外に2つある。

 一つは、この「工事用仮設道路の追加」を認めた昨年12月5日の設計概要変更申請承認、もう一つは、昨年8月28日の埋立て本体部分の岩礁破砕許可だ。翁長知事は、埋立承認の取消と同時に、これらの二つの承認・許可を取消すことが必要である。

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