『世界(3月号)』に、「辺野古新基地はいずれ頓挫する」と題した20頁ほどの論考を書いた。名護市長選が残念な結果となり、「もう辺野古の工事は止まらない」というキャンペーンがさらに強まるだろう。しかし、名護市長選の結果にかかわらず、今後、県民が決して諦めず、知事が毅然と対応する限り、辺野古新基地建設事業はいずれ頓挫することに変わりはない。辺野古の工事は止められるのだ。当面、ゲート前にどれだけ多くの人たちが集まるかにかかっている。
名護市長選の結果を受け、『世界』には書ききれなかった、辺野古新基地建設事業を本気で阻止するための今後の方策を、シリーズでいくつか提案している。前回(2月12日)は、県当局・県議会に対して沖縄県土砂条例(「公有水面埋立事業における埋立用材に関わる外来生物の侵入防止に関する条例」)に罰則規定を追加することを提案した。特定外来生物はほぼ何処の砕石場でも発見されるだろうから、条例に罰則規定が追加されれば、知事の搬入中止命令により県外からの土砂持込みはほぼ不可能になる。
今回は2つ目の方法として、県土保全条例の改正について提案したい。
( 辺野古ダム周辺の土砂採取地と搬送計画)
今回の事業の埋立では、最初に辺野古ダム周辺の土砂(200万㎥)が持ち込まれる。埋立申請願書では、辺野古ダム周辺からの土砂採取は上の図のように、辺野古ダム上部にベルトコンベアを設置し、ダム西側の土砂を運搬する計画であった。ところが、ダムの湖面を利用するためには、名護市法定外公共物管理条例により名護市長との協議が必要である。2014年、防衛局は協議書を名護市に提出したが、名護市との協議が進まないと考えたのか、すぐに取下げてしまった。そして沖縄県に対して設計概要変更申請書を提出し、湖面へのベルトコンベア設置を諦め、ダム西側の土砂についてダンプトラックによる搬送計画に切替えたのである。
当時は、埋立を承認した仲井眞県政だったが、大量のダンプトラックが国道を通行することになるこの変更申請は、環境への影響があまりに大きいとして承認することができなかった。防衛局はやむなく、変更申請を取下げざるを得なかったのである。そのため現状では、当初の埋立申請願書に記載したとおり、湖面にベルトコンベアを設置する方法でしか実施できないのだが、稲嶺さんが再選されれば、それはほぼ不可能であった。
今回の名護市長選の結果により、新市長はこの協議に同意するものと思われる。今までできなかった辺野古ダム周辺からの土砂搬出が可能になってしまう。
そこで、 県と県議会に提案したいのが、県土保全条例の改正である。
辺野古ダム周辺の土砂採取地は30万平方メートルもある。現行の県土保全条例では、3000平方メートル以上の開発行為には知事の許可が必要とされているが、国や地方自治体の事業は知事の許可対象から外されている。この、「国、地方公共団体の除外規定」を削除すれば、辺野古ダム周辺からの土砂採取は知事が許可しない限り不可能となるのだ。
この県土保全条例の改正は決して新しい提案ではない。2015年頃から県当局・与党県議団で協議が進み、2016年2月議会に条例改正案が上程されると大きく報道された、ところがその後、何故か突然、頓挫してしまったのだ。それを、再度、実現させようというのだ。
本気で辺野古新基地を阻止するために、県当局・与党県議団の奮闘をお願いしたい。
2015.6.6 琉球新報
2016.1.13 沖縄タイムス