私は、辺野古新基地建設事業について、沖縄防衛局だけではなく、沖縄県にも公文書公開請求を続けてきた。情報公開制度は、憲法の「国民の知る権利」に基づくものだが、国、県の後ろ向きの姿勢(情報隠し)が最近、次第に顕著になってきたと言わざるを得ない。
特に、デニー知事は、「県民本位の県政」を掲げ、辺野古新基地建設反対を県政の柱としているのだから、最近の公文書公開請求への県の対応は残念でならない。
最近、下記の3件が相次いで不開示となった。これらはいずれも、以前には同種の文書が開示(含部分開示)されていた。
1.辺野古新基地建設事業の海上警備業務を所管しているセントラル警備保障(株)が、県の港湾管理条例に違反して金武湾港を使用していた問題について、罰則規定を適用したかどうかの文書を「存否を明らかにしない」としたこと。
この件については、本部町島ぐるみ会議が一昨年から県に質問を続けてきたが、県の北部土木事務所は、「確認中でありお答えできない」「個別の事案についてはお答えできない」として、回答を拒否し続けた。我々はやむを得ず住民監査請求を行ったところ、違法使用期間中の使用料(481万円)を遡って請求したことは判明したが、港湾管理条例に基づく罰則規定を適用したかどうか分からなかったので、県に公文書公開請求を行った。
ところが、この請求に対して県は、「行政罰が課されたかどうかは法人の正当な利益を損なう」として、本年2月8日、「公文書の存否を明らかにしない不開示決定」をしたのである(また、「仮に当該文書があるとしても不開示となる文書である」と付記されていた)。
しかし私たちは2020年、本部塩川港でベルトコンベアが使用許可なしで長期間放置されてきたことを北部土木事務所に指摘したところ、県は違法使用期間中の使用料の請求だけではなく、罰則として過料を課した。これらの文書は、いずれも公文書公開請求で開示(部分開示)されている。
辺野古の海上警備業務を受注しているセントラル警備保障(株)は、以前から多くの違法行為を続けてきた。未払給与で労働基準監督署から勧告を受けたこと、無許可使用していた金武湾港での潤滑油流出事故、海上での事故を通報しなかったこと、アルコール検査に抵触した警備員を乗船させ業務にあたらせたこと等が報道されている(沖縄タイムス等)。それにもかかわらず県は今回、「行政罰が課されたかどうかは法人の正当な利益を損なう」と業者をかばっているのだ。違法使用期間中の使用料を遡って請求したことが明かになっている。当然、港湾管理条例に基づく罰則を課していないはずはない。それを、「法人の正当な利益を損なう」として不開示としたのだ。
今回の不開示決定処分は、以前の公開事例から大きく後退したものであり、認められない。
2.戦没者遺骨の保全を諮るための条例制定について、県の弁護士への法律相談文書を全面不開示としたこと
辺野古の設計変更申請により、沖縄南部地区の戦没者の遺骨混りの土砂が埋立に使用される可能性があることが大きな問題となっている。
私たちは、開発行為による戦没者遺骨の散逸を防ぐためには、未開発の緑地帯の形質変更にあたっては事前に県に届出をさせる条例が必要と考え、行政法学者らを交えて勉強会を続けてきた。県議や、県三役とも何回もの意見交換も行った。知事や副知事も「条例制定を検討する」と表明してきた。
こうした作業で条例案をまとめて県に提出したところ、県の担当課は弁護士に法律相談を行った。ところが、「弁護士は条例制定に否定的だった」というだけで、法律相談の記録を「不開示」としたため、条例制定に向けた検討作業は暗礁にぶつかっている。
県の法律相談文書については、たとえば2014年9月の「防衛局の辺野古埋立申請に係る法律相談文書」は全面開示されており、今回の不開示は矛盾している。当時は仲井眞知事の時代だったが、デニー知事の公文書公開への姿勢が仲井眞知事の時代よりも遅れているとはどういうことだろうか?
3.辺野古設計変更申請をめぐる県の防衛局への質問、防衛局の回答文書を不開示としたこと。
防衛局が提出した辺野古・設計変更申請を知事が不承認したが、国がそれを取消す裁決を行い、県は3件の裁判で争っている。
辺野古設計変更申請の審査の過程で、県は防衛局に4次に渡り、452件の質問を出した。国の回答が不十分だったため、知事は一昨年11月、設計変更申請を不承認としたのである。
私は、県の不承認を支持し、国の取消裁決の問題点を検討するために、県が防衛局に出した質問とそれに対する防衛局の回答文書を公文書公開請求した。2014年、埋立承認申請の審査の際の防衛局への質問文書、防衛局の回答文書はほとんど公開されたので、今回も当然、公開されると考えていた。ところが今回、県は、防衛局の回答文書は全て不開示、県の質問文書についても防衛局の説明を引用した部分は黒塗りとしたため、ほとんど意味が通じないものとなってしまった。
知事の不承認を支えるためにも防衛局の回答文書を検討する必要があるのだが、それもできない。困ったことだ。
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<港湾管理条例違反について、罰則規定を適用したかどうかについて、「存否を明らかにしない」とした県の通知書>