政府は、辺野古新基地建設事業を進めるため、一昨年6月の日米合同委員会で大浦湾の工事施行区域全域を臨時制限区域に指定し、常時立入禁止区域とした。4月1日に目取真俊さんが海上保安庁に逮捕されたのも、この臨時制限区域に入ったことが刑特法違反容疑だということだった。
この臨時制限区域の指定は、日米地位協定第2条4項(a)に基づいている。これは、「合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し又は日本国民に使用させることができる。」というものだ。通常、「共同使用」と言われている。今回の大浦湾での指定の目的は、下に添付した官報にあるように、「沖縄防衛局が普天間飛行場代替施設建設のため共同使用する」、「陸上施設及び普天間飛行場代替施設建設にかかる区域の保安並びに水陸両用訓練のため」とされている。すなわち臨時制限区域指定の目的は、①陸上施設の保安、②普天間飛行場代替施設建設にかかる区域の保安、③水陸両用訓練のための3点である。
ところが今回の和解により、翁長知事の埋立承認取消の効力が復活したことから、「普天間飛行場代替施設建設」は中止となった。したがって、上記目的の②はもう意味がなくなってしまった。
4月13日、私は東京の市民グループに呼ばれ、衆議院議員会館での院内集会、防衛省との交渉に参加した。そこでこの点について追求すると防衛省の担当者は次のように答えた。
「埋立工事は中止しているが、工事中止後も常時立入禁止である臨時制限区域では引き続き米軍による水陸両用訓練が行われていると認識している。」
あまりの無責任な回答に参加者の怒りが集中した。「防衛局は、臨時制限区域の周辺だけではなく、区域内でも台船等の回りにフロートを張り巡らせている。水陸両用訓練が行われるというのなら、これらのフロートが邪魔になってできないではないか。大浦湾では水陸両用訓練など行われていない!」と追求すると、防衛省の担当者は黙り込む他なかった。
そもそも日米地位協定第2条4項(a)は、「合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないとき」に日本政府が共同使用できるというものだ。米軍の水陸両用訓練が行われるのなら、第2条4項(a)の指定は有り得ない。
また、「従来は、海岸から50mの第1区域が『陸上施設の保安』のためとして立入禁止区域にしていた。それが、今回のように海岸から2km以上も『陸上施設の保安』のために必要というのは通用しない」と追求すると、防衛省の担当者はもう何も言えなくなってしまった。(実は、この日、出席した防衛省の担当者は、沖縄の海に接している米軍基地では、「陸上施設の保安」のために立入禁止とされている第1区域が、海岸から50mの範囲だということを誰も知らなかったのだから、皆が呆れてしまった。)
結局、工事施行区域を地位協定第2条4項(a)に基づく立入禁止区域としたこと自体が法的にも無理なのだ。米軍の水陸両用訓練があるということにしないと、刑特法による脅しができないため、無理やりこじつけたにすぎない(刑特法は、「合衆国軍隊が使用する施設又は区域」に入った場合に適用されるものである(第2条)。前述のように地位協定第2条4項(a)は、「合衆国軍隊が一時的に使用していない場合」に定められたものだから、そもそも地位協定第2条4項(a)の共同使用地には適用できないのではないか?)。
結局、臨時制限区域の問題について防衛省は全く反論が出来ず、「和解の当事者である沖縄県の認識と異なることのないよう適切に対応したい」と答えざるを得なかった。沖縄県は臨時制限区域の指定を解除するよう求めているのであり、防衛省はただちに臨時制限区域の指定を解除さするべきである。