知事、そして名護市長の権限で辺野古埋立は阻止できる!
---辺野古新基地建設事業における名護市長の権限について
現在、キャンプ・シュワブ南岸部の海には連日のように捨石が投下され、護岸造成工事が進められている。また、工事用ゲート前でも、大勢の機動隊によって座りこみの人たちが強制的に排除され、多くの工事車両が入っていく。防衛局はこうした状況を、「工事は着々と進んでいる」と強調している。
しかし実際には、工事は大幅に遅れており、今後の工事の進め方についても大きな壁に直面している。焦っているのは防衛局である。
埋立承認撤回を別にしても、防衛局は、今後、必要となる公有水面埋立法にもとづく設計概要変更申請や、埋立承認の際の留意事項に基づく環境保全図書の変更等について、知事の承認を得る目処は全く立っていない。
さらに名護市長の権限に係わる事項も多い。知事と市長が連携を深め、それぞれの権限を毅然と行使していけば、工事はいずれ頓挫する。防衛局はその前に辺野古側での護岸工事など、簡単な工事を推し進め、県民を諦めさせようと必死なのだ。
以下、辺野古新基地建設事業に関する名護市長の権限を説明する。
(大浦湾に流れ込む美謝川の河口部 2014.10.24撮影)
1.美謝川の切替えに必要な名護市長との法定外公共物占用協議
防衛局が直面している最大の難問が美謝川の切替え問題である。現在、美謝川は辺野古ダムから大浦湾に流れ込んでいる。しかし、その河口部は、最初に埋立が行われる工区に流れこんでいるため、まず、美謝川の水路を切替えなければ工事に着手できない。
そのため防衛局の埋立承認願書では、辺野古ダムの支流を利用し、キャンプ・シュワブの第2ゲート付近で国道329号線を暗渠で横断してK9護岸の奥まで新しい水路を造成する計画だった。しかし、水路の切替え・辺野古ダムの利用のためには、名護市法定外公共物管理条例に基づき、名護市長との協議が必要となる。防衛局は2014年4月に協議書を提出したが、同年9月に取下げてしまった。
そして、現在の美謝川の上流部をそのまま残し、下流部を暗渠(延長:1022m)にするという設計概要変更申請を知事に提出した。当時は、埋立を承認した仲井眞県政時代だったが、当時の沖縄県政ですらこの変更計画はあまりに環境への負荷が大きいとして承認ができず、防衛局はやむなく、この変更申請を取下げざるを得なかったのである。
従って、現状のままでは美謝川の切替えができず、埋立工事に入ることはできない。
2.土砂運搬のための辺野古ダムへのベルトコンベア設置も法定外公共物占用協議が必要
さらに土砂運搬問題についても、防衛局は難問に直面している。最初の埋立には辺野古ダム周辺の土砂(200万㎥)を持ち込むために、ダムの上にベルトコンベアを設置して土砂を運ぶ計画だった。これも辺野古ダムを所管している名護市長との協議が必要だが、防衛局はやはりいったん提出した協議書を取下げ、ダム西側の土砂はダンプトラックで国道を経由して搬送するという設計概要変更申請を知事に提出した。しかし、この変更申請についても当時の県政でも許可をすることができず、防衛局は申請を取下げてしまった。
そのため現状では、最初の埋立地区に搬入する土砂が足らないという事態に直面している。その分を補填するために県外からの土砂搬入量を増やそうとしても、それには埋立承認の際の留意事項の「土砂等の採取場所及び採取量の変更」であり、知事の承認が必要となる。この点でも、知事と名護市長がそれぞれの権限を毅然と行使すれば、埋立のための土砂搬入は途中で頓挫する。
3.作業ヤード設置のための辺野古漁港占用許可その他
防衛局の埋立承認願書では、辺野古漁港の両側、辺野古川の下流部を埋立て、護岸工のブロック等を製作・保管のための作業ヤード(6.9ha)を造成する予定だった。
しかし、そのためには、名護市港湾管理条例に基づく占用許可申請が必要となる。防衛局は2014年4月、いったん申請書を提出したが、名護市は申請書の不備を指摘。その後、防衛局は手続を止めてしまった。
現状では、辺野古漁港周辺を埋立て、作業ヤードを造成する目処は全く立っていない。現在、辺野古側の護岸工が進んでいるが、被覆ブロックの製作・保管のための作業ヤードのスペースがなく、護岸工の進捗にも大きな影響を与えている。
その他にも、基地内への水道敷設の承認や燃料タンク設置許可、シュワブ内の名護市有地からの土砂採取に関する知事の許可等、辺野古新基地建設事業について名護市長の権限は多い(また、教育委員会の所管だが、文化財保護法に基づく文化財調査の問題もある)。
以上、述べてきたように、知事だけではなく、名護市長も今後の辺野古新基地建設事業の帰趨を握っている。その意味でも、2月の名護市長選の勝利が決定的に重要である。
(本文は沖縄環境ネットワークの機関紙への投稿に一部加筆したものです。)