1月25日(木)、具志堅隆松さん、南部地区の島ぐるみ会議のメンバーらの沖縄県土木建築部長に参加した。
具志堅さんは1月10日から3日間、県庁前広場でハンストを行い、知事が、遺骨混りの南部地区の土砂を辺野古の埋立てに使用させないよう防衛局を指導するよう求めた。ハンスト期間中に県との意見交換を求めていたが、25日にやっと実現した。
防衛局は南部地区からの土砂調達について、遺骨問題や環境問題を指摘されていることに対して、「まだ、採取地は決まっていない。工事の実施段階で業者が決定する」と逃げ続けている。しかし国土交通大臣が設計変更申請を代執行で承認したことにより、『採取候補地としてあげた何処の地域でも、土砂採取が認められた』として、知事と協議もせずに強行するおそれがある。
そもそも、公有水面埋立法施行規則第3条では、「土砂に関する図書」には、「採取候補地」ではなく、「具体的な土砂採取地」を記載する必要があった。土建部長らは、「今後、土砂採取地が確定すれば、埋立承認の際の留意事項に基づき、環境保全対策の変更として協議を求める」と説明したが、留意事項はいつも無視されている。
知事は、沖縄防衛局・業者が土砂採取地を決定してから協議を求めるのではなく、今の時点で政府に対して、南部地区を土砂採取候補地から外すよう強く求めなければならない。2021年11月、知事は、設計変更申請を不承認とした際、「人道上の問題であり、認められない。県としては政府に対して、県民、国民の切なる思いを伝えなければならない」と強調した。
今日、驚いたのは、それから3年以上になるが、「知事はこれまで土砂の調達先に関し、国に要請したことはない」というのだ。
採取地が決定してからでは手遅れになる。
(2024.1.26 沖縄タイムス)
我々は事前に県に対して末尾にあげたような質問事項を提出していた。
25日、土建部長は、次のように回答した。
・「知事は、南部地区からの土砂調達については人道上許されないという発言してきた。防衛局に対しては、採取場所がまだ確定していないということもあり、今後、協議の中で防衛局に対して、採取場所を確認していきたい。」
・「採取場所が決まれば、公有水面埋立法上、どのような対応ができるかを確認していきたい。」
・「政府に対してまだこの問題について要請したことはない。人道上、遺骨が混じる土砂が埋立に使用されるべきではないという考えを持っているので、その立場で政府に対応していきたい。」
・「今後の協議の場としては、承認の際の留意事項に基づき、環境保全図書の変更の協議がある。調達地が決まれば、環境保全対策の中で質問できると考えている。」
・「南部地区からの土砂搬出ルートとして那覇周辺の港が図示されているが、まだ決まっていないというので、具体的に何処の港かは聞いていない。」
・「(南部地区では採掘跡の巨大な穴が放置されており、辺野古に土砂を出す余裕などないという指摘に対しては)鉱山保安法等の法律があり、それに基づいて対応されると考えている。」
<県に事前に提出していた質問事項>
1.南部地区からの辺野古埋立土砂調達問題について、県としての基本的な認識を説明されたい。
2.代執行により、南部地区が土砂調達候補地となってしまった。知事は、「人道上、許されない」、「埋立工事に用いられることは認められない」と強調されたが、今後、防衛局に対してどのような具体的な対応をとられるのか?
「県としては政府に対して、県民、国民の切なる思いを伝えなければならない」とも言われたが、今まで、この問題を政府に要請してきたか?
3.知事も「具体的な採取場所や調達量については、契約段階で決まる」ので、「今回の審査には反映されておりません」と、政府の弁明を認めてしまった。それなら、防衛局が最終的な調達地を決定した時点では知事の承認を求めさせるべきではないのか?
設計変更申請書に添付された「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」では、確定した採取場所ではなく、「想定される土砂採取場所」しか記載されていない。
公有水面埋立法施行規則第3条では、埋立願書に「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」を添付するとされており、その「記載要領」として、「山土 ○○市○○町○○地区」等とされている(『公有水面埋立実務便覧』P380)。
さらに、埋立承認申請の「審査事項」では、「土砂等の採取場所として⑴の工事に対応するすべての場所が記載されているか」とされている(同P396)。何故、県は、埋立承認申請・設計変更申請の時点で、「採取候補地」ではなく、「実際の採取地」を示すよう指示しなかったのか?
また、承認の際の留意事項にも、「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」を変更する場合は知事の承認を受けることとされており、埋立土砂の調達地の決定は知事の承認事項ではないのか?
4.南部の遺骨混りの土砂問題は、審査基準「公益上の観点からの特別な事由の有無」に該当するのではないか?
公有水面埋立の審査基準には、「免許禁止基準(法第4条第1項各号)にすべて適合している場合であっても、公益上の観点から免許(承認)すべきでないと判断される特別な理由はないか」という項目もある(1975.6.14 建設省通知)。
南部の遺骨混りの土砂問題は知事も「人道上の問題」と認められたが、何故、この審査基準を適用しなかったのか?
県土建部統括監は、本年1月12日、沖縄平和市民連絡会との意見交換の際、「県としては、人道上、遺骨が混じる土砂が埋立に使用されるべきではないと考えており、土建部としては、公有水面埋立法の手続きの中でどのような対応が可能かを検討していきたい」と回答された。その後の検討状況を明らかにされたい。
5.南部地区からの土砂搬送ルートについて
防衛局が示した南部地区からの土砂搬送の東側ルートの搬出港は中城湾港であるが、西側ルートは那覇周辺の何処の港なのか? 県は把握しているのか?
6.南部地区からの土砂搬送による環境への影響
県は、土砂調達量の大部分が南部地区から搬出された場合、搬出港付近や搬出元における生活環境の悪化」、「平和祈念公園や沖縄戦跡国定公園への観光客等への影響」等について懸念を示し、防衛局の見解を求めた。
しかし防衛局の回答は、「環境影響の予測は事業実施区域とその周辺」に限定し、「南部地区の採石場から調達される場合は、採石業者において粉じん対策や道路清掃、運搬時間帯の調整が適切に実施されるものと考えています」という無責任なものであった。全ての責任を業者に押しつけた防衛局の対応についてどう考えるのか?
7.南部地区の鉱山の巨大な採掘跡の埋戻し土はどうするのか?
沖縄北部地区の鉱山・採石場は山を削り取っているが、南部地区はほぼ平坦な地形が続いているため、採掘跡は巨大な穴となってそのまま放置されているところが多い。
また、辺野古新基地建設事業で南部地区から辺野古埋立に3,160万㎥もの土砂調達が可能としているが、それによりさらに多くの採掘跡の穴が生じる。南部地区で今後発生する土砂は、辺野古埋立に持ち出すのではなく、こうした採掘跡の巨大な穴の埋戻しに使用すべきではないか?
県として、こうした採掘跡が放置されていること、さらに今後、拡大するおそれについて、どう対応するつもりかを明らかにされたい。