防衛局が発注した海上警備業務で、船長ら海上行動に出ている市民らの顔写真や氏名等のリストを作成し、それぞれの名前を記載した行動記録を防衛局に報告していることが発覚し、大きな問題となったことは、このブログでも何回も書いてきた。表現の自由を侵害し、個人情報保護法にも抵触するとんでもない違法行為である。
海上警備業務の特記仕様書には、受注者は「警備業務日報を毎日防衛局に提出すること」とされている。あるいはその日報の中にこうした市民の抗議行動について書かれているかもしれないので、私は本年5月16日、防衛局に対して警備業務日報の公文書公開請求を行った。
情報公開法第10条では、「開示決定は、開示請求があった日から30日以内にしなければならない」(第1項)、「前項の規定にかかわらず、---事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項に規定する期間を30日以内に限り延長することができる」(第2項)と定めている。いくら延長されたとしても2ケ月以内に開示決定されるはずであった。
ところが防衛局はこの公開請求に対して、6月13日、「本件開示請求については、情報公開法第11条の規定(開示決定等の期限の特例)を適用する」と通知してきた。その内容は、「平成28年7月15日までに可能な部分について開示決定等を行い、残りの部分については平成29年5月31日までに開示決定する予定」というものであった。請求日からなんと1年以上も開示期間を延長してしまったのである。
情報公開法第11条は、「開示請求に係る行政文書が著しく大量」の場合に限られた開示期限の延長に係るものであって、その濫用は許されない。しかし防衛局は、沖縄防衛局長は今回、「不開示情報が含まれる可能性があるため、開示・不開示の判断について、調整及び協議を行うなど、適正かつ慎重に検討する作業が必要であり、当該判断に相当の期間を設ける必要があることから、当該文書が著しく大量であることに該当するとともに、開示担当課が、法所定の期限内に、開示請求に係る全てについて開示決定等を行うこととした場合、他の業務の適正な遂行に、著しい支障が生じるおそれがある」として1年以上も開示期限を延長してしまったのである。防衛局長は「当該文書が著しく大量であることに該当する」としているだけで、『文書が著しく大量」とは言っていない。それにもかかわらず法第11条を適用することは許されない。
防衛局は、7月15日、「可能な部分の開示」として次の1枚の文書を開示してきた。日付まで黒塗りにしたものだが、請求から60日が経過した時点の「可能な部分」がこれ1枚なのだからあきれる。
この間防衛局は、私が行ったほとんどの公文書公開請求に対してこの法第11条を適用するとして、開示期限の大幅延長を行うようになっている。文書を公開する場合も、大部分を黒塗りにして内容を隠すことが多いが、開示期限も法で定められた期限を無視して大幅に延長するようになっている。その全てが『著しく大量」な文書ではない。ほとんどのものは、4枚ほどのものにすぎない。それが「著しく大量であることに該当する」として法11条を適用して開示期限を大幅に延長しているのだ。これも法の趣旨を逸脱した情報隠しである。
今回、私は本件の公開請求に対して行政不服審査法に基づく不作為の審査請求を行う。法で定められた60日以内に防衛局長が開示決定等を行わなかったのは不作為であるという審査請求だ。従来、不作為の審査請求は行政庁(今回の場合は防衛大臣)だけで判断されてしまったが、本年4月から施行された行政不服審査法では、不作為の審査請求も必ず第3者機関の審査に回されることとなった。
総務省に問い合わせると、法11条の特例の適用に関する不作為の審査請求は初めてではないかという。防衛局の情報隠しに対して第3者機関が適正な判断を示されるよう期待したい。