http://digital.asahi.com/articles/ASJD7525QJD7UTIL02H.html?rm=302 稲垣千駿 2016年12月8日
不正引き出し事件の構図
全国の現金自動出入機(ATM)から計約18億6千万円が一斉に引き出された事件で、警察当局はこれまでに引き出し役(出し子)ら130人近くを窃盗容疑などで逮捕した。うち十数人は五つの指定暴力団の傘下組織に所属する組員だった。別の指定暴力団系組員の関与も浮上している。捜査関係者への取材でわかった。
警察当局は組上層部に金が流れたとみており、今後、特殊詐欺などとともに暴力団の新たな資金源となる可能性がある。
事件では5月15日朝、東京、愛知、大阪、福岡など17都府県で、3時間弱のうちに、南アフリカの銀行から流出したデビットカードなどの情報約3千件をもとに偽造されたカードで1万8千回以上引き出された。
捜査関係者らによると、逮捕者の大半は出し子で、組員の中には指示役もいた。山口組、神戸山口組、稲川会、道仁会、合田一家いずれかの傘下組織の構成員で、他に工藤会系組員についても関与した疑いがあるとして、福岡県警が11月に関係先を家宅捜索した。
新潟県では対立状態にある山口組系と神戸山口組系の組員が、同じグループの指示役と出し子となっていた。新潟、高知両県では特殊詐欺グループの捜査の過程で引き出しの手引書や偽造カードを発見。福岡、佐賀両県で逮捕された出し子は、覚醒剤所持容疑でも逮捕された。暴力団排除の機運が高まり、覚醒剤や賭博など旧来の収入源が細るなか、警察幹部は「組員らが個人のつながりで共存しようと考えたのだろう」とみる。
昨年12月にはエルサルバドルの銀行が発行するカード情報を悪用し、1都6県のATMから計約1億円が引き出された。この事件でも、流出した情報を磁気テープに記録し、別のカードに貼り付けた磁気カードが使われていた。
金融庁などによると、国内には海外発行のカードが使えるATMが約7万2千台あり、偽造しづらいICカードにも磁気カードにも対応しているのが特徴という。この利便性が不正引き出しに悪用された可能性がある。18億6千万円のうち約14億円が引き出されたセブン銀行は「安全面ではICカードしか使えなくするのが理想だが、利便性の観点から今のところ考えていない」としている。
■「捕まらない」誘われ
「現金を引き出す仕事がある。報酬は、引き出した額の3%だ」
4月中旬、新潟県長岡市内のキャバクラ。店の経営者で当時指定暴力団山口組系の組員だった田中純也被告(36)=窃盗罪などで起訴=が、店長と従業員2人を前にこう切り出した。店長らは、自分の幼なじみや知人で神戸山口組系組幹部の男らを誘い、田中被告も知人らを勧誘。即席の「出し子(引き出し役)」グループができた。
裁判の冒頭陳述や捜査関係者らへの取材などから、出し子が集う様子が明らかになりつつある。
一斉引き出しがあった5月15日早朝、田中被告は出し子を複数のグループに分け、自宅や駐車場などに呼び出してカードを配った。カードは両面とも白色で、裏面には黒の磁気テープ。表面には16桁の番号がふられていた。田中被告は、若い番号のカードから使うこと、1枚あたり10回程度引き出すこと――などと指示した。
警察への取材で、引き出しには全国で少なくとも300人以上が関与したことが判明。多くは「捕まらないから」と誘われ、数万円の報酬で請け負っていた。
神奈川県平塚市の無職の男(22)=窃盗罪で実刑判決=は、知人から「絶対に捕まることはない」と誘われた。不正だと気づいていたが金が欲しかった。計730万円を引き出し、報酬は約70万円だったとされる。福岡市の飲食店経営の男(37)は、暴力団関係者の男に「報酬は2万円」と持ちかけられた。捜査に「生活費に困っていたので話に乗った」と供述したという。
■「出し子」、1時間で430万円引き出し
この事件で出し子となり、9月に執行猶予付きの有罪判決を受けた福岡県の男性(25)が朝日新聞の取材に一部始終を語った。
◇
5月14日夕方、高校時代の友人から電話で誘われた。「ATMでカネを下ろすバイトがあるんやけど、やらん? 報酬は2万~3万円くらいじゃないか」
定職には就いていたが、10万円ほど借金を抱え、遊ぶ金もほしかった。「暴力団が関わっている」とも聞かされたが、深く考えずに引き受けた。
翌15日未明、福岡市・中洲のカフェで男2人と会った。1人はプロレスラーのような体格、もう1人は細身で長袖から伸びた手に入れ墨が見えた。「自分たちも頼まれた仕事なんです」と話す男たちの指示は具体的だった。「カードを入れたら言語選択で『日本語』、次に『キャッシング』を選ぶ」「暗証番号を入れて10万円引き出す」「出金は1枚20回まで」
午前5時。福岡中央郵便局をめざす車内で、連番の数字が書かれた白いカードと茶封筒を10枚ずつ渡された。現金を引き出したら、使ったカードと同じ番号が書かれた封筒に入れ、指示役に渡すよう言われた。
しかし、郵便局、ローソン、ミニストップを回っても、なぜか現金を下ろせない。その合間、指示役に電話があった。「セブン―イレブンで下ろせるみたい」
ATMの操作方法も最初の説明から一部変わった。「暗証番号は1111」。そう告げられた。
福岡市博多区と東区のセブン―イレブンに行き、3枚のカードで数十回にわたって出金し、1時間強で計430万円を引き出した。ATMで同じ白無地のカードを持った男とすれ違うこともあった。その後、カフェで会った指示役の1人にカードと封筒を渡した。だが報酬はもらえなかった。
1週間ほど後、事件をテレビのニュースで知った。このままいてもどうせ捕まる――。悩んだ末、6月中旬に警察に自首した。
起訴され、法廷に立った男性に裁判官が問うた。
「途中でやめたいと言えなかったのか」
男性は答えた。「断れる雰囲気じゃなかった。変な話に乗ってはいけないと思った」(稲垣千駿)
■都府県別の被害状況
(警察当局への取材による)
東京都 5億8千万円
茨城県 4千万円
栃木県 30万円
群馬県 3200万円
埼玉県 2億900万円
千葉県 2億円
神奈川県 4億3千万円
新潟県 8800万円
山梨県 2700万円
長野県 1千万円
静岡県 2600万円
愛知県 2千万円
大阪府 400万円
兵庫県 2300万円
福岡県 1億5千万円
佐賀県 200万円
長崎県 700万円
感想;
出し子をやる人は、お金に困っている人が多いようです。
そこには貧困が背景にあるようです。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」や経済協力開発機構(OECD)の調査で、標準的世帯の年間の可処分所得の半分未満で暮らす人の割合を示す「相対的貧困率」が、2012年で約16%になったことをあげながら、安倍首相に対し「6人に1人が貧困という実態。日本は世界有数の貧困大国だという認識はあるか」と聞いた。
千葉大医学生の強姦事件もそうですが、自分の人生を台無しにしてしまう行為になります。
最近読んだ本では、女子大生を恋愛関係に持ち込み、「彼女が他の男性に犯される願望があるので、ぜひお願い」ということで女性を風俗で働かせて、そのお金を自分に上手くいって投資させている例がありました。結婚も匂わせています。女性はせっせとお金を風俗で稼ぎ男性に渡しています。騙されているとも知らずに結婚を夢見ています。男性も学生です。大学の授業料や生活費が普通のアルバイトでは稼げないからです。
世の中には、騙してお金を得ることをやる人々がいます。それは彼氏かもしれないということです。
貧困率が高い現状を改善しないと、このような犯罪は減らないと思うのですが。
不正引き出し事件の構図
全国の現金自動出入機(ATM)から計約18億6千万円が一斉に引き出された事件で、警察当局はこれまでに引き出し役(出し子)ら130人近くを窃盗容疑などで逮捕した。うち十数人は五つの指定暴力団の傘下組織に所属する組員だった。別の指定暴力団系組員の関与も浮上している。捜査関係者への取材でわかった。
警察当局は組上層部に金が流れたとみており、今後、特殊詐欺などとともに暴力団の新たな資金源となる可能性がある。
事件では5月15日朝、東京、愛知、大阪、福岡など17都府県で、3時間弱のうちに、南アフリカの銀行から流出したデビットカードなどの情報約3千件をもとに偽造されたカードで1万8千回以上引き出された。
捜査関係者らによると、逮捕者の大半は出し子で、組員の中には指示役もいた。山口組、神戸山口組、稲川会、道仁会、合田一家いずれかの傘下組織の構成員で、他に工藤会系組員についても関与した疑いがあるとして、福岡県警が11月に関係先を家宅捜索した。
新潟県では対立状態にある山口組系と神戸山口組系の組員が、同じグループの指示役と出し子となっていた。新潟、高知両県では特殊詐欺グループの捜査の過程で引き出しの手引書や偽造カードを発見。福岡、佐賀両県で逮捕された出し子は、覚醒剤所持容疑でも逮捕された。暴力団排除の機運が高まり、覚醒剤や賭博など旧来の収入源が細るなか、警察幹部は「組員らが個人のつながりで共存しようと考えたのだろう」とみる。
昨年12月にはエルサルバドルの銀行が発行するカード情報を悪用し、1都6県のATMから計約1億円が引き出された。この事件でも、流出した情報を磁気テープに記録し、別のカードに貼り付けた磁気カードが使われていた。
金融庁などによると、国内には海外発行のカードが使えるATMが約7万2千台あり、偽造しづらいICカードにも磁気カードにも対応しているのが特徴という。この利便性が不正引き出しに悪用された可能性がある。18億6千万円のうち約14億円が引き出されたセブン銀行は「安全面ではICカードしか使えなくするのが理想だが、利便性の観点から今のところ考えていない」としている。
■「捕まらない」誘われ
「現金を引き出す仕事がある。報酬は、引き出した額の3%だ」
4月中旬、新潟県長岡市内のキャバクラ。店の経営者で当時指定暴力団山口組系の組員だった田中純也被告(36)=窃盗罪などで起訴=が、店長と従業員2人を前にこう切り出した。店長らは、自分の幼なじみや知人で神戸山口組系組幹部の男らを誘い、田中被告も知人らを勧誘。即席の「出し子(引き出し役)」グループができた。
裁判の冒頭陳述や捜査関係者らへの取材などから、出し子が集う様子が明らかになりつつある。
一斉引き出しがあった5月15日早朝、田中被告は出し子を複数のグループに分け、自宅や駐車場などに呼び出してカードを配った。カードは両面とも白色で、裏面には黒の磁気テープ。表面には16桁の番号がふられていた。田中被告は、若い番号のカードから使うこと、1枚あたり10回程度引き出すこと――などと指示した。
警察への取材で、引き出しには全国で少なくとも300人以上が関与したことが判明。多くは「捕まらないから」と誘われ、数万円の報酬で請け負っていた。
神奈川県平塚市の無職の男(22)=窃盗罪で実刑判決=は、知人から「絶対に捕まることはない」と誘われた。不正だと気づいていたが金が欲しかった。計730万円を引き出し、報酬は約70万円だったとされる。福岡市の飲食店経営の男(37)は、暴力団関係者の男に「報酬は2万円」と持ちかけられた。捜査に「生活費に困っていたので話に乗った」と供述したという。
■「出し子」、1時間で430万円引き出し
この事件で出し子となり、9月に執行猶予付きの有罪判決を受けた福岡県の男性(25)が朝日新聞の取材に一部始終を語った。
◇
5月14日夕方、高校時代の友人から電話で誘われた。「ATMでカネを下ろすバイトがあるんやけど、やらん? 報酬は2万~3万円くらいじゃないか」
定職には就いていたが、10万円ほど借金を抱え、遊ぶ金もほしかった。「暴力団が関わっている」とも聞かされたが、深く考えずに引き受けた。
翌15日未明、福岡市・中洲のカフェで男2人と会った。1人はプロレスラーのような体格、もう1人は細身で長袖から伸びた手に入れ墨が見えた。「自分たちも頼まれた仕事なんです」と話す男たちの指示は具体的だった。「カードを入れたら言語選択で『日本語』、次に『キャッシング』を選ぶ」「暗証番号を入れて10万円引き出す」「出金は1枚20回まで」
午前5時。福岡中央郵便局をめざす車内で、連番の数字が書かれた白いカードと茶封筒を10枚ずつ渡された。現金を引き出したら、使ったカードと同じ番号が書かれた封筒に入れ、指示役に渡すよう言われた。
しかし、郵便局、ローソン、ミニストップを回っても、なぜか現金を下ろせない。その合間、指示役に電話があった。「セブン―イレブンで下ろせるみたい」
ATMの操作方法も最初の説明から一部変わった。「暗証番号は1111」。そう告げられた。
福岡市博多区と東区のセブン―イレブンに行き、3枚のカードで数十回にわたって出金し、1時間強で計430万円を引き出した。ATMで同じ白無地のカードを持った男とすれ違うこともあった。その後、カフェで会った指示役の1人にカードと封筒を渡した。だが報酬はもらえなかった。
1週間ほど後、事件をテレビのニュースで知った。このままいてもどうせ捕まる――。悩んだ末、6月中旬に警察に自首した。
起訴され、法廷に立った男性に裁判官が問うた。
「途中でやめたいと言えなかったのか」
男性は答えた。「断れる雰囲気じゃなかった。変な話に乗ってはいけないと思った」(稲垣千駿)
■都府県別の被害状況
(警察当局への取材による)
東京都 5億8千万円
茨城県 4千万円
栃木県 30万円
群馬県 3200万円
埼玉県 2億900万円
千葉県 2億円
神奈川県 4億3千万円
新潟県 8800万円
山梨県 2700万円
長野県 1千万円
静岡県 2600万円
愛知県 2千万円
大阪府 400万円
兵庫県 2300万円
福岡県 1億5千万円
佐賀県 200万円
長崎県 700万円
感想;
出し子をやる人は、お金に困っている人が多いようです。
そこには貧困が背景にあるようです。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」や経済協力開発機構(OECD)の調査で、標準的世帯の年間の可処分所得の半分未満で暮らす人の割合を示す「相対的貧困率」が、2012年で約16%になったことをあげながら、安倍首相に対し「6人に1人が貧困という実態。日本は世界有数の貧困大国だという認識はあるか」と聞いた。
千葉大医学生の強姦事件もそうですが、自分の人生を台無しにしてしまう行為になります。
最近読んだ本では、女子大生を恋愛関係に持ち込み、「彼女が他の男性に犯される願望があるので、ぜひお願い」ということで女性を風俗で働かせて、そのお金を自分に上手くいって投資させている例がありました。結婚も匂わせています。女性はせっせとお金を風俗で稼ぎ男性に渡しています。騙されているとも知らずに結婚を夢見ています。男性も学生です。大学の授業料や生活費が普通のアルバイトでは稼げないからです。
世の中には、騙してお金を得ることをやる人々がいます。それは彼氏かもしれないということです。
貧困率が高い現状を改善しないと、このような犯罪は減らないと思うのですが。
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