女優、小説家、動物愛護―いくつになっても挑戦を続ける杉本彩の知られざる内面に迫った。
「自由に生きるにはお金が必要だと思いました」
'87年に東レのキャンペーンガールとして芸能界デビューし、セクシーで芯の通ったタレントとして人気を博してきた杉本彩(55歳)。
そんな彼女のルーツは、凄絶な10代にある。中学時代、父が知人の借金を肩代わりし、執拗な取り立ての末に家を奪われ両親は離婚。母の愚痴を聞く毎日を受け止められず、15歳の杉本は自殺を図る。
「自由に生きるにはお金が必要だと思いました」
若くして自立心が芽生えた杉本は、高校を中退して着物のモデル活動を始める。それからスカウトされて芸能界に入った。
現在は女優業と並行し、自ら立ち上げた公益財団法人動物環境・福祉協会「Eva」の理事長として、動物に関する悲惨な現実の改善に向け日々闘っている。
24歳で独立、個人事務所を立ち上げ
10月5日、衆議院第一議員会館にて「Eva」が主催するシンポジウムが行われた。議員と話し合う杉本からは動物への愛、虐待への怒りや悲しみ、気概がメラメラと立ち上る。前回の法改正では徹底したロビー活動で、動物虐待をする人間の厳罰化の実現に尽力した。
動物愛護に携わるきっかけは30年近く前に遡る―。ドラマの撮影現場の近くで死にかけている野良猫を見つけ連れて帰った。それから入院させて里親も探した。保護活動に取り組む決意をするも、個人でできることに限界を感じ、やがて「Eva」を立ち上げる。
「動物への虐待や殺処分など悲惨な現実を直視して心はボロボロですが、動物に思いやりを持ち共生する社会を目指す活動は私の使命。使命から逃げたら、自分の人生からも逃げることになります」
親の借金で苦労した経験から自立心が強かった杉本。デビュー後、所属していた大手事務所との間で仕事の方向性がズレて、24歳の時に独立。個人事務所を立ち上げた。
「大手から離れると、思うように活動できず悔しい思いばかりしました。でも『決めたのは自分』と腹を括っていました」
妹夫婦との「トラブル」
チャンスがあれば、体を張って道を開いた。バラエティ番組では社交ダンスに挑戦。厳しい稽古で骨折しても、本番の競技会では麻酔を打って臨んだ。
ヘアヌード写真集も評価され、東映から「主役で一本撮りたい」と依頼され、杉本が選んだのが団鬼六の『花と蛇』だった。杉本は、エロスと情念を描くことに定評がある石井隆監督がメガホンを取ることを強く希望。が、石井監督のSM撮影は過酷で、身体には緊縛の痺れが長く残った。
「自分で自分の首をしめましたね(笑)。ただ、素晴らしい作品が残せて、本当に幸せです」
私生活では、'92年に結婚した夫と'03年に離婚。'11年に現在の夫と再婚した。
一方、妹や母の生活の面倒を献身的に見てきた。しかし、自分で立ち上げた会社の役員に迎えた妹夫婦が杉本を経営から遠ざけようとした。
「怒りと悔しさで爆発しそうでしたが自分の未熟さが招いたことだと受け止め会社を譲りました」
人生を豊かに生きるには何が大切か
譲った会社はすぐに倒産。妹夫婦と住んでいた母親を引き取ろうとしたが、母は妹側に立ち杉本を批判。ありもしない妄想を週刊誌に話し、杉本は母妹と絶縁した。 「とことん尽くしても、母と妹は当然としか思ってくれませんでした。家族の呪縛を断って、これからは自分の人生を大切にすることにしました」
「問題に立ち向かい、多くの動物の命と向き合ってきたからこそ、限りある生をどう生きるか深く考えるようになりました」
この心情にリンクする作品、ミュージカル『クリスマス・キャロル』に杉本はこの冬挑戦。頑固で無情なお金持ちが人間性を取り戻す物語だ。
「7年ぶりの出演ですが、私自身、その年月を経て、より深く作品が持つメッセージを理解できるようになりました。人生を豊かに生きるには何が大切か。例えば無償の愛や思いやり。おカネはどう使えば幸せかなど。作品の普遍的な魅力をお伝えできるようエンターテイナーとして頑張りたい。ご自分の人生に照らして見て頂きたいです」 「週刊現代」2023年11月4日号より
感想;
過酷な10代の経験を乗り越えて来られたから、人生に真摯に向き合っておられるのでしょう。
人と比較することなく、まさに自分の人生を生きられているように思いました。
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