二重のミスリード。真犯人は?…
というのがサスペンス部分。
真犯人の存在を示す情報として、現場検証時
・鑑識係長の見立て「2回刺されている。1か所は浅く、2か所目は深く、この2か所目が致命傷」
・財布の所持金が15万円以上(後の調べで、被害者・澄川は出所時(2週間前)の所持金は数千円だったことが判明)
ということで、犯人を逮捕して、容疑者が取り調べの時、「1回しか刺していない」と供述し、真犯人の存在が浮上という筋書きが見えてしまった。
まあ、容疑者が誰かを庇って自供し、その後、さらに真犯人が…という2重のミスリード。そして何より、今回のテーマが重かったので充分過ぎる捻りといえよう。
惜しむらくは、鑑識係長の言葉がちょっと力を込め過ぎていたので、読めてしまったこと。
それよりも、今回は澄川殺しの容疑者の少年・園田忍の言葉に考えさせられることが多かった。
澄川は、10年前忍の妹(当時7歳)を殺害していた。
忍は言う、
「18歳だったということで、人権とやらにやたら守られながら逮捕され、そして、たった10年で出てきた」
「人ひとりの命は、人ひとりの命しか、釣り合わない。死ぬ以外に償いはできない。……僕はそう思っています。だから、僕が殺したんです」
「僕、癌なんです。あと3か月も生きられない。だから最後に、やり残したをしたまでです」
「どうせ僕は死ぬ。法律で裁かれる前に…」
安積は二つの点で悩む。
①指紋、被害者の血液、自白、防犯カメラの映像など証拠はそろっているが、忍から受ける印象が彼が殺人を犯すとは思えない。(安積の娘(看護師)の「死を受け入れた時、優しくなれる。許そうって思う」という言葉、同じ病院の女の子を優しく励ます忍の穏やかな表情)
そして、②妹(家族)を殺されて悲しみや憎しみの沼に沈む被害者家族の心情に直面し、警察の仕事とは何かと悩む。
「君が犯罪を恨むのは分かる。だからと言って殺人が肯定されていいはずがない」(安積)
「殺人じゃない。制裁、敵討ちです。刑事さんは、家族を殺されたことがありますか?
僕の気持ちなんて一生分からない。僕は死ぬまで反省もしないし、謝罪もしない。僕は正しいことをしたんだ」
「確かに、澄川は罪を犯した。だが、裁きを受け、刑を全うした」
「だから終わったと。あの日、何と言って澄川を呼び出したと思いますか?……7歳の女の子を買わないか。…そして澄川はやってきた。……これでもあいつは更生したと言えるんですか?……10年の罰なんて何の意味もなかった。この国の法律は甘過ぎる。矛盾だらけだ」
「それでも、きみまでが法律を破ってという理屈にはならない」
「だから、理屈じゃないんです。感情なんですよ。どうしようもなく伸し上ってくる…どうしようもなく抑えようとしても伸し上ってくる憎しみ、苦しさ、悔しさ、寂しさ……ユリが殺されてから、僕と母は生き地獄だった」
「それでも君のしたことは許されない」
「別に許して欲しいなんて思っていない」
「澄川だって家族はいたんだ」
「だったら僕を殺しに来ればいい。いつでもお待ちしていますよ」
悩む安積と、お助けマン・速水(細川茂樹)との会話
「警察の仕事て何だろうなあ」
「それはねえ、犯罪者を逮捕することかなあ」
「それだけでいいのかなあ。おれは、してしまったことと向き合って欲しい、ちゃんと」
「うん、それはねえ…送検した後の仕事じゃないかなあ」
「俺はそうは思わない」
と言い放ち、歩き出す。心が決まったようだ、忍に自分が犯した罪の重さを分かって欲しくて、逮捕を先延ばしにする。
速水君、わざといつも常識的な安積と逆の意見を言う…憎いねえ
「俺には死に直面した人の気持ちは分からない。きみを理解しようというのは傲慢なのかもしれない。でも、わかって欲しいんだ。きみの犯してしまった罪の重みを。法を犯した意味を」
「法律なんて、生きていく人間のためのものでしかない。死んでいく僕には関係ない。僕は悪魔に魂を売った。癌になったことをうれしく思っている。復讐する勇気が出たんだから。
どうして澄川が死刑にならないんだって、恨んだこともあった。でも、今思うと感謝している。この手で殺すことができたんだから。
逮捕しても、裁判まで僕は持たないでしょう。僕の罪は誰にも裁かれないんだ。みんな僕のまねをすればいい。犯罪は減りますよ」
言葉に詰まる安積は、病室を出ていく忍を見送るだけだった。しかし、安積は忍の言葉が真意ではないと思う。
結局、凶器の包丁の入手先を明かせず(知らない)、女の子の心臓手術が成功し涙を流して喜ぶ忍を見て、安積は忍が犯人ではないと確信。
忍は母親を庇っていた。
となると、上記の忍の叫びは何だったのか?
大部分は本当の気持ちだと思うが、母親を庇って自分が犯人だと思わせるための嘘も含まれているはず。殺人を犯していないので、事実としては嘘だらけである。
安積の重大決意も空振りである。
母親の行動も意味不明気味。
自分が犯人(殺人未遂だった)なのに、
「あの子は逮捕されるのでしょうか?あの子はもう長くないんです。あの病院で余命を全うさせてあげたいんです。あの病院には、忍がユリの代わりのようにして可愛がっている女の子(葵)がいて、その子が三日後に心臓の手術をするんです。どうかそれまでは」
と、いけしゃあしゃあと。
そして、病気の息子を置いて死のうとするし。
と、サスペンス的には面白いが、人情話としては納得がいかない。
しかし、最後の忍の言葉が、この回の言いたかったことなのだろう。
「ずっと、澄川に死んで償ってほしいと思っていました。
でも、澄川が死んでも何も変わらなかった。
ユリが殺された悲しみも、怒りも、苦しみも、何一つ変わらなかった」
その言葉に引き続いて忍が「僕はもうこれから何のために生きていいのか分からない」と言って、泣き崩れるのは唐突感があり過ぎ。前の言葉に呼応していないように感じる。
ただ、そんな忍に、「朝顔を描き上がったら見せてくれるか」としか言えない安積。
夜、調書を描き上げても心が晴れない安積に、村雨(中村俊介)が「たまにはふたりで飲みにでも行きませんか」と遠慮がちに誘うのは、いいなあと思った。
いろいろあり過ぎの今回、まとまりのない記事になってしまいました。
というのがサスペンス部分。
真犯人の存在を示す情報として、現場検証時
・鑑識係長の見立て「2回刺されている。1か所は浅く、2か所目は深く、この2か所目が致命傷」
・財布の所持金が15万円以上(後の調べで、被害者・澄川は出所時(2週間前)の所持金は数千円だったことが判明)
ということで、犯人を逮捕して、容疑者が取り調べの時、「1回しか刺していない」と供述し、真犯人の存在が浮上という筋書きが見えてしまった。
まあ、容疑者が誰かを庇って自供し、その後、さらに真犯人が…という2重のミスリード。そして何より、今回のテーマが重かったので充分過ぎる捻りといえよう。
惜しむらくは、鑑識係長の言葉がちょっと力を込め過ぎていたので、読めてしまったこと。
それよりも、今回は澄川殺しの容疑者の少年・園田忍の言葉に考えさせられることが多かった。
澄川は、10年前忍の妹(当時7歳)を殺害していた。
忍は言う、
「18歳だったということで、人権とやらにやたら守られながら逮捕され、そして、たった10年で出てきた」
「人ひとりの命は、人ひとりの命しか、釣り合わない。死ぬ以外に償いはできない。……僕はそう思っています。だから、僕が殺したんです」
「僕、癌なんです。あと3か月も生きられない。だから最後に、やり残したをしたまでです」
「どうせ僕は死ぬ。法律で裁かれる前に…」
安積は二つの点で悩む。
①指紋、被害者の血液、自白、防犯カメラの映像など証拠はそろっているが、忍から受ける印象が彼が殺人を犯すとは思えない。(安積の娘(看護師)の「死を受け入れた時、優しくなれる。許そうって思う」という言葉、同じ病院の女の子を優しく励ます忍の穏やかな表情)
そして、②妹(家族)を殺されて悲しみや憎しみの沼に沈む被害者家族の心情に直面し、警察の仕事とは何かと悩む。
「君が犯罪を恨むのは分かる。だからと言って殺人が肯定されていいはずがない」(安積)
「殺人じゃない。制裁、敵討ちです。刑事さんは、家族を殺されたことがありますか?
僕の気持ちなんて一生分からない。僕は死ぬまで反省もしないし、謝罪もしない。僕は正しいことをしたんだ」
「確かに、澄川は罪を犯した。だが、裁きを受け、刑を全うした」
「だから終わったと。あの日、何と言って澄川を呼び出したと思いますか?……7歳の女の子を買わないか。…そして澄川はやってきた。……これでもあいつは更生したと言えるんですか?……10年の罰なんて何の意味もなかった。この国の法律は甘過ぎる。矛盾だらけだ」
「それでも、きみまでが法律を破ってという理屈にはならない」
「だから、理屈じゃないんです。感情なんですよ。どうしようもなく伸し上ってくる…どうしようもなく抑えようとしても伸し上ってくる憎しみ、苦しさ、悔しさ、寂しさ……ユリが殺されてから、僕と母は生き地獄だった」
「それでも君のしたことは許されない」
「別に許して欲しいなんて思っていない」
「澄川だって家族はいたんだ」
「だったら僕を殺しに来ればいい。いつでもお待ちしていますよ」
悩む安積と、お助けマン・速水(細川茂樹)との会話
「警察の仕事て何だろうなあ」
「それはねえ、犯罪者を逮捕することかなあ」
「それだけでいいのかなあ。おれは、してしまったことと向き合って欲しい、ちゃんと」
「うん、それはねえ…送検した後の仕事じゃないかなあ」
「俺はそうは思わない」
と言い放ち、歩き出す。心が決まったようだ、忍に自分が犯した罪の重さを分かって欲しくて、逮捕を先延ばしにする。
速水君、わざといつも常識的な安積と逆の意見を言う…憎いねえ
「俺には死に直面した人の気持ちは分からない。きみを理解しようというのは傲慢なのかもしれない。でも、わかって欲しいんだ。きみの犯してしまった罪の重みを。法を犯した意味を」
「法律なんて、生きていく人間のためのものでしかない。死んでいく僕には関係ない。僕は悪魔に魂を売った。癌になったことをうれしく思っている。復讐する勇気が出たんだから。
どうして澄川が死刑にならないんだって、恨んだこともあった。でも、今思うと感謝している。この手で殺すことができたんだから。
逮捕しても、裁判まで僕は持たないでしょう。僕の罪は誰にも裁かれないんだ。みんな僕のまねをすればいい。犯罪は減りますよ」
言葉に詰まる安積は、病室を出ていく忍を見送るだけだった。しかし、安積は忍の言葉が真意ではないと思う。
結局、凶器の包丁の入手先を明かせず(知らない)、女の子の心臓手術が成功し涙を流して喜ぶ忍を見て、安積は忍が犯人ではないと確信。
忍は母親を庇っていた。
となると、上記の忍の叫びは何だったのか?
大部分は本当の気持ちだと思うが、母親を庇って自分が犯人だと思わせるための嘘も含まれているはず。殺人を犯していないので、事実としては嘘だらけである。
安積の重大決意も空振りである。
母親の行動も意味不明気味。
自分が犯人(殺人未遂だった)なのに、
「あの子は逮捕されるのでしょうか?あの子はもう長くないんです。あの病院で余命を全うさせてあげたいんです。あの病院には、忍がユリの代わりのようにして可愛がっている女の子(葵)がいて、その子が三日後に心臓の手術をするんです。どうかそれまでは」
と、いけしゃあしゃあと。
そして、病気の息子を置いて死のうとするし。
と、サスペンス的には面白いが、人情話としては納得がいかない。
しかし、最後の忍の言葉が、この回の言いたかったことなのだろう。
「ずっと、澄川に死んで償ってほしいと思っていました。
でも、澄川が死んでも何も変わらなかった。
ユリが殺された悲しみも、怒りも、苦しみも、何一つ変わらなかった」
その言葉に引き続いて忍が「僕はもうこれから何のために生きていいのか分からない」と言って、泣き崩れるのは唐突感があり過ぎ。前の言葉に呼応していないように感じる。
ただ、そんな忍に、「朝顔を描き上がったら見せてくれるか」としか言えない安積。
夜、調書を描き上げても心が晴れない安積に、村雨(中村俊介)が「たまにはふたりで飲みにでも行きませんか」と遠慮がちに誘うのは、いいなあと思った。
いろいろあり過ぎの今回、まとまりのない記事になってしまいました。