英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『HERO』 第2話

2014-07-24 20:09:33 | ドラマ・映画
 裁判は検事と弁護士がディベートする、言わば感情を挟まない論理ゲーム。
 肯定側と否定側の立場に分かれて、議論によって主張の綱引きをして、その決着地点が判決である。


 これは今回のテーマの一つであるが、私が以前、
「裁判は真実を明らかにする場であるべきだ」と主張したことに対して、上記の裁判の概念を教授をされたことがある。
 私は法学を学んだことがないので「ああそうですか。そういうものなのか」と一つの考え方として心に留めておくしかなかった。
 確かに、法律の、そして、裁判のプロ同士が真剣に引っ張り合えば(戦えば)、しかも、それを判定する裁判官もプロであるので、正しい判決に到達する可能性は高い。最近は、国の方針で、判定にアマチュアを参加させている。
 しかし、もし、検事と弁護士の実力に差があれば、決着点が強い方に引っ張られることが必然である。なので、誤った判決が出される危険性も低くはない。

 今回、敏腕弁護士・桜井は「裁判はディベート」と言い切り、理論ゲームなので、弁護士と検事の立場を入れ替えても裁判は成立する」と断じた。
「桜井さんはお金をもらえば誰の味方にでもなれるんでしょうけど、検事は“社会のため”とか、“被害者のため”とか、そういう気持ちがなければできない仕事だと思っています。
 だから、先生には検事は無理です。久利生さんはディベートなんかやっているつもりはないはずですから」

 ある意味、スカッとする麻木事務官の台詞である。
 でも、まあ、あまり“社会のため”とか、“被害者のため”とかいう気持ちが強いのも考え物で、誤った方向に突き進む危険性も否めない。それに、起訴したからには有罪にしないとメンツが立たないという検事も多いはず。
 この麻木の主張は、前回の「罪を犯したという確信がなければ起訴してはいけない」という検事の精神とはちょっとずれているように思う。
 ここは、私の主張する「真実を明らかにする」精神を重視してほしいものである。
 

今回のもうひとつのテーマ
 資格や身分によって扱いが左右され、自分の主張を認めてもらえずいじける「どうせ事務官」の麻木に対して
「どうでもいいだろ、自分が今どこにいるかなんて。
 大事なのは、今の自分が何をするかだろ」

と励ます。(当の本人は、久利生が中卒と言う事実にうわの空で聞いていなかったが)

 いじけた麻木であったが、ドラマのラストでは、上述の桜井弁護士に対して反撃をした通り、吹っ切れたようだ。

今回の事件の真相
 痴漢(抱きつき)で捕まった初犯のエリートは、実は常習犯で、やり手弁護士の腕と示談金で不起訴になっていた男であった。
 真相究明の途中、「馬場検事が調べていた痴漢常習犯の犯行の3つがエリートの仕業」ではないかと思わせたが、実際はそれをはっきりさせるために、被害者を聴取する中で、エリートの常習性が判明するというひねりが利いていたのが良かった。

今週の川尻部長の怒鳴り
「検事さんの気まぐれに付き合うほど、警察は暇じゃないんですけどねぇ」という
 城西支部に対してネチネチ文句を言う刑事(渡辺哲)に対して、
「ひまぁ?…検察が暇だって言うのか?
 事件のこと調べて、何が悪いんだあ!
 捜査が足りずに、裁判でひっくり返されたら、あんた責任取れるのかぁ!!」

思わぬ反撃にあい、≪怒られちゃったぁ≫という顔の渡辺さんの顔が絶品だった。 


【ストーリー】番組サイトより
 この日、久利生公平(木村拓哉)が担当したのは、エリートサラリーマン、勝俣大毅(岩瀬亮)の痴漢事件。

 久利生の取り調べに、勝俣は素直に容疑を認める。しかし、事務官の麻木千佳(北川景子)は、勝俣の身勝手な動機に我慢ならない。

 久利生と千佳が、勝俣の取り調べを終えると、桜井丈太郎(谷原章介)弁護士が訪ねてきた。勝俣の弁護人だ。桜井は勝俣の一時帰宅を求める。また、今回被害に遭った女性と示談交渉をしたいと相談。さらに桜井は、勝俣が警察での取り調べをボイスレコーダーに録音していたと、久利生たちに聞かせた。そこには、取り調べた刑事の恫喝まがいの声と、怯えた様子の勝俣の声。桜井は違法な取り調べを盾に、要求を飲ませようという構え。久利生は冷静に話を聞くが、千佳は悪いのは勝俣だと言ってしまう。すると、千佳は桜井から、事務官は検事のサポート役で法律には素人なので黙っていて欲しいと一蹴された。

 結局、久利生は勝俣を釈放。腹立ちが納まらない千佳は、勝俣を取り調べた警察署に抗議の電話をするが、ここでも事務官と相手にされずイジけてしまう。そんな千佳に、久利生は自分の最終学歴を話す。茫然としてしまう千佳。久利生は、そんな千佳を促して勝俣の被害者、宮原祥子(大谷英子)のもとへ。

 祥子は、桜井から示談のコンタクトがあったが応じるつもりはないとキッパリ。ところが、後日、久利生のもとに祥子との示談が成立したと桜井が現れる。
コメント (4)
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『軍師官兵衛』 第29話【補足】~宗治自害の周辺~

2014-07-24 11:07:39 | ドラマ・映画
今ドラマでは宗治の自決が和睦への楔(くさび)となっていた
しかし、その必然性意義については多面的で複雑な絡みがあった


Ⅰ信長の急死がもたらした状況の変化
【秀吉サイド】
秀吉は明智を撃つのが最優先となり、中国遠征を早く終結しなければならなくなった⇒和睦を急ぐ
信長がいなくなったので、勝利の戦果としての宗治の首の必要性は低くなった
【毛利サイド】
秀吉軍は毛利と明智の挟み撃ち状態になり、大攻勢のチャンス(実際は信長の死を察知していない)

Ⅱ官兵衛・恵瓊の密約
【秀吉サイド・官兵衛】
和睦を成立させるため、毛利の本領安堵を約束する譲歩案を提示
宗治についてまで譲歩するのは、毛利側に異変を察知されてしまう
和睦を成立させるため、恵瓊にだけは信長の死を知らせ、協力を依頼

【毛利サイド・恵瓊】
本能寺の変により、和睦を結ぶ必要はかなり低下した
秀吉を叩くチャンスでさえあるが、恵瓊は秀吉や官兵衛を買っており、できれば戦いたくない
勝利したとしても、かなりの痛手を負うだろう
それよりは、秀吉(官兵衛)と手を組んだほうが得策である

 そういうわけで、官兵衛と恵瓊が意気投合
 うん、ここまでは納得
ところが、
「…して、和議を進めるに当たって、高松城の始末はどうする?」
「今一度、織田に寝返るよう、説き伏せるしかありません」
「うむ、そうと決まれば、こうしてはおれぬ。善は急げじゃ!」

 えっ?簡単すぎるだろっ。
 宗治の性格を考えると、寝返らずに自決を選ぶのは間違いない。
 現状において、和睦を結ぶことが最優先であるが、宗治の首は必須ではないはず。
 毛利が信長の死を知れば、和睦は成立しないどころか、秀吉軍を殲滅に動く可能性が大。
 秀吉と毛利が手を組むことで合意しても、隆景の気持ちや宗治の有能さを思えば、恵瓊が信長の死の秘密保持を条件に宗治助命を要求するのが妥当な流れではないのだろうか?
 確かに、「本領安堵」+「宗治助命」となれば、却って≪織田方に、何か異常事態が起こったのか?≫と疑われる危険性はあるが、恵瓊が「善は急げじゃ」と言うのは、急ぎ過ぎである。
 恵瓊が「宗治助命」を要求して、
 そこで、官兵衛が「毛利に疑われないため」という理由を挙げ、さらに、
「信長の死が毛利に知られてしまう可能性が低くはなく、それゆえ、宗治の死が必要である。
 宗治自決という事実が、和睦を結ばせる大きな礎となるはず。
 宗治が自決したにも拘わらず、和睦を蹴ってしまったのでは、まさに宗治は“無駄死に”なってしまう。
 和睦を決定的なものにするには、宗治の死は必須なのだ」
(実際、隆景は「宗治を無駄死にさせるのか?」という官兵衛に言葉が詰まっていた)

宗治の死は和睦の担保』だったと、ここまで論じて欲しかった。
 時系列に従って、こういった会話を見せてしまうのはネタバレになってしまうので、回想シーンにする必要はあると感じるが、本編はこの点に於いて恵瓊の腰(宗治の運命)が軽すぎた


Ⅲ隆景、恵瓊、官兵衛、三者会談
 宗治を見捨てるのか?と問う隆景に対し
恵瓊「宗治の切腹によって、城兵は救われ、和睦も成る。宗治も承知している」と説得。
 隆景は恵瓊の言葉に思案に沈むが、和睦の条件が良いことを訝しがる。そこへ、官兵衛が登場し、無益な戦を避けるためと説明、和睦の返答を迫る。
 独断で即答はできないという隆景に、
官兵衛「すべては天下のため。宗治は惜しい男であるが、その命こそ織田と毛利両家の和の証となり、この乱世を終わらせるのです」と力説。
 恵瓊も「宗治殿は、天下のためなら喜んで死ぬと言うておりました」とダメを押す。
 隆景「…………天下のためか……。“乱世を終わらせる”…しかと相違ないな」
 官兵衛「この命に代えましても、お約束します」
 隆景「相わかった。官兵衛、お主を信じよう」

 正論、最小限の(都合の良い)事実を駆使し、巧みに隆景の説得に成功。
 官兵衛の言葉はかなりグレーだ。


Ⅳ人質交換の場、隆景、官兵衛を糾弾
 毛利の旗を貸してくれという官兵衛の頼みに対し、
「毛利が織田に味方すると、明智に思わせるためか?
 謀ったな官兵衛!」
 この件(くだり)は、なかなか良かったが、“惜しむらくは視聴者に隆景が明智の使者により、信長の死を知ったこと”を明かさない方が、鮮やかだった。

 官兵衛、「味方の利とならぬことを口にしなかっただけ」と開き直る。
 追い打ちを掛ければ挟み撃ちになる、羽柴勢も進退窮まると毛利の優位を強調する隆景に対し、
「分からぬかっ!今天下に最も近いのは羽柴秀吉さま(である)!」
と大見得を切り、羽柴と戦うか、手を組んで乱世を終わらせるか、どちらが得策か、どちらを選ぶかを迫る。
 前回記事でも述べたが、
隆景「“毛利は天下を望んではならぬ”…それが亡き父の遺訓だ
    元より我らには版図を広げる野心はない。
    羽柴殿と和議を結び本領が安堵された今、大義なき者に付き世を乱すことは、毛利にとって何の理もない。
    行けっ! 一日も早く、明智を討て! わしはお主に懸ける」

 かっこいいぞ!隆景。

①毛利の本領安堵を約束した官兵衛を信じた
②宗治の死を経たうえ、和睦が成立した。それを反故にはできない
③秀吉と戦うのは、毛利も打撃を受ける
④毛利の義を重んじる家訓
 これらを考慮し、隆景の腹は決まっていたようだ。
 吉川元春には②が有効だったようで、ドラマの意図としては①も重要か。


 今話は、和睦周辺のそれぞれの思惑が絡み合ったコクのあるストーリーだったが、要らぬシーン(おねのシーン、長政と又兵衛の水飲み場?での奇跡の出会いなど)が多過ぎで、もっと、宗治の処遇に関する密約を掘り下げてほしかった。

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