名人を失冠して20日余り経った。
棋聖戦第1局でも永瀬六段に敗れ6連敗(対永瀬戦も4戦全敗)。
内容もよくない……「衰えたか」という声もあちこちで聞こえてきた。
きっぱりと反論したいが、反論できる材料に乏しい。しかし、棋聖戦第2局で勝利し、明るい兆しも見えてきた。
羽生将棋について、ここ数年感じていたこと、そして、現在の状況を整理して考察してみたい。
まず、ここ5年の羽生三冠のタイトル戦を振り返る。(左側がタイトル保持者、右側が挑戦者、青が勝者)
2011年度
名人戦 羽生三冠3-4森内九段 失冠
棋聖戦 羽生二冠3-0深浦九段 防衛
王位戦 広瀬王位3-4羽生二冠 奪取
王座戦 羽生三冠0-3渡辺竜王 失冠
タイトル戦としては2勝2敗(10勝10敗) 年度成績44勝19敗 0.6984
2012年度
名人戦 森内名人4-2羽生二冠 挑戦失敗
棋聖戦 羽生二冠3-0中村太六段 防衛
王位戦 羽生二冠4-1藤井九段 防衛
王座戦 羽生二冠3-1渡辺二冠 奪取
タイトル戦としては3勝1敗(12勝6敗) 年度成績51勝17敗 0.7500
2013年度
名人戦 森内名人4-1羽生二冠 挑戦失敗
棋聖戦 羽生三冠3-1渡辺三冠 防衛
王位戦 羽生三冠4-1行方八段 防衛
王座戦 羽生三冠3-2中村太六段 防衛
王将戦 渡辺二冠4-3羽生三冠 挑戦失敗
タイトル戦としては3勝2敗(14勝12敗) 年度成績42勝20敗 0.6774
2014年度
名人戦 森内二冠0-4羽生三冠 奪取
棋聖戦 羽生四冠3-0森内竜王 防衛
王位戦 羽生四冠4-2木村八段(1持将棋) 防衛
王座戦 羽生四冠3-2豊島七段 防衛
棋王戦 渡辺二冠3-0羽生四冠 挑戦失敗
タイトル戦としては4勝1敗(14勝7敗) 年度成績39勝15敗 0.7222
2015年度
名人戦 羽生四冠4-1行方八段 防衛
棋聖戦 羽生四冠3-1豊島七段 防衛
王位戦 羽生四冠4-1広瀬八段 防衛
王座戦 羽生四冠3-2佐藤天八段 防衛
王将戦 郷田王将4-2羽生四冠 挑戦失敗
タイトル戦としては4勝1敗(16勝9敗) 年度成績30勝17敗 0.6383
2016年度
名人戦 羽生四冠1-4佐藤天八段 失冠
棋聖戦 羽生三冠1-1永瀬六段 タイトル戦中
タイトル戦としては0勝1敗(2勝5敗) 年度成績3勝6敗 0.3333
「5年間+今年度」の通算では、タイトル戦としては16勝(防衛13、奪取3)8敗(失冠3、挑戦失敗5)。防衛戦は13勝3敗、挑戦は3勝5敗。
2011年度、名人、王座を失冠したものの王位を奪取し二冠を死守した後は、防衛を重ねながら三冠、そして四冠とタイトルを増やす。特に2013年度~2015年度は3年連続タイトル戦登場数が5。この間、挑戦失敗が4回あり、それをマイナス材料と捉える向きもあるが、タイトル挑戦すること自体が困難なので、圧倒的な実績と考えるのが妥当だ。(挑戦失敗の多さは、私としては不満だが)
特に、名人位に返り咲いた2014年度は朝日杯優勝、日本シリーズ準優勝、年度成績39勝15敗(0.7222)と申し分のない成績である。あの森内名人を4勝0敗で破って復位したことも素晴らしいが、何より、将棋の内容が素晴らしかった。
“ピーク”という考え方は好みではないが、この名人戦をひとつのピークと考えてよいだろう。
「その2」に続く
棋聖戦第1局でも永瀬六段に敗れ6連敗(対永瀬戦も4戦全敗)。
内容もよくない……「衰えたか」という声もあちこちで聞こえてきた。
きっぱりと反論したいが、反論できる材料に乏しい。しかし、棋聖戦第2局で勝利し、明るい兆しも見えてきた。
羽生将棋について、ここ数年感じていたこと、そして、現在の状況を整理して考察してみたい。
まず、ここ5年の羽生三冠のタイトル戦を振り返る。(左側がタイトル保持者、右側が挑戦者、青が勝者)
2011年度
名人戦 羽生三冠3-4森内九段 失冠
棋聖戦 羽生二冠3-0深浦九段 防衛
王位戦 広瀬王位3-4羽生二冠 奪取
王座戦 羽生三冠0-3渡辺竜王 失冠
タイトル戦としては2勝2敗(10勝10敗) 年度成績44勝19敗 0.6984
2012年度
名人戦 森内名人4-2羽生二冠 挑戦失敗
棋聖戦 羽生二冠3-0中村太六段 防衛
王位戦 羽生二冠4-1藤井九段 防衛
王座戦 羽生二冠3-1渡辺二冠 奪取
タイトル戦としては3勝1敗(12勝6敗) 年度成績51勝17敗 0.7500
2013年度
名人戦 森内名人4-1羽生二冠 挑戦失敗
棋聖戦 羽生三冠3-1渡辺三冠 防衛
王位戦 羽生三冠4-1行方八段 防衛
王座戦 羽生三冠3-2中村太六段 防衛
王将戦 渡辺二冠4-3羽生三冠 挑戦失敗
タイトル戦としては3勝2敗(14勝12敗) 年度成績42勝20敗 0.6774
2014年度
名人戦 森内二冠0-4羽生三冠 奪取
棋聖戦 羽生四冠3-0森内竜王 防衛
王位戦 羽生四冠4-2木村八段(1持将棋) 防衛
王座戦 羽生四冠3-2豊島七段 防衛
棋王戦 渡辺二冠3-0羽生四冠 挑戦失敗
タイトル戦としては4勝1敗(14勝7敗) 年度成績39勝15敗 0.7222
2015年度
名人戦 羽生四冠4-1行方八段 防衛
棋聖戦 羽生四冠3-1豊島七段 防衛
王位戦 羽生四冠4-1広瀬八段 防衛
王座戦 羽生四冠3-2佐藤天八段 防衛
王将戦 郷田王将4-2羽生四冠 挑戦失敗
タイトル戦としては4勝1敗(16勝9敗) 年度成績30勝17敗 0.6383
2016年度
名人戦 羽生四冠1-4佐藤天八段 失冠
棋聖戦 羽生三冠1-1永瀬六段 タイトル戦中
タイトル戦としては0勝1敗(2勝5敗) 年度成績3勝6敗 0.3333
「5年間+今年度」の通算では、タイトル戦としては16勝(防衛13、奪取3)8敗(失冠3、挑戦失敗5)。防衛戦は13勝3敗、挑戦は3勝5敗。
2011年度、名人、王座を失冠したものの王位を奪取し二冠を死守した後は、防衛を重ねながら三冠、そして四冠とタイトルを増やす。特に2013年度~2015年度は3年連続タイトル戦登場数が5。この間、挑戦失敗が4回あり、それをマイナス材料と捉える向きもあるが、タイトル挑戦すること自体が困難なので、圧倒的な実績と考えるのが妥当だ。(挑戦失敗の多さは、私としては不満だが)
特に、名人位に返り咲いた2014年度は朝日杯優勝、日本シリーズ準優勝、年度成績39勝15敗(0.7222)と申し分のない成績である。あの森内名人を4勝0敗で破って復位したことも素晴らしいが、何より、将棋の内容が素晴らしかった。
“ピーク”という考え方は好みではないが、この名人戦をひとつのピークと考えてよいだろう。
「その2」に続く
ええ、そうかもしれません。私が欲張りなだけです。
通算勝率7割2分近く(最近になって7割2分を切ってしまいました)なので、もっとタイトル勝利の率が高くてもいいのではないかと。
羽生三冠は本戦やリーグ戦からの出場が多いので、強敵に当たる率が非常に高いので掛け値なしの勝率と考えてよいと思います。それで、7割2分近いというのはとてつもない勝率だと思います。
ただ、それでも、対戦相手がタイトル戦出場レベルでない棋士もいるので、割り引いて考える必要があります。6割5分~8分といったところが妥当でしょうか。
それはともかく、渡辺竜王、森内九段が存在しなければ、どこまで、タイトル数を伸ばしていたのだろうかと思ってしまいます。
逆に考えると、「羽生三冠がいなければ」と考える棋士は多いでしょうね。(特に、佐藤康九段)
>タイトル戦勝率6割キープでも4-0で負けることは1パーセント
これは興味深い数字ですね。参考になります。
3連敗だと6.4パーセント。大山15世もタイトル戦では南・米長に棋聖戦で3連敗の例があります。4連敗は中原相手に2回です。いずれも晩年と言ってよい時期ですが。
“確率分布的”という表現に及び腰になってしまいました。「0.4の4乗」=0.0256ですね。
羽生三冠のタイトル戦成績は、90勝32敗(たぶん)で勝率0.738、ストレート敗退が3度(3連敗が2回…渡辺/王座戦・棋王戦、4連敗が1回…森内/竜王戦)です。
タイトル戦勝率が通算勝率より高いのは驚きです。また、ストレート敗退率は2.5%で理論に合致するのもおもしろいです。(3連敗を含みますが)