漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

【筌蹄】

2014-01-06 21:47:20 | 故事・成語・諺
 「魚を得て 【筌】 を忘る。」 という故事成語があります。先日の25-2を含め、たびたび出題されている頻出問題ですね。

 これを復習した際、改めて 【筌】 を 「辞典」 で調べ、 【筌蹄】 という熟語に出会いました。「辞典」 から引用しますと、「① 目的を達成するための方便や手段。② 案内、手引き。」 の意で、ここでは 【蹄】 はウサギを捕る罠を意味するとのこと。

 次いで 「四字熟語辞典」 で 【得魚忘筌】 を改めて調べたところ、類義語として 【得兎忘蹄】 というのが掲載されていました。

 【得魚忘筌】 と 【得兎忘蹄】 はどう見ても対になっていますから同じ出典ではないかと思い、【得魚忘筌】 の出典である 『荘子』 を検索してみたところ、やはりありました。



【 『荘子』 外物 第二十六 】

  筌者所以在魚 得魚而忘筌
  蹄者所以在兎 得兔而忘蹄
  言者所以在意 得意而忘言
  吾安得忘言之人而與之言哉

 魚や兎を捕まえてしまえば、そのための道具である筌や蹄のことは忘れてしまう。言葉も、その意味を理解してしまえば、その言葉自体のことは忘れてしまう。私は、どうにかしてそのように言葉を忘れられる人を探して、語り合いたいものだ。


 【筌】 から出発して、【筌】 ⇒ 【筌蹄】 ⇒ 【得魚忘筌】 ⇒ 【得兎忘蹄】 ⇒ 【 『荘子』 外物 第二十六 】  までたどりつくことができました。

 漢字の学習は、こういうところが楽しいですね。 ^^




<「漢検 漢字辞典」初版 掲載ページ>

【筌】 P.896
【蹄】 P.1089


<「漢検 四字熟語辞典」初版 掲載ページ>

【得魚忘筌】 P.365

【手臂】

2013-11-07 20:56:01 | 故事・成語・諺
 25-2で、故事・成語・諺の問題として 【シュヒ終に外に向かって曲げず。】 が出題されました。意味は and 様がコメントで教えて下さいました (25-2 振り返り その2) が、自分でも調べねばと 「大漢和辞典」 を繙いたところ、これ自体は載っていなかったのですが 【手臂】 を用いた別の用例が掲載されていましたので、ご紹介します。


 【手臂の頭目を扞(ふせ)ぐがごとし。】


意味は、「恰もかひなが頭や目を護るが如くである。下の者が上の者を護るをいふ。」 とあります。出典は荀子とのこと。

 ところで、「大漢和辞典」の「手」の項に掲載されている用例は370個! 50音順には書かれていないので、【手臂】 を探すのも大変でした。やはりすごい辞書です。 

【羝】 【彊】 【疆】

2013-10-29 18:49:16 | 故事・成語・諺
 一昨日の本試験、正解のつもりで書いた箇所の誤答がぼつりぼつりと明らかになり、心中穏やかではありません(笑)が、まあ振り返りは標準回答が来てからにすることにして、次回以降に向けての勉強を再開しています。

 明らかに実力の増強が必要な故事・成語・諺の分野を眺めていて、例によって 「今更」 の発見が二つありました。



 【羝】 おひつじ

 私はこの漢字の訓読み (字義) が覚えられず、いつも 「おひつじ」 か 「こひつじ」 かわからなくなっていたのですが、 【羝羊藩に触る】 の意味 (雄羊が勢いよく走って生け垣に突っ込み、角を引っ掛けてしまって身動きがとれなくなることから、勢いにまかせすぎると、やがて進退に困ることになるということ。) を考えれば、 【羝】 は当然角のある羊ですよね。漢字そのものと、故事・成語とが頭の中でリンクしていませんでした。



 【彊】  キョウ  つよ・い  し・いる
 【疆】  キョウ  さかい

 二つ目の「発見」は、この両者が違う漢字であることに初めて気づきました。 【君子以て自彊して息まず】 という故事・成語は学習済みで、 【自彊】 もちゃんと書けるのですが、ふと、「『彊』には『さかい』って意味もあったよなぁ」と思って改めて調べて見たら・・・という次第。私の知識が曖昧・あやふやだっただけですが、結構びっくりしました。


 本当に実力がついていくと、こんな 「新発見」 もなくなっていくのかと思うと少し寂しい気もする・・・などというのは負け惜しみですかね。(笑)



<「漢検 漢字辞典」初版の掲載ページ>

【羝】 P.1085
【彊】 P.339
【疆】 P.340

【襤褸(つづれ)】

2013-08-26 20:06:33 | 故事・成語・諺
 「間違えた問題(故事・成語・諺) その1」 の記事の中で、

 【昨日の襤褸(つづれ) 今日の錦】 

を紹介した際、「つづれ」 との読みは 「辞典」 に載っていないと書いたのですが、 【昨】 の項にこの成語そのものが載っており、そこには 【襤褸】 の部分の読みとして 「つづれ」 と記載されていました。


 「辞典」 の記載を整理しますと、

 【昨】 の項に 「昨日の襤褸 今日の錦」 が載っており、そこには 【襤褸】 の部分に 「つづれ」 との読みの記載がある。(P.561)
 【襤】  の項に、字義として 「つづれ」 との記載がある。(P.1537)
 【襤褸】 の項には、読みとしては 「ぼろ」 「らんる」 のみで、 「つづれ」 の記載はない。(P.1537)

となっていました。厳密には正確でない記事をアップしてしまい、大変失礼しました。

スイ逝かず

2013-07-26 12:38:11 | 故事・成語・諺
 故事・成語・諺の問題です。


 【スイ逝かず】


 書けますか?







 正解は、

 【騅】

 【騅】 とは、項羽の愛馬の名。敵軍に囲まれたときに愛馬が歩き出さないのを嘆いたという故事から、物事が思い通りにゆかず苦境に陥るたとえに用いるそうです。

 「辞典」には、漢字そのものしか掲載されていませんが、「満点阻止問題」としてはありえるかな??




<「漢検 漢字辞典」初版の掲載ページ>

【騅】  P.825