せをはやみ そでよりもるる なみだがは ものおもひもなき ひともぬれけり
瀬をはやみ 袖よりもるる 涙川 もの思ひもなき 人もぬれけり
流れが早くて、袖から漏れてしたたりおちてしまうほどに涙があふれ、自分とは関係ないと思っているであろう人さえ濡らしてしまっているよ。
第二句は古来伝わる伝本では「袖よりも見る」とされているところ、私がこのブログの元とさせていただいている「土佐日記 貫之集」(木村正中 校注)で「私見」として「袖よりもるる」と改められています。悲嘆の涙が川のように流れて本来関係のない人まで濡らしてしまっているという歌意からすると、確かに「もるる」の方がふさわしいかもしれませんね。