あはれてふ ことこそうたて よのなかを おもひはなれぬ ほだしなりけれ
あはれてふ ことこそうたて 世の中の 思ひ離れぬ ほだしなりけれ
小野小町
「あはれ」という言葉こそが、ますます出家してこの俗世から離れる思いになれない束縛なのであったよ。
「うたて」は「ますますはなはだしく」、「思ひ離る」は「出家して俗世から離脱する」、「ほだし」は「束縛するもの」の意。現代の感覚ではややわかりづらいですが、出家することは当時の理想で、小町自身も出家したい思いはあるけれど、人恋しい思いが妨げとなってそれができない葛藤を詠んだ歌ということのようです。