よのなかは ゆめかうつつか うつつとも ゆめともしらず ありてなければ
世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ
よみ人知らず
この世の中は夢なのか現実なのか。現実とも夢ともわからない。存在していると同時に無であるのだから。
他の多くの古今集歌とは異なる、哲学的な歌ですね。存在と無の同一性はヘーゲル、ハイデガーの思想が有名ですが、ヘーゲルは19世紀、ハイデガーは20世紀の哲学者で、それより1000年前の古今集にこのような歌があるということには、とても驚かされました。特定の誰かがどこかでこの思いに至ったというより、誰しもがその奥底に持っている思想なのかもしれませんね。