漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0942

2022-05-29 05:39:14 | 古今和歌集

よのなかは ゆめかうつつか うつつとも ゆめともしらず ありてなければ

世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ

 

よみ人知らず

 

 この世の中は夢なのか現実なのか。現実とも夢ともわからない。存在していると同時に無であるのだから。

 他の多くの古今集歌とは異なる、哲学的な歌ですね。存在と無の同一性はヘーゲル、ハイデガーの思想が有名ですが、ヘーゲルは19世紀、ハイデガーは20世紀の哲学者で、それより1000年前の古今集にこのような歌があるということには、とても驚かされました。特定の誰かがどこかでこの思いに至ったというより、誰しもがその奥底に持っている思想なのかもしれませんね。