延長六年、中宮の御屏風の歌四首、右近権中将うけたまはりて
あれびきに ひきつれてこそ ちはやぶる かものかはなみ うちわたりけれ
あれびきに 引きつれてこそ ちはやぶる 賀茂の川波 うち渡りけれ
延長六年(928年)、右近権中将の仰せを承り、中宮のために詠んだ屏風歌四首
賀茂祭の榊の鈴を引き鳴らすために、人々が賀茂川の流れを渡っている。
冒頭の「あれ」は賀茂祭で神霊が降臨する榊のことで、「あれびき」は榊にかけた鈴を引き鳴らして、願い事が叶うのを祈ること。詞書の「中宮」は第60代醍醐天皇の中宮藤原穏子(ふじわら の おんし/やすこ)、「右近権中将」は藤原実頼(ふじわら の さねより)のこと。穏子は、第61代朱雀天皇、第62代村上天皇の生母でもあります。