九月九日、老いたる女、菊して面のごひたる
けふまでに われをおもへば きくのうへの つゆはちとせの たまにざりける
今日までに われを思へば 菊のうへの 露は千歳の 玉にざりける
九月九日、年老いた女が、
私がこの歳まで長く生きてこれたことを思うと、菊の花に置く霜はまことに千年の長寿をもたらす玉であるのであろう。
詞書の最後「のごひたる」は「のごふ(拭ふ)」の連用形+完了の助動詞「たり」の連体形で、「のごふ」はふき取る、ぬぐうの意。長寿を願い、菊の露で湿したきせ綿で顔などをぬぐった風習を詠んだ歌ですね。