承平五年十二月、内裏御屏風の歌、仰せによりて奉る
女、簾のもとにゐたるに、男ものいふ。桜の花咲けり
よそにては はなのたよりと みえながら こころのうちに こころあるものを
よそにては 花のたよりと 見えながら 心のうちに 心あるものを
承平五年(935年)十二月、宮中において、天皇の仰せにより屏風歌を奉る
簾の近くにいる女に、男がものを言う。桜の花が咲いている。
よそから見れば、花につられてのんびりと語りかけているように見えるのであろうか。心の内には切ない思いが満ちているのになあ。