つつめども そでにたまらぬ しらたまは ひとをみぬめの なみだなりけり
つつめども 袖にたまらぬ 白玉は 人を見ぬ目の 涙なりけり
安倍清行
包んでも袖に溜まることなくこぼれる白玉は、あなたに逢えない私の涙なのですよ。
詞書には、出雲寺での法要で真静法師が話した法話を歌にして小野小町に届けたとあり、その際の法話とは、法華経の「衣裏繋珠の譬え(※)」のことと言われています。同じくこの法話を元としていると思われる歌は、0425 を初め、古今集のそこかしこに見られるようです。
詞書に登場する真静法師も古今集の歌人で、二首(0453、0921)入集していますね。
(※)衣裏繋珠(えりけいじゅ)
ある貧乏な男が金持ちの親友の家で酒に酔い眠ってしまった。親友は遠方の急な知らせから外出することになり、眠っている男を起こそうとしたが起きなかった。そこで彼の衣服の裏に高価で貴重な宝珠を縫い込んで出かけた。男はそれとは知らずに起き上がると、友人がいないことから、また元の貧乏な生活に戻り他国を流浪し、少しの収入で満足していた。時を経て再び親友と出会うと、親友から宝珠のことを聞かされ、はじめてそれに気づいた男は、ようやく宝珠を得ることができた。この物語の金持ちである親友とは仏で、貧乏な男は声聞であり、二乗の教えで悟ったと満足している声聞が、再び仏に見え、宝珠である真実一乗の教えをはじめて知ったことを表している。(Wikipediaより引用しました)