漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 618

2024-12-24 05:21:24 | 貫之集

近隣(ちかどなり)なる人のときどきとかういふを、ほかにうつろふと聞きて

ちかくても あはぬうつつに こよひより とほきゆめみむ われぞわびしき

近くても 逢はぬうつつに 今宵より 遠き夢見む われぞわびしき

 

近隣に住む愛しい人が「ときどきは逢いましょう」などと言っていたのが、他に移り住むと聞いて

近くにいても現実に逢うこともないのに、あなたが去ってしまう今宵からは、更に逢瀬を遠く夢見ることになるのであろう。そんな自身がわびしい。

 

 貫之集第五「恋」で詞書が付された歌はこの 618 と 650、674 の三首だけです。860 から始まる、「近隣なる」異性との一連の贈答歌と関連があるのかもしれません。

 また、732 には類歌といって良い、同じモチーフの歌も登場します。

 

わかれゆく ひとををしむと こよひより とほきゆめぢに われやまどはん

別れ行く 人を惜しむと 今宵より 遠き夢路に われやまどはん

(732)

 

 



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