馬に乗りたる男ども、古里とおぼしきところにうちよりて、桜を折る
ふるさとに さけるものから さくらばな いろはすこしも あれずぞありける
古里に 咲けるものから 桜花 色はすこしも あれずぞありける
馬に乗った男たちが、以前来たことがあると思われる場所に寄って、桜を折っている
以前にいて、今は荒廃してしまった里にもかかわらず、桜の花は少しも荒涼とした感じにならずにいたのであるなあ。
「ふるさと」には ①かつての都 ②もといた場所、住んでいたところ ③生まれ故郷 の3つの意味がありますがここでは②で、しかも今は荒れ果ててしまった場所として詠まれています。類歌は 426、427 にも見られ、また著名な 790 も類似の発想ですね。
ひとはいさ こころはしらず ふるさとの はなぞむかしの かににほひける
人はいさ 心は知らず 古里の 花ぞむかしの 香に匂ひける
(790)