よそながら わがみにいとの よるといへば ただいつはりに すぐばかりなり
よそながら わが身にいとの よるといへば ただいつはりに すぐばかりなり
くそ
実際は関係ないのに、わが身に糸を縒るように従兄弟が寄りついていると人が噂をする。糸は針の穴を通すけれど、そんな噂は偽りとしてやり過ごすだけです。
詞書には「いとこなりける男のよそへにて、人のいひければ」とあります。「よそへ」は関係がある意で、ここでは作者とそのいとこの男とが恋仲にあるということ。歌の中では、「いと」が「糸」と「いとこ」、「よる」が「縒る」と「寄る」、「いつはり」が「針」と「偽り」、「すぐ」が「挿(す)ぐ」と「過ぐ」の掛詞になっていて、巧みに二重の意味を詠み込んでいます。
作者のくそは、平安時代前期の女流歌人源久曾(みなもと の くそ)のこと。詳しい系譜は不明で、古今集への入集はこの一首のみです。