漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1054

2022-09-18 05:54:48 | 古今和歌集

よそながら わがみにいとの よるといへば ただいつはりに すぐばかりなり

よそながら わが身にいとの よるといへば ただいつはりに すぐばかりなり

 

くそ

 

 実際は関係ないのに、わが身に糸を縒るように従兄弟が寄りついていると人が噂をする。糸は針の穴を通すけれど、そんな噂は偽りとしてやり過ごすだけです。

 詞書には「いとこなりける男のよそへにて、人のいひければ」とあります。「よそへ」は関係がある意で、ここでは作者とそのいとこの男とが恋仲にあるということ。歌の中では、「いと」が「糸」と「いとこ」、「よる」が「縒る」と「寄る」、「いつはり」が「針」と「偽り」、「すぐ」が「挿(す)ぐ」と「過ぐ」の掛詞になっていて、巧みに二重の意味を詠み込んでいます。

 作者のくそは、平安時代前期の女流歌人源久曾(みなもと の くそ)のこと。詳しい系譜は不明で、古今集への入集はこの一首のみです。



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