やまびこの こゑのまにまに たづねゆかば いづこともなく われやまどはむ
山彦の 声のまにまに たづね行かば いづこともなく われやまどはむ
山彦に惹かれるままに尋ねていったならば、私はどこへともなく迷いこんでしまうだろう。
作者を迷わせる「山彦の声」とは、幻想の中での恋人との応答でしょうか。後撰和歌集(巻第十三「恋五」 第970番)に
やまびこの こゑのまにまに とひゆかば むなしきそらに ゆきやかへらむ
山彦の 声のまにまに 訪ひ行かば むなしき空に 行きや帰らむ
という歌(ただし、こちらは問答歌の返しの一首です)があり、あるいはそれを踏まえての詠歌かもしれません。