漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 630

2025-01-05 05:52:23 | 貫之集

やまびこの こゑのまにまに たづねゆかば いづこともなく われやまどはむ

山彦の 声のまにまに たづね行かば いづこともなく われやまどはむ

 

山彦に惹かれるままに尋ねていったならば、私はどこへともなく迷いこんでしまうだろう。

 

 作者を迷わせる「山彦の声」とは、幻想の中での恋人との応答でしょうか。後撰和歌集(巻第十三「恋五」 第970番)に

 

やまびこの こゑのまにまに とひゆかば むなしきそらに ゆきやかへらむ

山彦の 声のまにまに 訪ひ行かば むなしき空に 行きや帰らむ

 

という歌(ただし、こちらは問答歌の返しの一首です)があり、あるいはそれを踏まえての詠歌かもしれません。