漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 632

2025-01-07 05:59:00 | 貫之集

ひとしれず いはぬおもひの わびしきは ただになみだの ぬらすなりけり

人しれず いはぬ思ひの わびしきは ただに涙の ぬらすなりけり

 

人知れず思い、口には出さない恋のわびしさに、ただただ涙が頰を濡らすのであったよ。

 

 初句の「ひとしれず」は貫之が好んだフレーズのようで、この 632 以外にも貫之集には 17 に始まって152503539633657、さらに「ひとしれぬ」が 542 にあるということで、多くの歌がこの初句から詠まれています。勅撰和歌集にも、17 が拾遺和歌集に、542古今和歌集(0606)に採られており、また新千載和歌集には 539 と非常に良く似た歌(一方が他方の改作であるのかもしれません)が採録されています。