ちるとみて あるべきものを うめのはな うたてにほひの そでにとまれる
散ると見て あるべきものを 梅の花 うたてにほひの 袖にとまれる
素性法師
梅は美しく咲いては散るもの。それはやむを得ないと思って受け入れようとしているのに、困ったことにその香りが袖に残っていることだ。
ひとつ前の 0046 は過ぎ去っていく春を惜しみ、袖に残った梅の香りで春を偲ぼうという歌でしたが、こちらは春が去って梅が散るのを名残惜しくは思いつつも仕方のないこととして諦めようとしているのに、それをさせてくれない残り香が恨めしいという心情を詠んでいます。梅を称賛する思いを歌っていることに変りはありませんが、ちょっと意表をついた観点と言えるかもしれませんね。