ちりぬとも かをだにのこせ うめのはな こひしきときの おもひいでにせむ
散りぬとも 香をだにのこせ 梅の花 恋しき時の 思ひ出にせむ
よみ人知らず
梅の花よ、散ってしまっても、せめて香りだけでも残しておくれ。恋しく思ったときの思い出にするから。
散りゆく梅の花の名残惜しさを歌った 0046 からの3首で、0032 から続いた梅を歌った歌が締めくくりとなり、次の 0049 からはいよいよ桜が登場します。「いよいよ」とつい書いてしまうのは、私たち現代人にとって春を象徴する花といえばやはり桜だとの思いがあるからですが、奈良時代には桜よりも梅の方が春の花として愛され、それが平安時代頃には逆転(?)して桜がより愛されるようになっていったようです。そのことは歌集に採録されている歌の数にも表れており、万葉集では梅の歌110首に対して桜を詠んだ歌は半分以下の43首ですが、古今和歌集では梅は 0032 からこの 0048 までの17首である一方、桜は次の 0049 以降70首にも及んでいます。
というわけで次から始まる桜の歌の数々をどうぞご賞味ください。^^