よそにのみ あはれとぞみし うめのはな あかぬいろかは をりてなりけり
よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花 あかぬ色香は 折りてなりけり
素性法師
遠くから眺めて素晴らしいと思っていた梅の花の、見飽きることのない色や香りを、枝を折って初めて知ることができた。
枝を折ることでより近くから梅を見たりその香りを感じたりすることで、改めてその魅力に気づくことができたということ。梅の花に寄せて、思いを寄せる女性のことを歌ったものとの解釈もできそうです。
出家して仏門に入った法師が異性の魅力を歌にするということには違和感も感じますが、出家ばかりか隠遁生活に自ら入った西行は、戦乱の世のはかなさを歌う一方で、何百首もの恋歌を残しています。歴史上の話として僧侶が出てくると、私たちは勝手に極めてストイックな修行者を想像してしまいますが、そこは生身の人間のこと、恋情も含めた人間らしさ、人間臭さも残した生き様であったのかもしれませんね。