みてのみや ひとにかたらむ さくらばな てごとにをりて いへづとにせむ
見てのみや 人にかたらむ 桜花 手ごとに折りて 家づとにせむ
素性法師
ただ見てそれで人に話すのではとても足りない。この桜花をめいめいで手折って家への土産に持って帰ろう。
この桜の美しさをわかってもらうには、見た印象を語るだけではダメで実際に見てもらうしかない。そのために桜の枝を折って持ち帰り、家で待つ家人に実際に見せてやりたいという想い。
梅の歌にもしばしば出てきましたが、桜についても「枝を折る」ということが良く歌われます。いくら咲き誇る梅や桜が美しいからといって、枝を折って持ち帰るなどということをしたら、現代では大変な批判を浴びることでしょうが、奈良・平安の時代にあってはそうした感覚はなく、むしろ花を愛でる所作として肯定されていたのですね。
今日はクリスマスイブ。今年もあと一週間ですね。
古今和歌集の歌を一首ずつご紹介するこのシリーズ。10/31に急に思い立って始めて、なんとかここまで続けて来れました。読んでいただいている皆さんに、心より御礼申し上げます。一日一首のペースをどこまで守れるかはともかくとして、気長に続けていきたいと思っていますので、お気の向かれたときには、引き続きお付き合いください。