年のつごもり
ゆくつきひ かはのみづにも あらなくに ながるることも いぬるとしかな
行く月日 川の水にも あらなくに 流るるごとも いぬる年かな
年の晦日
過ぎていく月日は、川の水でもないのに、まるで流れるごときに感じられ、年が終わって行く。
460 の元日から始まり、時の流れに沿って連ねられた一群の歌は、年の終わりを詠んだ本歌でしめくくりです。
この歌は、玉葉和歌集(巻第六「冬」 第1028番)に入集しています。
松と竹とあり
まつもみな たけもあやしく ふくかぜは ふりぬるあめの こゑぞきこゆる
松もみな 竹もあやしく 吹く風は 降りぬる雨の 声ぞ聞こゆる
松と竹がある
松に吹く風も竹に吹く風も、不思議なことに降る雨の音のように聞こえる。
松に吹く風の音を意味する「松籟」という言葉がありますね。同じく「竹籟」という語もあるにはあるようですが、「松籟」にちなんだ造語のようなものなのかもしれません。
初雪
ゆきふれば くさきになべて をるひとの ころもでさむき はなぞさきける
雪ふれば 草木になべて 折る人の 衣手寒き 花ぞ咲きける
初雪
雪が降ると草にも木にも積もり、それを折る人の袖もさぞ寒いであろうが、一面に白い花が咲いたようになって美しいことだ。
「衣手」は「袖」を意味する歌語ですね。
網代
やまかぜの いたくふきおろす あじろには しらなみさへぞ よりまさりける
山風の いたく吹きおろす 網代には 白波さへぞ よりまさりける
網代
山風がひどく吹きおろす川の網代には、風とともに白波までもますます寄せてくる。
網代といえば、紅葉とあわせ詠まれるイメージが強いですが、ここでは白波ですね。