日大アメフト部の薬物事件は22日、部員計5人に薬物がまん延していた疑いが浮上したことで大学のこれまでのずさんな対応が浮き彫りとなってきた。家宅捜索の令状には通常、容疑者の名前が出ているため、新たな4人についても把握しているはずの日大。学生からは「ほかでも薬物を使っている噂はある」と学内のまん延を懸念する声が出ている。そんな深刻な状況にもかかわらず、日大側は甘い対応に終始した。
捜索着手から1時間ほどたってから都内の自宅を出た林真理子理事長は、報道陣の問いかけに無言。東京都千代田区の日大本部を出る際も地下駐車場で車に乗り込み、数十人集まった報道陣に対応せず、帰宅時も質問に応じなかった。
日大は公式サイトにコメントを掲載。「誠に遺憾」「心よりお詫(わ)びする」とした上で「容疑が明らかになった場合には厳正に対処する」と記した。これまで唯一応じてきたメール取材には「学内調査の結果については、現在確認中ですので回答を差し控えさせていただきます」と返答。大学の敷地内が違法薬物の温床になっていたという疑惑について説明することはなかった。
これまでも対応の甘さが指摘されてきた。アメフト部は昨年10月に保護者から大麻使用の調査を求められ、部員への聞き取りをしたが、情報は部内でとどめ、学校側には上げていなかった。大学側は、競技スポーツを担当する沢田康広副学長らが寮を調査し、不審物を発見するも、すぐに警察に届けず、沢田氏の責任下で12日間保管した。
文部科学省は一連の日大の対応を問題視し22日、捜査機関への連絡が遅れたことなどの原因や背景を検証するよう日大に文書で指導した。第三者委員会による調査を求め、9月15日までに報告するよう要請。保護者から大麻使用に関する情報提供があった際に部内の対応にとどめた理由や、大麻のような不審物を見つけた際に警察や理事長への連絡が遅れた理由など調査・検証を求める10項目を列記した。
林理事長は18年のアメフト部の悪質タックル問題から田中英寿前理事長の脱税問題もあり、日大の隠蔽(いんぺい)体質を改善するために理事長に就任した。しかし会見では、日大側の対応を「適切だった」と連呼。この日は逃げるようにして取材に応じず、日大の“透明化”を象徴するはずの期待外れの林理事長の存在意義が問われそうだ。
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