題名のとおり、故事成句の元になった出来事を中心に中国の歴史をたどるという本です。
神話・伝説の時代から清王朝の滅亡まで(元以降は駆け足ですが)をかいつまんでコンパクトに復習するのにも役立ちます(なにしろ岩波ジュニア新書ですから(笑))。
そして、年代や前後関係についてけっこう記憶があいまいだったことに気が付かされます。
本書で取り上げられているのは日本でもおなじみの有名な故事成句ばかりですが、その多くが「呉越同舟」の春秋時代から劉備が諸葛孔明を「三顧の礼」をもって迎えた三国時代という紀元前7世紀から3世紀に集中しています。
いかに中国人が歴史の記録に熱心だったか、そして、人間の営みが昔から変わらないか、ということに改めて感心します。
ところで最近問題になっている新疆ウイグル自治区のウイグル族と漢族の紛争ですが、もともと中国全土を最初に統一したのは北方異民族です。
南北朝時代鮮卑族が建てた北魏が439年に華北地方を統一し、その後東魏と西魏に分裂、東魏→北斉、西魏→北周となったあと、北周が北斉をほろぼし隋となり、589年に隋が南朝最後の王朝陳をほろぼして中国を統一しました。
隋の後300年続いた唐もまた北朝系の王朝です。
その後13~14世紀の元はモンゴル族ですし、17~20世紀初頭の清は満州の女真族の王朝です。(新疆は18世紀に清に征服されて以降「中国の一部」として今に至っています。)
そうなると「漢民族」って言っても歴史的には混血が進んでいるはずなので「漢民族」ってなんなんだろうという素朴な疑問がわいたので、Wikipedia「中国の少数民族」を調べてみました
中国政府は、民族区域自治という少数民族政策を取っている。国民を、漢族と55の「少数民族」とに区分し、その民族ごとに集住地域を「区域自治」の領域として指定した。そこでは、「民族の文字・言語を使用する権利」、「一定の財産の管理権」「一定規模の警察・民兵部隊の組織権」「区域内で通用する単行法令の制定権」などを行う事を認めている。国民を構成する諸集団が、どの「民族」に帰属するかを法的に確定させる行政手続きを、民族識別工作といい、清代から民国期にかけて伝統的に「五族」とされてきた民族数は、この手続きにより56にまで増加した。
とあります。
言語分布図を見ても、独自の文化を持つ少数民族以外を漢民族として整理しているようですね。