くりまんじゅうの日記

世間より少し いやだいぶん遅れている
老シーラカンスです。

文豪の恋文。

2020-10-01 | 映画・TV

初回放送が1998年「文豪の恋文」を題材にした番組を先週 NHKアーカイブス
でやっており 録画してあった谷崎潤一郎の恋文を 昨日観ました。
 

生涯に三度結婚した恋多き男 谷崎潤一郎が 三番目の妻となる松子にあて
書いたラブレターが何通か紹介されました。松子は谷崎が死ぬまで寄り添った
妻になります。

最初の妻 千代との婚礼写真です。谷崎は妻の妹 女優のせい子とねんごろ
になり せい子をモデルに『痴人の愛』を書きあげますが 妻との仲は冷え
その後 妻千代を 佐藤春夫に譲ることになります ⇒    秋刀魚の歌
    
  

この「妻譲渡事件」は新聞にも掲載され 当時たいへんな話題となる中 取材に
来た若い女性記者で 20歳も歳下の古川丁未子と 谷崎は2度目の結婚をします。
このとき谷崎42歳です。
  
大正12年 関東大震災で被災した谷崎は芦屋に居を移し 友人の芥川龍之介から
紹介された 船場の豪商根津家の若奥さまで 夫も子もいる根津松子に一目ぼれし
せっせと連日 恋文を送るようになります。
   
  
  

このころの谷崎は 小説家としての地位も固まり 妻譲渡事件でますます有名に
なったそんな人物から 連日 熱い思いをつづった達筆の恋文が届けば 女なら
だれしも心が揺れます。

谷崎はつぎに出す小説の挿し絵を 松子に似た女性にするとまで言い 御寮人様
とは松子のことです。 
  

夫のほうとう癖と女遊びに悩んでいた松子は やがて谷崎と密会するようになります。
谷崎は松子と会うための隠れ家まで建て あいびきを重ねます。今でいうW不倫です。
今も残るこの隠れ家で『春琴抄』が書かれました。
  

谷崎は二番目の妻と 松子は夫と それぞれ離婚し 昭和10年谷崎は三度目の結婚を
します。知り合ってから9年の歳月が流れ 谷崎50歳・松子は32歳になっていました。
  

谷崎は結婚してからも 松子に恋文を綴りつづけます。その文面は最初から変わらずに
松子を 御寮人様としたためてありました。
    

二人が住んだ 倚松庵(いしょうあん)で 谷崎は次々と作品を発表し『細雪』は
倚松庵で執筆したといわれます。
  

細雪は 松子の4人姉妹がモデルとされており 松子は上から2番目の 小説では幸子です。

大阪の造船所の令嬢として生まれ 豪商へ嫁いだ松子には 生まれついてのはんなりとした
世界が身に付いており 細雪は大衆の支持を得てベストセラーとなって 時代を越えて何度も
くり返し 映画や舞台で演じられてきました。
  
      
  

谷崎の何十年にも渡る女性遍歴を思うと 東出・大也氏の不倫や浮気はかわいいものです。
谷崎が言う創作の女神さまを求め 女性の間を エネルギッシュに飛びまわった生涯でした。

最初の妻の妹との 道ならぬ恋から『痴人の愛』が生まれ 妻譲渡事件からは佐藤春夫の
『秋刀魚の歌』が書かれ 人妻であった松子との不倫から『細雪』『卍』が誕生したと思えば
谷崎のしてきたことは 結果的には 世に不朽の名作をおくり出したことになります。

谷崎が品行方正な男であれば あの数々の 当時としては発禁ものの小説が生まれることは
なかったでしょう。

崇拝する高貴の女性がいなければ 創作ができない と恋文に綴った谷崎に 松子の存在とは
なにものにも代えがたい 創作の泉になったようです。

ついつい長くなりました 最後まで読んでいただき ありがとうございました。

  

   

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22 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ふき)
2020-10-01 14:06:52
肉欲食欲なしの枯れすすき故
男と女の事は
わからないまま
生涯を終えそうです
「こんなこと」人生において至極めんどくさい
沢山のめんどくさき事を 目の当たりにしていますが
人間て何なんやろ 


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こんにちは....。 (kiyasume)
2020-10-01 15:10:44
私は自分に障害がある為に、、
そしてもう年齢のために、、

女の人とどうのこうのと言う事はないと、
諦めて居ますが・・・・・・。

多分に谷崎文学が色っぽいのは、、
彼の女性遍歴から来るものでしたか、、
私は文学には疎いものでして......。

お恥ずかしながら、谷崎潤一郎の
文学は何冊も読んでは居ないのですが、、
映画化されたものは見て居ます。

私が敬愛する原田芳雄さんと樋口可南子と共演の
「卍」は、昔レーザーディスクで持って居て、、
レーザーディスクは処分してしまったのですが、
CS放送で放映したものをBlu-rayに録画して持って居ます。あと「鍵」だとか、

同じく原田芳雄さんが主演した川端康成の原作を新解釈した映画、「眠れる美女」はビデオテープで持って居ますよ。ビデオデッキがまだ全部壊れて居ないものを所有して居るので、再生だけは出来ますから

しかし日本の文学は多分にエロスの香りがしますよね。特に谷崎潤一郎のものは・・・・・。

映画の方は舞台を現代に置き換えて居ますので解釈が少し現代的だとは思いましたが・・・・・。

まあ、大人の話ですね。。。。

下はいい歌ですよ。是非お暇の時にでもお聞き下さい。「北斗の拳・トキ伝」と言うアニメ映画の挿入歌ですがいい映画なので、曲も素晴らしくいい曲で歌詞もいいです。。。

https://www.youtube.com/watch?v=5Hb4kHVpsP8

また来ますね。。。。
返信する
谷崎文学 (しまそだち)
2020-10-01 16:40:20
「細雪」は、観ちゃいますね
お上品な船場言葉も 心地よい
それは松子さんから得られたものなのでしょう

恋愛小説を書ける人は 恋愛体質なんですね
竹久夢二も恋は 多かったらしいし
太宰治もややこしいことに

現代は 不倫は 許しませんからね
大也くん 失う物が 大きいようで
何故オリンピックが終わるまで 辛抱できなかったのでしょう ?
まさに 英雄色を好むってことですかね


返信する
Unknown (kaminaribiko2、)
2020-10-01 20:21:48
「不倫は文化だ」と言ったため袋叩きに遭った人がいましたが、谷崎潤一郎の生涯を見たら紛れもなく文化です。短歌でも不倫するような人がいい歌を作ったりします。しかし、される側からは絶対許せない。これは男と女の永遠のせめぎ合いですね。この谷崎潤一郎館、一度行きたいと思っています。
返信する
ふきさんへ (くりまんじゅう)
2020-10-01 20:46:16
普通の人間は歳と共に男も女も 相手を異性として見るのではなく
同性とは思わぬまでも 仲間というか 茶飲み友達みたいに見ると思いますが
谷崎の場合は じいさんになってからも若い頃のままの感性で
76歳で書いた『瘋癲老人日記』などは息子の嫁に恋するという 息子とは
松子夫人の最初の結婚時の息子で その嫁になる女性に恋をするという
ちゃんとしたモデルがおり 彼女には色んなものをプレゼントしています。

いくつになっても枯れない谷崎は だからあの作品の数々が
生まれたと思います。傍から見たら素晴らしいですが家族や身内は
どんなだったでしょうかね。
返信する
kiyasumeさまへ (くりまんじゅう)
2020-10-01 21:02:59
おひさしぶりです やっと過ごしやすい季節になりましたね。
谷崎作品は映画になったものが多く 樋口可南子さんと原田芳雄さんの『卍』は
今まで撮られた卍の映画の中でも 一番新しいものではないかな?と思います。

『鍵』もご覧になりましたか。谷崎作品の多くを私は中学時代に隠れて読みました。
どれもエロティックで こんなものを読んでいることが後ろめたく
親には知られたくないと それでもドキドキと夢中で読みました。

『北斗の拳』はアナザーストーリーで取り上げていましたね。
長く続くということは 作品が魅力があり 確かに絵が上手です。
北斗の拳は人気があるので パチンコの看板でも見かけます。
曲もとてもいいですね。

kiyasumeさま 今夜は中秋の名月です。そちらも晴れている
と思いますが外に出て月を見てください 美しいです。 
返信する
しまそだちさんへ (くりまんじゅう)
2020-10-01 21:22:01
『細雪』は何度も映画化されました。いちばん印象に残るものは
岸恵子・佐久間良子・吉永小百合・古手川祐子さんが四姉妹を演じた
市川崑監督の細雪です。もう何十年か前の作品になりました。今でも
目に焼き付いているシーンは 船場の蒔岡家の座敷いっぱいに姉妹の
着物が虫干しされる場面で 色鮮やかな数々の着物はため息が出るほど
美しかったです。

大也くんは東出くんと同じく CMも下ろされ制裁を受けています。
本業をがんばって いい記録を出すしか復活の道はないと思います がんばれ。

竹久夢二も太宰治も 谷崎潤一郎も恋多い男でした。
そうして新しい風を感じて また作品が生まれたでしょうかね。
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びこさんへ (くりまんじゅう)
2020-10-01 21:32:38
「不倫は文化だ」のあの方は感染しましたが治ったでしょうか。
短歌の世界でも 不倫する人がいい作品を残しますか。
谷崎は松子さんといっしょになってからも 20何回も引っ越しをしたそうで
新しい場所に移ると またいい作品が書けたそうです。

そんな風に男は 女性に対しても常に新しさや刺激を求めている
と言うことでしょうかね。こんなことを女性がして次々に男性遍歴をしたら
そうとう叩かれますね。あ その昔 瀬戸内寂聴さんはしました。

谷崎潤一郎記念館は芦屋に 松子と結婚後住んだ家は
倚松庵(谷崎潤一郎旧宅)として 神戸市東灘区にありどちらも
一般公開していると聞きました。私も行きたいです。
返信する
くりまんじゅうさんへ (まりも)
2020-10-01 21:42:02
TV見ましたよ!
谷崎潤一郎 こんな男性は 今ではいなでしょうね
不倫をしても こそこそ
谷崎に比べたら 小者ですね
谷崎は これをパワーに変えて作品を作る
こんな人生も その時代だから出来たのでしょうね
返信する
(;-ω-) =3 ハァ (キミコ)
2020-10-02 00:26:05
こんばんわー!

谷崎さん ようやるわー┐( -"-)┌ヤレヤレ...
の一言です
この時代は別に男性はとやかく言われる時代ではなかったですものね
おおらかというかなんというか 江戸時代以前を
そのまま引っ張ってますし^^;
今だったら文春さんが谷崎さん周辺を飛び回っていた事でしょう

そう考えたら今は男性には息苦しい時代なんでしょうね

何にせよこんなラブレターをテレビで公開されたら
書いた本人はめちゃ恥ずかしいと思いますけど|壁||д//)ゝ
なんか読むのも恥ずかしい私です(/ω\o)))=3=3=3 キャァ~!!
返信する

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