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SCAN DO SCAN ギャラリートーク(2) 柿崎熙

2007年11月03日 21時32分31秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 (ギャラリートークの続きです。司会は札幌芸術の森美術館学芸員の吉崎元章さん=以下Y=)

 Y「作品は25個。1点1点も作品だが、配置、空間全体も作品といえます。『林縁から』シリーズは1993年から始まり、ずっといろんな展開していますが、同じタイトルで続けられていますね」

 柿崎=以下K=「(今はなき)INAXギャラリーが最初でした。チェーンソーで切ったのを、棒状に立てていました。そこに至るまでは、布を使ったり石膏を使ったりいろいろしていました。『虚空蔵』という、仏教的な意識を持ったタイトルの時期もありました。以前からバードウオッチングが趣味で、これは作品には取り入れずにずっと趣味でいこうとは思っていたんですが、作品世界に入って、自然というものを意識するようになってきました。いまは、植物や動物のかたちを借りながら作っています」

 Y「真っ白ですね。以前はすごくカラフルな作品だったり、カラフルな羽が生えていたこともありました。植物の種から発想を得ているとお聞きしたことがありますが」

 K「そうですね。カエデのプロペラのような種子とか、ブドウの葉、果物のようなもの…。森を歩いている中で、いろんなことや風景に触れて、四季折々、そこから作品になっていきます。浮遊感を出そうと、合板を作って、平面から少し出てくる感じにしていましたが、だんだん木の固まりを使うようになっています。以前はマスクやお椀を伏せたような形が多かったですが、より飛ぶ感じを出そうと変えてきています。色彩は、白にすると、形が明快に見えるという効果があります」

 Y「白い壁に白い作品が展示されることで形が際だつんですね。この壁自体も作ったんですか」

 K「当初はあと3カ所窓があったんです。それだとひとつのインスタレーションにするのは難しいと思っていましたが、こうして窓をふさいでいただき、つながりが出てきて、ほんとうに美術館には感謝しています」

 Y「柿崎さんの作品は、グループ展で見ることが比較的多いのですが、今回は360度ご自分の作品ですね」

 K「そこらへんはあまり考えていませんでした。設営直後に達成感が出てきましたね。じぶんの世界を、ひとつの空間で作れて幸せだなあと。『林縁』は、森や林の外縁であり、森と人間が接するところでもあります。作品のテーマはやさしさなので、そういう雰囲気が出てくれたんじゃないかと思います」

 Y「配置にはかなり気を遣っていたようです。やさしい風に吹かれて漂っているような一つ一つの表情も魅力的です。貝殻のようでもあり、花びらのようでもあり、葉っぱにも見える」

 K「野鳥観察で訪れるたび、林はいろんな表情を見せてくれます。花が開く一瞬に立ち会えるのは、ほんとうに天から与えられた幸せな瞬間ですね。葉が、空に向かって開いていくような要素や、ダンスしながら空へ上るようにも見えることがあります。自分が行くのは、石狩の自宅近くの防風林が多いですが、(札幌市豊平区)西岡の水源地の森につながる道も散策します。沼のヒツジグサが、種をはじいて1-2昼夜、沼の上を漂って、底に沈んで発芽を待つとか、植物はいろんな戦略を持っている。そういう小さい命への共感が作品に表れるんじゃないかと思います」

 Y「阿部さんの充足感とは別の意味で、生命の喜びや緊張感が充溢している作品だと思いました」



07年10月16日(火)-12月16日(日)11:00-19:00、月曜休み
札幌宮の森美術館(中央区宮の森2の11-2-1) http://miyanomori-art.jp/

一般300円、高大生200円、中学生以下無料


第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII(07年)
北海道立体表現展’06
水脈の肖像2002
=以上画像なし


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