北海道美術ネット別館

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■New Point vol.15 (2019年1月15~20日、札幌) 1月19、20日は計7カ所(2)

2019年01月24日 23時53分23秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(承前)

 会期の最終日に見たので、すでに終わっている展覧会についての報告の記事が続きますが、ご容赦ください。

 「New Point展」は、ジャンルも所属団体も作風も世代も関係なく、知り合いが知り合いを呼んで出品者が集まり、毎年1月に開かれています。
 画商が企画しているわけでもなく、とくにステイトメントなどもなく、キュレーターもいない、いかにも北海道らしいグループ展といえるかもしれません。

 
 案内状に名前が書かれている参加作家は

會田千夏・糸井崇史・苛原 治・岩野風雅・上嶋秀俊・梅田力・大山莉奈 ・小川 豊・川村竜子・鴻上宏子・小林由紀実・駒澤千波・佐藤隆之・篠木正幸・高橋あおば・多田和史・中村修一・鳴海康弘・野村裕之・のんたまねぎ・畑江 俊明・本田 詩織・三浦恵美子・水戸麻記子・宮崎 亨・八子晋嗣・八子直子・渡部陽平・ko-aya

 おそらく過去最多だった昨年の33人から4人減って29人。
 彫刻の梅田力さんと鴻上宏子さんが登場です。

 2枚目の画像は野村裕之さん「トーテム(祈り)」。
 碁盤ぐらいありそうな台座に比べると、それほど大きな作品ではありません。
 鳥や太陽のような造形、人間やヒマワリの花のようなかたちが積み重なっています。




 篠木正幸「NEW BALLAD」。
 篠木さんは染色分野で、美工展や中島ゼミ展などいろいろな機会に発表していますが、筆者はこれまでブログに取り上げたことがあまりありません。
 作風があまりにシンプルで、バリエーションにいささか乏しいような感じもしていたのです。
 しかし、この半年ほどは、作風に変化が見られます。
 曲線で囲まれた不定形の、白く厚みのある布を5枚前後重ねたメインの部分にくわえ、今回のように、平面(絵画)と組み合わせるなど、作品世界の奥行きが豊かに深くなっていると思います。


 その右側は會田千夏「the fissure 2019.1.14」。
 淡い色を主体に、茫漠とした画面が広がっています。




 手前は佐藤隆之「オオグソクムシ」。
 大きいのが3匹、台の上にのっています。

 佐藤さんはふだん、紙とはさみで虫などを器用に作り上げます。
 なぜか「New Point」には、紙ではなく、針金を自在に折り曲げてこしらえた作品を出しています。
 今回は、白い針金なので、きれいに見えますが、実物の虫だったら気持ち悪くてかなわないような気がします(笑)。


 右後ろの壁に貼ってある2点はko-aya「AN5」。
 いずれも終戦直後を代表する小説家の坂口安吾をイメージしているそうです。



 近づいてみると、色とりどりのボタンや、動物などをかたどった小さな金属片などが、表面にびっしりと貼り付けられています。
 装飾性も極まれり、といったところでしょうか。華やかさにあふれています。

 ko-aya さんによると、ボタンなどは、家を片付ける友人などからもらうのだそうです。




 八子直子「sleep cloud」など2点。

 八子さんは、New Point の前身である「お正月展」の第2回展(1998年)に出品しており、夫の八子晋嗣さんとともに、最古参の参加者です。

 雲のような形に近づいてみると、表面が雲母のようにきらきらと光って見えます。
 以前、個展で八子さんは、日本画にあこがれているという意味のことを話していました。今回は、その流れにある作品なのかもしれません。
 ちぎった厚紙のような支持体が、重なりあっているのがわかります。




 モノトーンの絵画の小品が4点並んでいます。

 左は宮崎亨「MADE IN OCCUPIED JAPAN」「笑顔あふれる人生」

 宮崎さんの描く人物は、現実社会で苦闘する「あなた」であり「わたし」であるという気が、いつ見てもします。
 「OCCUPIED JAPAN」は「占領下日本」という意の英語で、敗戦後の米軍統治下時代に日本から輸出された商品に記されていた文言です。米国製の兵器を大量に購入し、地元の反対を押し切って米軍基地の造成工事を沖縄・辺野古で始める現在の日本を、言い当てているようなことばでもあります。

 右は三浦恵美子「クウシュウ」「サイロクウシュウノアト」。
 これまた不穏な近年の世相を反映しているような作品。

 三浦さんは苫小牧在住のはずですが、実際にサイロが空襲を受けた例があるのでしょうか。




 多田和史「ずんずんな日」。

 首の長い、タンクトップ姿の女性と猫が木彫で仕上げられています。




 上嶋秀俊「いのちのかたち」。
 不定形の支持体に描かれた平面インスタレーション。
 それぞれの支持体は、まるみを帯びていた以前にくらべ、とげとげしい形が増えてきています。


 以上、画像の有無は、作品のよしあしとは関係ないです。
 画像のない作品から。

 畑江俊明「stream I」「stream II」「stream III」
 金属棒を自ら溶接して組み立てたシンプルな作品。
 三日月のようなゆるやかな曲線と、直線とが組み合わされています。
 壁掛けタイプで、畑江さんは、毎日のように会場で配置をかえているそうです。
 画鋲に引っかけて留めているので、掛ける場所を変えるのも簡単です。

 他の作品は次のとおり。
中村修一「emerge」
のんたまねぎ「プッププー」
高橋あおば「rin」「minano」
糸井崇史「水牛」
川村竜子「non-title」
鴻上宏子「のびゆく」
八子晋嗣「SINKA」
鳴海康弘「色欲」
小川豊 「心のひだ」
大山莉奈「夜の名前」「ジュブナイル」
駒澤千波「聲」
苛原治 「ロンドンナショナルギャラリー所蔵 ロヒール ファンデル・ウェイデン作<女性の肖像>模写作品」「フラ・アンジェリコ作リナィウォーリの三翼祭壇画(部分)模写作品」
岩野風雅「踏切」
水戸麻記子「獲物A」「獲物B」
本田詩織「小さな幸せ」
梅田力 「無題」



 起源は、1997年に畑野天秋さんの呼びかけで始まった「お正月展」。
 会場は、2016年にクローズした大同ギャラリー(札幌市中央区北3西3 大同生命ビル3階)でした。
 第1回の出品者は畑野さんのほか、小石巧、伊藤ひろ子、鈴木涼子、友野直実、渡辺慶子の計5氏。
 畑野さんと小石さんが彫刻、ほかの4人は版画です。

 第2回のときは、北海道新聞の1998年1月21日夕刊文化面「BOX」欄に、次のように紹介されています。

札幌で開かれている「お正月展」は、第一回の昨年より三人多い九人のグループが、バラエティーに富んだ木彫や版画などを出品している。

 木彫は、木の幹に色を塗った畑野天秋さん、ブタなどのオブジェを作った八子晋嗣さんの作品に、どことなくユーモアが漂う。石川亨信さん、鈴木涼子さんの銅版画は抽象的で重々しい画面。友野直実さんと渡辺慶子さんの木版画も抽象で心象世界を表現している。

 八子直子さんはさまざまな形の木片を張り付けて段差を作った板に油絵の半抽象画を、桜井マチ子さんは仏字新聞に鉛筆で細密画を描いた。木彫を出品した小石巧さんは「来年はもっと仲間を増やしたい」。(以下略)


 99年の第3回は、藤本和彦、鈴木涼子、韮沢淳一、中野邦昭、木曽淑子、友野直実、渡辺慶子の各氏ら計16人が出品しています。


2019年1月15日(火)~20日(日)午前10時半~午後6時半(最終日~5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)


関連記事へのリンク
New Point vol.12 (2015)
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New Point vol.6
New Point Vol.4 (2007年)
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