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「アフリカン・マスク」を見てつらつら考えた

2006年02月24日 05時11分47秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 どうしても客足の鈍る北海道の冬は、美術館も、派手な企画展は行わず、所蔵品展を開くことが多いようです。
 札幌芸術の森美術館(略してゲーモリ)のこの冬は、所蔵品のうち、アフリカの美術品に的をしぼった展覧会をひらいています。これはこれで、割り切っているというか、わかりやすい展覧会です。

 タイトルは「アフリカン・マスク」となっていますが、仮面は半分くらいで、あとは人や鳥の彫像、布、錠前、水差しといった展示品です。
 筆者が一番気に入ったのは楽器で、木琴や太鼓などを観覧者が演奏することができます。
 ロビ族の木琴は、俗に言うヨナ抜きの音階ではなく、1オクターブに7音ありました。まあ、調律は大ざっぱでしたが。そして、左が低音、右が高音でした。
 (当たり前のことを言うなと言われそうですが、かつて筆者が国立民族学博物館で世界各国の木琴を見て回った経験では、左が高音の楽器のほうが断然多いのでした)

 あと、気になったのはアシャンティ族の母子像。満月を模しているという母の丸顔は、たしかにクレーの絵に似ています。

 でも、全体としては、すごく異世界な感じ。
 たとえば遠野で見た鹿(しし)踊りの仮面とか秋田の獅子舞とかは、いくらふだんじぶんが見ているものと違っているとはいえ、或る種の親しみを覚えるのだけれど、今回のはどれも、とてもおなじ人間が作っているとは思えないくらいだったです。

 で、ふと考えたこと。
 ここに並んでいるのは、美術品として作られたんじゃないんだよな。
 美術館でわたしたちが見る絵画などは、たいてい美術館やギャラリーやお金持ちの家などに並べられ鑑賞されることを予期して作られているのだけれど、今回の展示品はすべて、儀式などのために作られたもの。
 だから、作者名が明示された展示品はひとつもないし(制作年が記されたものも皆無)、また、マッスがどうのボリュームがどうのということを言っても、あまり意味がないような気がする。
 そして、本来あるべき密林やサバンナからすっぽりと切り離されて、日本の白い空間で仮面だけを鑑賞しても、なんかちょっと違うな、という気がするのだ。うまく言えないけど。
 まあ、美術館では美術品しか見ちゃいけないというのも窮屈な話だから、アフリカのマスクを展示するのも見るのも自由なんだけど。

 もうひとつ。
 これらアフリカの品々がピカソなどに大きなインスピレーションを与えたことはよく知られている。
 アフリカは欧州にとって大いなる外部だったわけだ。
 しかし、この地球上には、西洋に「発見」されるのを待っている美術は、もはや存在しない。
 まるっきり新しいものを一から創造するのは、容易でない。
 とすると、アジアやアフリカの「発見」でいろんな新潮流であふれかえった19、20世紀の美術(だけでなく音楽などもそうなんだけど)と違い、21世紀は、既存のものを並べ替えるだけの時代になりそうな気がする。 

1月21日-3月26日 9:45-17:00(入場は-16:30) 月曜休み
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)


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