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アートか「児童ポルノ」か 挑発的な美術展(2013年3月1日 朝日新聞)について

2013年03月03日 22時20分32秒 | つれづれ日録
 「会田誠氏の絵に反対するのは自由だが、「撤去せよ」という要求は必ず自分たちに返ってくるだろう。」「会田誠氏騒動の続報」の続き。この問題を、朝日新聞が「ニュースQ3」という欄で取り上げた。文化面ではなく、社会面の3ページ目である。

 この記事についても、ブログやツイッターなどでいろいろな感想が書き込まれているようだ。
 とくに、筆者の目についたのは、キュレーターが出てこないけれどなんで隠れているんだ-という批判である。

 とりあえず、このエントリで筆者は、二つのことを書いておきたい。

 いずれも、朝日新聞の記事に登場した、市民団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」の世話人で、ソーシャルワーカーの宮本節子さんの発言についてである。

 まず、「犬」の絵に関して、彼女は「これはあからさまな児童ポルノです」という。

 いったい何を根拠にこんなことを言っているのか、まったく理解に苦しむ。

 モデルが架空かどうかについて、ではない。
(もちろん、実在の女性でないというだけで、すでに児童ポルノとは言い難いが)

 彼女が「児童である」という証拠がどこにもないからだ。
 証拠どころか、児童であることを暗示させる要素が、皆無である。

 この絵のどこかに、幼稚園や高校の制服など、年齢を指し示すなにかが描かれていれば「児童ポルノ」だという批判が成り立つ余地もあるだろう。
 しかし、胸のふくらみが小さくて、髪をしばっているという程度で「間違いなく18歳未満だ」と決めつけられても、困るとしか言いようがない。

 もう一点。
 宮本さんは次のように話している。

 宮本さんは「作家が個人的にどんな絵を描くのも自由」としたうえで、「でも東京の著名な美術館で、『犬』のような作品が堂々と『芸術』として展示されている日本の感覚って、ちょっと変でしょ、と訴えたい」という。


 ちょっと待った~!
 
 「堂々と」、じゃないでしょ。

 この絵をはじめとするグロテスクな作品やヌードなどがはっきりゾーン分けされて陳列されていることについては、今さら言うまでもなく、非常に重要なポイントである。
 前のエントリの繰り返しになるが、不特定多数の目に触れるかどうかというのは大切なことだし、もしこの『犬』が駅や街頭にあったら、撤去すべきだという声が出てくるのはむしろ当然だと筆者だって思う。
 朝日の記者も、そこを聞かなかったのかな?

 そして「東京の著名な美術館」という部分には、もっとひっかかりを覚えた。

 大阪や横浜だったら、いいのか。

 田舎なら、無名の美術館なら、かまわないのか。

 いや、もっというと、たとえばワタリウム美術館とか原美術館だったら、宮本さんは許容したのか。

 絵が展示されているのが「不特定多数が見る場所かどうか」というのは、ある程度きっちりした線引きが可能だし、議論の出発点として意味がある。

 しかし、「著名な美術館」というのは、単に、宮本さんが著名だと思う美術館 という基準に過ぎないだろう。
 主観的すぎて、基準として、なんの役にも立たないし、議論としてくだらないとしか思えない。
(ここから、美術という制度、あるいは美術館という制度のもつ権威主義について議論を発展させることは可能だが、今回はそこまで話を広げるのはやめておこう)

 ここで、まとめ。

 世の中にはいろんな趣味の人がいる。

 自分と趣味の合わない絵が展示されているからといって、撤去を求めるというのは、以前も書いたけれど、行き過ぎである。

 宮本さんの理屈は、一見正反対にみえるけれど、たとえば、同性愛をたたえる作品への攻撃にも、おなじように使える。このことにおそらく、彼女は、気づいていない。



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