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■名画の小部屋vol.105 志摩利希ーセンチメンタルな日々 (2021年3月1~31日、札幌)

2021年03月31日 08時37分23秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 志摩利希さんの版画を見ると「北方的」という概念が思い浮かびます。
「北方的な抒情」あるいは「北の郷愁」などといえば、なんだか批評できたようなというか、作品の秘密をうまく言い当てたような気がしてくるのですが、さてそれは具体的にどういうことなのかというと、はたと考え込んでしまいます。

 会場のカフェ北都館ギャラリーのサイトには次のようにありました。

「感傷的なことは少々恥ずかしいことではあると思ってはいるが、自分がとてもちっぽけなものだと感じる時にそれはやってきて、無力感を希望に変える力にもなる。泣くとすっきりするというのと同じである。齢60を過ぎて迷う中で湧いてくる記憶の断片が絵になって行く時センチメンタルなのも悪くないかと思う。そんな独り言のような作品が見た人の心の中に何かを呼び覚ますことができたらいいなと思っている。」と「センチメンタルな日々」と題して17点が壁を飾ります、あと10点あまりも順次も展示致します。


 たとえば、冒頭画像の左側は「頼りない冬」という作品です。
 画面中ほどから奥にかけては、懐かしいかたちの木のそりに乗った子ども、煙突から煙を吐く家など、昔の北海道を追想させる事物が点在しています。
 ただ、古い雪国の光景が描かれているから北方的だというのは、いささか安直なまとめです。
 ベンチにすわるダッフルコートの人物や、石で丸く囲まれた手前の庭などが不思議な感覚を漂わせて、なぜか郷愁に誘われるのではないでしょうか。

 冒頭画像の右側「犬と歩けば」や、2枚目の左「遠い家路」には、帽子をかぶった後ろ姿の人物が手前に描かれています。
 斜めに傾いた人物を見て、筆者はマックス・クリンガー「手袋」を想起しましたが、クリンガーが白昼夢のような乾いた画面をつくっているのに対し、志摩さんの絵は、夜明けに見た夢のように、あるいは遠い日の記憶のように、こちらの心を揺らしてきます。
「遠い家路」で、視線を画面奥へと導く電柱の列や、三角屋根の家は、あまり現実的なものとも思えないのですが、にもかかわらず、確かに幼い頃にこの目で見た風景のような気もしてくるのです。


 志摩さんは1954年、利尻島生まれ。
 多摩美大で油絵を学んで卒業。関東地方を拠点に活動した後、数年前に札幌に転居し、活発に制作・発表を行っています。

 展示作は次の通りでした。
春の雪/遠い家路/明星―Lucifer/trauma sky/北辺夏送曲/北辺母子/溺れた夜/moonlight goodbye/猫と住む日々/秋の夕暮れ/秋のソナタ/野の花火/猫との日々/犬のいる部屋/待つ人/犬と歩けば/頼りない冬


2021年3月1日(月)~31日(水)午前10時~午後10時(土日月~7時、最終日展示~5時)、火曜休み
カフェ北都館ギャラリー(札幌市西区琴似1の3)


過去の関連記事へのリンク
TOSHIKI SHIMA Spring in confusion dry-point works (2020)
■つながろう 2019 終わりと始まり
志摩利希作品展 Twilight Nirvana (2018)
つながろう2018 TIME AXIS 時間軸



カフェ北都館ギャラリーへの道順 (アクセス)

・地下鉄東西線の琴似駅から約270メートル、徒歩4分
・JR琴似駅から約740メートル、徒歩10分

・ジェイアール北海道バス「山の手一条通」から約920メートル、徒歩12分(快速、都市間高速バスは通過)
・ジェイアール北海道バス、中央バス「西区役所前」から約960メートル、徒歩13分


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