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ダニ・カラヴァンさん(イスラエルの彫刻家)死去

2021年06月02日 12時27分52秒 | 新聞などのニュースから
 産経新聞のウェブサイトから( https://www.sankei.com/article/20210530-6TLYMZYT5ZPE7HHP76HQSZVK4I/ )。

 自然や都市など環境と一体となった壮大な作品で知られ、第10回高松宮殿下記念世界文化賞(彫刻部門)の受賞者でもあるイスラエルの環境彫刻家、ダニ・カラヴァン氏が29日、同国テルアビブで死去した。地元メディアが伝えた。90歳。

 イスラエル建国前の1930年、テルアビブで生まれ、著名な造園家だった父親の影響を受けた。フィレンツェ(伊)やパリ(仏)で絵画とフレスコ画を学び、米ニューヨークで舞踏家、マーサ・グレアムらの舞台美術を手がけた。

 その後、彫刻家のイサム・ノグチやブランクーシらの影響を受け、環境彫刻へと表現を展開していった。それらは砂漠や公園といった環境と一体になった大規模なもので、抽象的なかたちが特徴。「私の作品は他の場所に移せば死んでしまう。置かれた場所で息づくのだ」と生前語っていたように、その場所から着想して制作され、陽光や木や水、風も含めて、訪れる人が全身と五感で感じられるものを目指していた。

 カラヴァンの国際的評価を不動のものにしたのは、テルアビブ近郊の砂漠の高台にある「ネゲヴ記念碑」(63~68年)。自身の経験から平和への思いは強く、スペイン・ポルトボウの岸壁に向かって鋼製の箱を設置した「パッサージュ ヴァルター・ベンヤミンへのオマージュ」(90~94年)では、ナチスの手から逃れてこの地で死んだ哲学者を悼んだ。他の代表作に、パリ近郊の都市、セルジ=ポントワーズを貫く全長3キロ以上、制作約40年にわたる「大都市軸」などがある。

 日本でも、札幌芸術の森美術館(札幌市)や室生山上公園芸術の森(奈良県宇陀市)、霧島アートの森(鹿児島県湧水町)などに周囲の自然を取り込んだ作品がある。


 当地に配達される新聞では6月1日の朝日、読売、2日付の毎日が短い記事を載せていました。
 それらに比べ、産経新聞ウェブサイトの記事は詳しいです。

 ただ、重箱の隅をつつけば、「隠された庭への道」が常設展示されているのは、札幌芸術の森美術館ではなく、札幌芸術の森野外美術館です。

 1995年には芸術の森美術館で「時間・空間・思索 彫刻家ダニ・カラヴァン」という回個展も開かれています。「隠された庭への道」は、その後に整備されました。

 2016年2月1日の北海道新聞夕刊「私の中の歴史」では、同作品について酒井忠康さんが
「噴水を使った「七つの泉」や直径7メートルの円すいなど、7をキーワードに北海道の大地に刻んだ立体の物語です。日の光、水の流れ、雪、風、鳥のさえずりを感じる仕組みがあり、自然との対話に心が満たされます。」
と語っています。
 酒井さんは後志管内余市町生まれ。カマキンを経て、世田谷美術館の館長時代にはダニ・カラヴァン展(2008)を開くなど、この彫刻家とは盟友ともいうべき縁の深いキュレーターです。表紙の装丁にダニ・カラヴァンの作品の写真をあしらった評論集もあるのですが、例によって札幌の自宅の書架に置いてあるので、ここでは残念ながら参照することはできません。

 ただ、この「隠された庭への道」は、世界的な彫刻家による大作が札幌にあるという誇らしい気持ちと同時に、なにか心が洗われるような不思議な気持ちになる作品です。
 いつか、天気の良い平日にゆっくりと訪れ、経巡ってみたいものです。

 なお、2014年に、札幌の美術家澁谷俊彦さんが、この「隠された庭への道」の一部に自作を浮かべるインスタレーションを発表したことがあります。
 いわば「Snow Pallet」シリーズの、水上バージョンでした。

 ご冥福をお祈りします。


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