毎年開かれている写真のグループ展。
わりと「街撮り系」が多いが、バラエティーに富んだ内容だ。
会場に神成邦夫さんがいらした。
近年取り組んでいる「surface(サーフェス)」シリーズは、いわゆる絶景でも名所でもない、どこにでもある風景にレンズを向けたもの。「新しい美を提案する」というよりもむしろ「凡庸な北海道のリアル」をそのまま提示したものという感じ。
ステイトメントがあったので、引いておこう。
ユニークな問題意識であり、方法論だと思う。
今回は「北海道オホーツク」と題した8点。
これまでは道内各地の風景を、地域を定めずに並べていたが、今年は地域をある程度しぼって展示するそうだ。
もっとも、神成さんのことだから、斜里岳もシバザクラもアッケシソウ(サンゴソウ)も登場しない。
オホーツク海も漁港の背後にちらっと見えるだけだ。
筆者は、ロードサイドショップのある風景に見覚えがあったので「これ、紋別ですよね」と尋ねたら、当たりだった。ホーマックの横が原野になっているのだ。
盛り土があり、奥に建売住宅の並ぶ一角は、北見だという。
茫漠とした空き地は、湧別で撮った写真だとのこと。
いかにも「北海道然」とした写真では決してない。
にもかかわらず、橋の欄干のわきに赤と白の柱が立っているなど、やはりこれは北海道の風景だなあと思う(この柱がないと、積雪期はどこまでが道路・橋かわからないのだ)。
ほかの人についても、一部ふれておこう。
SASAHARU さんの「それぞれの背中に」。
モノクロ5点で、街なかの男性の背中を撮っている。
三叉路とおぼしき夜の街路で、自転車に乗った人のTシャツが、逆光で白い輪郭を浮きだたせているのがおもしろい。
荷物を押す人、中島公園の池にたたずむ人、いずれも哀愁がにじむ。
まるやまきえさん「憶い出」。
カラー10枚で、牧場のサイロが解体されていく日々を淡々と撮っている。人物は登場せず、農機具や風景などに語らせる手法。色調が独特。
nakkyさん「さっぽろ劇場写真帖2015-2017」。
大小およそ190枚のスナップ(一部モノクロ)をすき間なく壁一面に展示したもの。
琴似の十字街で交通量調査?のために坐っている人、事故のせいかフロントが引っ込んでいるトヨタクラウン、道行く女性を映しているマネキンのサングラス、つぶれた空き缶、裏口っぽい扉を開けて出てきた女性、「サッポロスマイル」の大きな文字の前にあるベンチで居眠りする男性とそれを横で見ている女性など、とにかくいろいろなイメージがあふれて、おもしろい。
蛇足かもしれないが、会場の入り口に「順路」を示す大きな矢印が貼られているにもかかわらず、その反対側から回ろうとする人が後を絶たない。
その程度の注意力で壁を見ている人が、はたして写真を前にしてそこに何を見ることができるのか。
なんだかなあと思ってしまった。
2017年11月20日(火)~25日(日)午前10時~午後7時
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
過去の「Be Phat」写真展へのリンク
2015年
2006年
(いずれも画像なし)
神成さんの関連記事へのリンク
■第4回丸島均(栄通記)企画 群青―ぐんせい― (2017年1月)
■神成邦夫写真展 HORIZON ―北海道―内界と外界の境界線 (2016)
■「Photo Session 1006」My White Season (2010)
■PHOTOGRAPH EXHIBITION MOVE 3 part1 (2010)
わりと「街撮り系」が多いが、バラエティーに富んだ内容だ。
会場に神成邦夫さんがいらした。
近年取り組んでいる「surface(サーフェス)」シリーズは、いわゆる絶景でも名所でもない、どこにでもある風景にレンズを向けたもの。「新しい美を提案する」というよりもむしろ「凡庸な北海道のリアル」をそのまま提示したものという感じ。
ステイトメントがあったので、引いておこう。
私自身が生活している北海道という地域の中で、ある時立ち止まったその時々の偶然性を重視して「表層的」に撮影した風景です。
私個人の観念的な思考は出来るかぎり「無」にして風景と対峙しようと考えています。
その撮影した表面的な定着物から現れる客観的要素にどういう意味、情報が隠れているのかは撮影した私自身も到底理解できません。
ただ、「偶然」立ち止まった地点でアンチポエジー的な表層風景をひたすら収集し、情緒や意図を廃して撮影したとしても自分自身が気付かない主観的要素が入り込んでくる矛盾は重々理解はしています。その潜在意識から現れる顕在的な思考の存在を受け入れ、不完全ながらも「機械的」で「無機的」な撮影に徹しようと考えています。
ユニークな問題意識であり、方法論だと思う。
今回は「北海道オホーツク」と題した8点。
これまでは道内各地の風景を、地域を定めずに並べていたが、今年は地域をある程度しぼって展示するそうだ。
もっとも、神成さんのことだから、斜里岳もシバザクラもアッケシソウ(サンゴソウ)も登場しない。
オホーツク海も漁港の背後にちらっと見えるだけだ。
筆者は、ロードサイドショップのある風景に見覚えがあったので「これ、紋別ですよね」と尋ねたら、当たりだった。ホーマックの横が原野になっているのだ。
盛り土があり、奥に建売住宅の並ぶ一角は、北見だという。
茫漠とした空き地は、湧別で撮った写真だとのこと。
いかにも「北海道然」とした写真では決してない。
にもかかわらず、橋の欄干のわきに赤と白の柱が立っているなど、やはりこれは北海道の風景だなあと思う(この柱がないと、積雪期はどこまでが道路・橋かわからないのだ)。
ほかの人についても、一部ふれておこう。
SASAHARU さんの「それぞれの背中に」。
モノクロ5点で、街なかの男性の背中を撮っている。
三叉路とおぼしき夜の街路で、自転車に乗った人のTシャツが、逆光で白い輪郭を浮きだたせているのがおもしろい。
荷物を押す人、中島公園の池にたたずむ人、いずれも哀愁がにじむ。
まるやまきえさん「憶い出」。
カラー10枚で、牧場のサイロが解体されていく日々を淡々と撮っている。人物は登場せず、農機具や風景などに語らせる手法。色調が独特。
nakkyさん「さっぽろ劇場写真帖2015-2017」。
大小およそ190枚のスナップ(一部モノクロ)をすき間なく壁一面に展示したもの。
琴似の十字街で交通量調査?のために坐っている人、事故のせいかフロントが引っ込んでいるトヨタクラウン、道行く女性を映しているマネキンのサングラス、つぶれた空き缶、裏口っぽい扉を開けて出てきた女性、「サッポロスマイル」の大きな文字の前にあるベンチで居眠りする男性とそれを横で見ている女性など、とにかくいろいろなイメージがあふれて、おもしろい。
蛇足かもしれないが、会場の入り口に「順路」を示す大きな矢印が貼られているにもかかわらず、その反対側から回ろうとする人が後を絶たない。
その程度の注意力で壁を見ている人が、はたして写真を前にしてそこに何を見ることができるのか。
なんだかなあと思ってしまった。
2017年11月20日(火)~25日(日)午前10時~午後7時
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
過去の「Be Phat」写真展へのリンク
2015年
2006年
(いずれも画像なし)
神成さんの関連記事へのリンク
■第4回丸島均(栄通記)企画 群青―ぐんせい― (2017年1月)
■神成邦夫写真展 HORIZON ―北海道―内界と外界の境界線 (2016)
■「Photo Session 1006」My White Season (2010)
■PHOTOGRAPH EXHIBITION MOVE 3 part1 (2010)