(承前)
福井爽人さんは院展同人で、群青や緑を多用して郷愁と追懐の念をたたえた日本画を描く大ベテランです。
以前、札幌芸術の森美術館でも個展を開いていましたが、今回は福井さん自選の、2010年以降の代表作と、国内外の旅で描いたパステル・素描という構成なので、そのときと出品作の重複がまったくありません。見に行って良かったと心から思います。
福井さんの絵は「甘美」という形容詞がぴったりです。
しかしそれは、通俗的な叙情ではないし、甘ったるい感傷とも異なっています。そして、その異なり度合いは、年を追うごとに深まっているようです。
遊園地を描いた作品には、金管楽器を膝の上に置いてこちらに背中を向けた少女がすわり、遠くに観覧車が見えます。深い群青の空には飛行機が飛んでいます。
こうして要素を並べても、とりたててなつかしいものとはいえなさそうですが、実際に画面の前に立つと、なんともいえない気持ちがこみ上げてきます。
遠いものに対するあこがれ、あるいは、はるかな人生行路に寄せる断念、あるいはささやかな喜び。
言葉にすると陳腐ですが、そういう普遍的で、しかもついに言葉で割り切れない感情が、画面にしずかにたたえられているようです。
いわば、福井さんは絵で、哲学を語っているのではないでしょうか。
福井さんは1939年旭川生まれ。
2歳のとき小樽市潮見台に移住したので、事実上、小樽がふるさとといってよいでしょう。
小樽潮陵高から札幌北高に転入し、卒業後上京して日大芸術学部に進学。平山郁夫に出会ったことがきっかけで、東京藝大であらためて日本画を専攻しました。
「青の刻」など、幼い頃の小樽の記憶がこだましている絵もあります。
一方で、今回は、インドに材を得た「門」などの絵も多いです。
2023年4月29日(土)〜7月23日(日)午前9時30分~午後5時 (入館30分前まで )、毎週月曜日休み(7月17日を除く)、5月2、9、10、11日、7月18、19日も休み
市立小樽美術館(色内1)
過去の関連記事へのリンク
札幌北高校の中にある絵画や書道 (2017)
■第71回春の院展 (2016)
【告知】ヴォヤージュ 風景の旅 (2012)
「福井爽人の絵 美しくて少し悲しい」(土岐美由紀著) (2010)
■6月3日の日記(2)・紫の雨-福井爽人展オープニング (2006) ■6月3日の日記(3)・紫の雨-福井爽人展つづき
福井爽人さんは院展同人で、群青や緑を多用して郷愁と追懐の念をたたえた日本画を描く大ベテランです。
以前、札幌芸術の森美術館でも個展を開いていましたが、今回は福井さん自選の、2010年以降の代表作と、国内外の旅で描いたパステル・素描という構成なので、そのときと出品作の重複がまったくありません。見に行って良かったと心から思います。
福井さんの絵は「甘美」という形容詞がぴったりです。
しかしそれは、通俗的な叙情ではないし、甘ったるい感傷とも異なっています。そして、その異なり度合いは、年を追うごとに深まっているようです。
遊園地を描いた作品には、金管楽器を膝の上に置いてこちらに背中を向けた少女がすわり、遠くに観覧車が見えます。深い群青の空には飛行機が飛んでいます。
こうして要素を並べても、とりたててなつかしいものとはいえなさそうですが、実際に画面の前に立つと、なんともいえない気持ちがこみ上げてきます。
遠いものに対するあこがれ、あるいは、はるかな人生行路に寄せる断念、あるいはささやかな喜び。
言葉にすると陳腐ですが、そういう普遍的で、しかもついに言葉で割り切れない感情が、画面にしずかにたたえられているようです。
いわば、福井さんは絵で、哲学を語っているのではないでしょうか。
福井さんは1939年旭川生まれ。
2歳のとき小樽市潮見台に移住したので、事実上、小樽がふるさとといってよいでしょう。
小樽潮陵高から札幌北高に転入し、卒業後上京して日大芸術学部に進学。平山郁夫に出会ったことがきっかけで、東京藝大であらためて日本画を専攻しました。
「青の刻」など、幼い頃の小樽の記憶がこだましている絵もあります。
一方で、今回は、インドに材を得た「門」などの絵も多いです。
2023年4月29日(土)〜7月23日(日)午前9時30分~午後5時 (入館30分前まで )、毎週月曜日休み(7月17日を除く)、5月2、9、10、11日、7月18、19日も休み
市立小樽美術館(色内1)
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■6月3日の日記(2)・紫の雨-福井爽人展オープニング (2006) ■6月3日の日記(3)・紫の雨-福井爽人展つづき
(この項続く)