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■松井淳紀作品展 向景 (2021年4月2~17日、北見)―相内・北見への短い旅(9)

2021年04月13日 17時34分54秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(承前)

 順番が前後しますが、展覧会の会期中に紹介します。

 松井淳紀さんはオホーツク管内置戸町在住。
 置戸町は北見市中心部から車で45分ほどのところにある農林業のマチですが、北見盆地の中なので、日常的に行き来があります(上川盆地の中にある東川や東神楽が旭川圏なのと似ています)。

 発表のたびにタイプの異なる作品を手がけているような気がしますが、今回は、まわりの畑や平原、丘などをとらえた風景写真と、にじみを生かした抽象的な水彩画の小品を、計50点ほど、店の出入り口附近に並べていました。
 個々に題はついていません。
 これらの美しい写真は、すべて横位置。地平線の高さは、まちまちです。
 置戸あたりではごくふつうの風景といえそうです。都会の人には驚かれそうですが。

 ただ、仔細に見ると、周辺減光がひどいように見えます。
 松井さん、いったい何十年前の安物レンズを使っているんだろう、と思っていたら、実はちゃんとした一眼レフカメラを使い、わざわざ画質を落としてプリントしているとのこと。
 すみずみまで美しいプリントではなく、昔の記憶のようなテイストが感じられるのは、そのせいなのでしょう。


 一方、水彩画のほうは、寒色は寒色、暖色は暖色でまとめています。
 同時に展示されている写真のような、広々とした丘や農地の風景のようでもあり、抽象画のようでもあります。

 さしさわりのある言い方になるかもしれませんが、もしこれらの水彩画だけが展示されていたら、あるいは、写真だけが陳列されていたら、あまり何も感じることのないまま会場を立ち去ったかもしれません。
 しかし、この2種の表現が同時に並ぶことで、写真は水彩画に影響されて抽象的なもののように見えてくるし、水彩画は写真に近づいて風景のように感じられてきます。
 写真と水彩とが相互に響き合い、広がりのある展示になっています。

 もっとも松井さんは
「コンセプトはないです。アートにコンセプトなんて必要ない」
と言って、筆者をけむに巻くのですが。

 写真に撮ってくるのを忘れましたが、会場にあった段ボールのロボットも松井さんが作ったものだそうです。


 松井さんの作品とそれほど関係ないですが、置戸町は、話題の豊富なマチです。
 重い丸太を引っ張って競走する「人間ばん馬」、木の自然な風合いを生かした器「オケクラフト」とおいしい学校給食で知られ、かつては図書館の貸し出し数が人口比で日本一になったこともありますし、さらに旧駅舎を利用した絵画館もあり、まだ日本に「アーティスト・イン・レジデンス」という言葉がほとんどない1990年代に米国人彫刻家の一家に滞在してもらう先駆的な試みを行っていたなど、とても人口3千人とは思えません。


2021年4月2日(金)~17日(土)午前9時半~午後4時半、日・月曜休み
生産物直売店じねん(北見市朝日町45)

FAR EAST 2016 コンテンポラリーアート

防風林アートプロジェクト (2014)

松井淳紀個展「精神の透視化」 (2012)
置戸コンテンポラリーアート (2012)



※南大通と青葉通の交叉点

・JR北見駅を降りて、横断跨線橋「みんとろーど」を渡ったところから、約1.4キロ、徒歩19分

・JR北見駅の向かい側にある北海道北見バスの停留所「北見駅」から「1 三輪小泉線」に乗り「大通東9丁目」で降車、約710メートル、徒歩9分。日中は完全15分間隔


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