ギャラリーの話題では最近「閉まる」ということばかり書いているような気がしますが、久しぶりに景気の良い話題です。
札幌市西区の「ギャラリー北のモンパルナス」が、1年余りにおよぶたて替え工事・冬期休暇を終えて、3月から新装オープンしているのです。
3月と4月は、再オープンを記念した「よみがえる池袋モンパルナス展」を開催中。会期は前後半に分かれ、作品の入れ替えがあるようです。
以前の引き戸と異なり、ふつうの家のようで、はじめての方はちょっと入りづらいかもしれません。
しかし、チャイムなどを鳴らす必要はありません。ごめんください~と言いながらドアを開けると、オーナーの清水さんが出迎えてくれることでしょう。
これまでは室内が、左側の小部屋と右側のかぎ型の部屋とに分かれていましたが、新装にともない、動線がわかりやすくなりました。
ただ、大きなインスタレーションを展開するようなホワイトキューブではなく、従来型の絵画を並べて展示するのに向いていそうなつくりです。
ところで「池袋モンパルナス」は、このギャラリーが開かれる機縁となった、美術史上の事項であるので、あらためて説明しておきましょう。
戦前、池袋駅はいまとくらべてターミナルとしてはいささかのどかな郊外でしたが、その西口に、アトリエを広くとった長屋がいくつも立ち並び、裕福でない画学生や駆け出しの美術家たちが大勢住んでいたそうです。
その近辺は、「アトリエ村」とも、あるいは、やはり画家たちが多く住んでいたパリのモンパルナスになぞらえて「池袋モンパルナス」と呼ばれていました。
名付け親は、旭川ゆかりの詩人で、美術評論にも健筆をふるった小熊秀雄(1901~40年)だといわれています。
アトリエは戦後も残っていましたが、清水さんによると、かつてのまま現存している建物は1軒のみということです。
なお、この話題については、宇佐美承著『池袋モンパルナス』(集英社文庫)が、参考になります。読み物としても、非常におもしろく、美術と時代のかかわりなどについて考えさせられるので、一読をおすすめします。
池袋駅西口の「池袋モンパルナス」かいわいには戦後の一時期、全道展会員などとして活躍した画家の八木保次・伸子夫妻がアトリエを構えていました。
画像の左側は伸子さんの「赤い花」。
八木伸子さんは晩年、白を基調とした風景や静物画が多く、この作品はむしろ保次さんの抽象的な風景画を想起させます。
そのとなりは伸子さんの色紙「こいのぼり」。
左から3点目は保次さんの「作品」。
右側の壁には、プロレタリア画家として名高い大月源二の「大壺」。
次のような画賛が書かれています。
左は松島正幸「川沿いの家」。
松島さんらしい、ねっとりとして、大まかだけど確かな筆遣い。
右は菊地精二「ばら」。
菊地さんは、新道展会員だった菊地又男さんのお兄さんで、自由美術協会で活躍しました。まあ、これは、売り絵でしょう。
このほか、目を引いたのが、東宝で映画美術の第一人者だった久保一雄の「3・15」。
小林多喜二も小説の題材にした1928年3月15日の共産党一斉弾圧。そのため逮捕され、非転向を貫いて奈良の刑務所に入れられた久保が、入所者の運動時間のようすを、出獄してすぐに記憶をもとに描いた一枚。
この作品については「四年目の池袋モンパルナス展 上期(2014)」の項で紹介しているので、そちらもご覧ください。
また福沢一郎、藤田嗣治、熊谷守一、吉井忠、海老原喜之助、一木万寿三、佐伯米子(佐伯祐三の妻)、西村喜久子、丸木位里、丸木俊、前川千帆(木版画)らの絵も展示されています。
三岸好太郎はリトグラフ、小熊秀雄の素描2点は複製です。
小熊は文学者ですから、絵は余技なんでしょうが、なかなかうまいです。
新装オープン記念企画展 よみがえる池袋モンパルナス展
=上期=2018年3月1日~31日(土)/下期=4月3日(火)~28日(土)
午前11時~午後6時、日月祝日休み
ギャラリー北のモンパルナス(札幌市西区二十四軒4の3)
■ギャラリー北のモンパルナスが1年間休業し改築
・地下鉄東西線「琴似駅」5番出口から約370メートル、徒歩5分
・同「二十四軒駅」2番出口から約830メートル、徒歩11分
・JR琴似駅から約870メートル、徒歩11分
・ジェイアール北海道バス「山の手1条通」から約780メートル、徒歩10分
(快速、都市間高速バスは通過)
・中央バス、ジェイアール北海道バス「西区役所前」から約1.09キロ、徒歩14分
(快速、都市間高速バスも止まります)
※カフェ北都館ギャラリーから徒歩2分ほどです
札幌市西区の「ギャラリー北のモンパルナス」が、1年余りにおよぶたて替え工事・冬期休暇を終えて、3月から新装オープンしているのです。
3月と4月は、再オープンを記念した「よみがえる池袋モンパルナス展」を開催中。会期は前後半に分かれ、作品の入れ替えがあるようです。
以前の引き戸と異なり、ふつうの家のようで、はじめての方はちょっと入りづらいかもしれません。
しかし、チャイムなどを鳴らす必要はありません。ごめんください~と言いながらドアを開けると、オーナーの清水さんが出迎えてくれることでしょう。
これまでは室内が、左側の小部屋と右側のかぎ型の部屋とに分かれていましたが、新装にともない、動線がわかりやすくなりました。
ただ、大きなインスタレーションを展開するようなホワイトキューブではなく、従来型の絵画を並べて展示するのに向いていそうなつくりです。
ところで「池袋モンパルナス」は、このギャラリーが開かれる機縁となった、美術史上の事項であるので、あらためて説明しておきましょう。
戦前、池袋駅はいまとくらべてターミナルとしてはいささかのどかな郊外でしたが、その西口に、アトリエを広くとった長屋がいくつも立ち並び、裕福でない画学生や駆け出しの美術家たちが大勢住んでいたそうです。
その近辺は、「アトリエ村」とも、あるいは、やはり画家たちが多く住んでいたパリのモンパルナスになぞらえて「池袋モンパルナス」と呼ばれていました。
名付け親は、旭川ゆかりの詩人で、美術評論にも健筆をふるった小熊秀雄(1901~40年)だといわれています。
アトリエは戦後も残っていましたが、清水さんによると、かつてのまま現存している建物は1軒のみということです。
なお、この話題については、宇佐美承著『池袋モンパルナス』(集英社文庫)が、参考になります。読み物としても、非常におもしろく、美術と時代のかかわりなどについて考えさせられるので、一読をおすすめします。
池袋駅西口の「池袋モンパルナス」かいわいには戦後の一時期、全道展会員などとして活躍した画家の八木保次・伸子夫妻がアトリエを構えていました。
画像の左側は伸子さんの「赤い花」。
八木伸子さんは晩年、白を基調とした風景や静物画が多く、この作品はむしろ保次さんの抽象的な風景画を想起させます。
そのとなりは伸子さんの色紙「こいのぼり」。
左から3点目は保次さんの「作品」。
右側の壁には、プロレタリア画家として名高い大月源二の「大壺」。
次のような画賛が書かれています。
寒に大壺たたけバ
大壺に喜発す
左は松島正幸「川沿いの家」。
松島さんらしい、ねっとりとして、大まかだけど確かな筆遣い。
右は菊地精二「ばら」。
菊地さんは、新道展会員だった菊地又男さんのお兄さんで、自由美術協会で活躍しました。まあ、これは、売り絵でしょう。
このほか、目を引いたのが、東宝で映画美術の第一人者だった久保一雄の「3・15」。
小林多喜二も小説の題材にした1928年3月15日の共産党一斉弾圧。そのため逮捕され、非転向を貫いて奈良の刑務所に入れられた久保が、入所者の運動時間のようすを、出獄してすぐに記憶をもとに描いた一枚。
この作品については「四年目の池袋モンパルナス展 上期(2014)」の項で紹介しているので、そちらもご覧ください。
また福沢一郎、藤田嗣治、熊谷守一、吉井忠、海老原喜之助、一木万寿三、佐伯米子(佐伯祐三の妻)、西村喜久子、丸木位里、丸木俊、前川千帆(木版画)らの絵も展示されています。
三岸好太郎はリトグラフ、小熊秀雄の素描2点は複製です。
小熊は文学者ですから、絵は余技なんでしょうが、なかなかうまいです。
新装オープン記念企画展 よみがえる池袋モンパルナス展
=上期=2018年3月1日~31日(土)/下期=4月3日(火)~28日(土)
午前11時~午後6時、日月祝日休み
ギャラリー北のモンパルナス(札幌市西区二十四軒4の3)
■ギャラリー北のモンパルナスが1年間休業し改築
・地下鉄東西線「琴似駅」5番出口から約370メートル、徒歩5分
・同「二十四軒駅」2番出口から約830メートル、徒歩11分
・JR琴似駅から約870メートル、徒歩11分
・ジェイアール北海道バス「山の手1条通」から約780メートル、徒歩10分
(快速、都市間高速バスは通過)
・中央バス、ジェイアール北海道バス「西区役所前」から約1.09キロ、徒歩14分
(快速、都市間高速バスも止まります)
※カフェ北都館ギャラリーから徒歩2分ほどです