(文中敬称略)
「どんぐり会」の第1回は1915年(大正4年)に開かれた。
道南の赤光社や、道展などに比べても古く、これよりも歴史をさかのぼれる道内の美術団体としては、北大の黒百合会ぐらいしかないと思われる。
旧制北海中学が、戦後の学制改革で北海高校となり、さらに近年共学となった1世紀近い歩みのなかで、「どんぐり会」は、学生美術全道展で多くの受賞者を輩出し、その後画家として活躍している人も多い。
今回は100回記念ということで、OBも多数出品したため、高校の美術部展とは思えないほどの豪華な顔ぶれとなった。
スカイホールを全面使い、入り口から左側には現役高校生の作品、右にはOBの作が並ぶ。
中でも目立っているのが、北海道を代表する彫刻家、本郷新(1905~80、中学19期)による南部忠平の胸像。
ふだんは北海高校の玄関に設置されているらしい。
南部忠平は、いうまでもなく、戦前のロサンゼルス・オリンピック三段跳び競技で金メダルに輝き、世界記録の保持者でもあった、陸上の名選手。
その手前には、全道展で活躍する韮沢淳一(高校20期)の抽象彫刻。
さらに、彫刻家で、挿し絵画家としても大活躍した梁川剛一(中17期)、自由美術で活躍した菊地精二(中21期)、夕張ゆかりの風刺画家森熊猛(中23期)、戦後の道内抽象画をリードし「反骨の画家」といわれた菊地又男(中30期)、日展会員で、羊ケ丘にあるクラーク像の作者として知られる坂坦道(中33期)、全道展をリードし、「どんぐり会」顧問としても四半世紀以上にわたった栃内忠男(中39期)…と、美術館と見間違えそうな顔ぶれである。
加えて、全道展会員のベテラン齋藤洪人(高2期)や玉村拓也(高4期)、福島幸寿(高20期)、山本恒二(同)、新道展の鈴木薫(高27期)も出品。鈴木の抽象画「根の世界に聞く」は200×227センチの大作だ。水彩のベテラン武田輝雄(高21期)もいる。
全道展の絵画では若手の代表格である波田浩司(高42期)も「舞う日」を出している。波田は高校在学中、学生美術全道展で2年連続の文部大臣賞という快挙を成し遂げている。
高8期の中谷武は市立小樽美術館も作品を所蔵しており、中央画壇で活躍してきた画家だ。
栃内の後を襲って顧問を務める川本ヤスヒロ、若手では、裸婦と水を組み合わせた絵で全道展で入選をつづけている中川治(高50期)をはじめ、平塚翔太朗(高52期)、清野有香(高54期)も。清野「未来」は、男性の頭部を大きく描いたパワフルな作だ。
このほか、今回は作品が出ていないが、初期の道展で活躍した山本菊造と渋谷政雄は中14期である。
現会員は油彩25点、銅版画7点を出品。3年生4人、2年生8人、1年4人で、女子の方が多い。
門田結衣「バスタブ」は学生美術全道展の奨励賞受賞作。モノトーンで、バスタブと両足を描いた作で、足に異様な模様が浮き出ている。青春の孤独を浮き彫りにした異色作。
金澤凌「ロングワンダーリム」も、ちょっとことばでは説明できない奇妙なかたちが躍る作品で、おなじく学生美術全道展で奨励賞。
この中では、天野有理「靴を脱いで おやすみ」が、優しい心根をのぞかせて、目を引く。下り階段の描写には難儀したようだが、雰囲気は出ている。
感慨深かったのが福井バク(高31期)「自然への同化」。
F100号の大作で、裸婦ふたりが森の中で小鳥を放している様子を描いている。自然と自由を愛する心根が無理なく表現されていると思うが、これが高校在学中の作というから驚くしかない。
彼は全道展で5度入賞という空前にしておそらく絶後の記録をつくっている。なぜこれが空前かというと、ふつうは2回か3回賞を得ると会友に昇格するからだ。これほどの実績があって会友推挙が遅れた理由は分からないが、あるいは彼が若すぎたためなのかもしれない。本人が早世した今となっては確かめるすべもないが。
ともあれ、100回展おめでとうございます。次は発足100年に向け、会の発展を祈念いたします。
2010年2月9日(火)-14日(日)10:00-7:00(最終日-5:00)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階 地図B)
■第99回
■第98回
■第94回
■第93回(10日の項)
■第92回
■第91回(10日の項)
=第91回以外は画像なし
「どんぐり会」の第1回は1915年(大正4年)に開かれた。
道南の赤光社や、道展などに比べても古く、これよりも歴史をさかのぼれる道内の美術団体としては、北大の黒百合会ぐらいしかないと思われる。
旧制北海中学が、戦後の学制改革で北海高校となり、さらに近年共学となった1世紀近い歩みのなかで、「どんぐり会」は、学生美術全道展で多くの受賞者を輩出し、その後画家として活躍している人も多い。
今回は100回記念ということで、OBも多数出品したため、高校の美術部展とは思えないほどの豪華な顔ぶれとなった。
スカイホールを全面使い、入り口から左側には現役高校生の作品、右にはOBの作が並ぶ。
中でも目立っているのが、北海道を代表する彫刻家、本郷新(1905~80、中学19期)による南部忠平の胸像。
ふだんは北海高校の玄関に設置されているらしい。
南部忠平は、いうまでもなく、戦前のロサンゼルス・オリンピック三段跳び競技で金メダルに輝き、世界記録の保持者でもあった、陸上の名選手。
その手前には、全道展で活躍する韮沢淳一(高校20期)の抽象彫刻。
さらに、彫刻家で、挿し絵画家としても大活躍した梁川剛一(中17期)、自由美術で活躍した菊地精二(中21期)、夕張ゆかりの風刺画家森熊猛(中23期)、戦後の道内抽象画をリードし「反骨の画家」といわれた菊地又男(中30期)、日展会員で、羊ケ丘にあるクラーク像の作者として知られる坂坦道(中33期)、全道展をリードし、「どんぐり会」顧問としても四半世紀以上にわたった栃内忠男(中39期)…と、美術館と見間違えそうな顔ぶれである。
加えて、全道展会員のベテラン齋藤洪人(高2期)や玉村拓也(高4期)、福島幸寿(高20期)、山本恒二(同)、新道展の鈴木薫(高27期)も出品。鈴木の抽象画「根の世界に聞く」は200×227センチの大作だ。水彩のベテラン武田輝雄(高21期)もいる。
全道展の絵画では若手の代表格である波田浩司(高42期)も「舞う日」を出している。波田は高校在学中、学生美術全道展で2年連続の文部大臣賞という快挙を成し遂げている。
高8期の中谷武は市立小樽美術館も作品を所蔵しており、中央画壇で活躍してきた画家だ。
栃内の後を襲って顧問を務める川本ヤスヒロ、若手では、裸婦と水を組み合わせた絵で全道展で入選をつづけている中川治(高50期)をはじめ、平塚翔太朗(高52期)、清野有香(高54期)も。清野「未来」は、男性の頭部を大きく描いたパワフルな作だ。
このほか、今回は作品が出ていないが、初期の道展で活躍した山本菊造と渋谷政雄は中14期である。
現会員は油彩25点、銅版画7点を出品。3年生4人、2年生8人、1年4人で、女子の方が多い。
門田結衣「バスタブ」は学生美術全道展の奨励賞受賞作。モノトーンで、バスタブと両足を描いた作で、足に異様な模様が浮き出ている。青春の孤独を浮き彫りにした異色作。
金澤凌「ロングワンダーリム」も、ちょっとことばでは説明できない奇妙なかたちが躍る作品で、おなじく学生美術全道展で奨励賞。
この中では、天野有理「靴を脱いで おやすみ」が、優しい心根をのぞかせて、目を引く。下り階段の描写には難儀したようだが、雰囲気は出ている。
感慨深かったのが福井バク(高31期)「自然への同化」。
F100号の大作で、裸婦ふたりが森の中で小鳥を放している様子を描いている。自然と自由を愛する心根が無理なく表現されていると思うが、これが高校在学中の作というから驚くしかない。
彼は全道展で5度入賞という空前にしておそらく絶後の記録をつくっている。なぜこれが空前かというと、ふつうは2回か3回賞を得ると会友に昇格するからだ。これほどの実績があって会友推挙が遅れた理由は分からないが、あるいは彼が若すぎたためなのかもしれない。本人が早世した今となっては確かめるすべもないが。
ともあれ、100回展おめでとうございます。次は発足100年に向け、会の発展を祈念いたします。
2010年2月9日(火)-14日(日)10:00-7:00(最終日-5:00)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階 地図B)
■第99回
■第98回
■第94回
■第93回(10日の項)
■第92回
■第91回(10日の項)
=第91回以外は画像なし