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伊藤聰展(函館)

2005年11月17日 22時23分04秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 函館の行動美術協会(行動展)会員の画家による個展。
 80-200号の、大きな油彩25点が展示されています。

 1976~85年の10点と、88年以降の15点で、作風が一変します。
 前半は、画面のほとんどを朱色が覆い、その中から、戯画的な人物が1ないし3人浮かび上がってくるというものです。
 人物はきわめてデフォルメされている上、描線もはっきりしないので、ぼんやり見ているだけではわからないほどです。
 しかし、いったん目に付くと、ゴヤの晩年の絵を思わせるような、グロテスクさとユーモラスな表情をそこに感じ取ることができました。

 後半は一変して青が主調となります。
 しかも、88年と89年の計4点は、水色の筆触がオールオーヴァーに白い地の上に
おかれたものでしたが、90年以降は、やや彩度の低い、インディゴを薄めたような、独特の青の線と飛沫が画面をかたちづくるようになり、現在に至ります。
 これらの作品は、白の地と青い部分の鮮やかな対照が、どこか墨象を思わせます。ただし、仔細に見ると、地の絵の具のすきまから、朱色など他の色が顔を出している場合もあり、絵の具の物質感もあわせ、やはり書道とはちがいます。

 「雪原律」「流・響」といった題名からも推察できるよう、これらの抽象画が表現しているのは、やはり北国の風土ではないかと思います。
 滝が流れ落ちる一瞬、あるいは、吹雪のなかの一刹那が、北国の風土ぜんたいを表象するものたりえています。
 それは、一見即興的に見えてじつは構築的な筆触と飛沫の織りなす画家の精神でもあると思います。

 出品作は次のとおり。
 「赤の語らい」(1976年、F130、第31回行動展)
 「赤のお話」(同、F120、第31回行動展)
 「赤に聞く」(77年、F100、第8回行動美術新人選抜展=紀伊國屋画廊=、第32回全道展)
 「赤に呟く」(同、F100、第8回行動美術新人選抜展=紀伊國屋画廊=)
 「裁きを待つ」(78年、F130、第33回行動展)
 「予感」(同)
 「物乞」(1979年、F200、第34回行動展、第37回全道展)
 「乞う」(80年、F150、第35回行動展)
 「嘲」(81年、F150、第36回行動展)
 「到来」(85年、F150、第40回記念行動展)
 「アンダルシアの諧調」(88年、S80、第43回全道展)
 「律」(同、F150、第43回行動展)
 「白亜のきらめき」(89年、S80、第44回全道展)
 「散在・響」(89年、F150、第44回行動展)
 「拡散・響」(91年、F150、第46回行動展)
 「飛散・響」(92年、F150、第47回行動展)
 「流・響」(95年、F100、伊藤聰展=文藝春秋画廊)
 「雪原律」(同)
 「流・響」(95年、F150、第50回記念行動展)
 「流動・響」(96年、F150、第51回行動展)
 「瀑・響」(98年、F150、第53回行動展)
 「凍韻」(99年、F120、第54回行動展)
 「濤・響」(2000年、F150、第55回行動展)
 「潮騒」(2001年、F150、第56回行動展)
 「流景」(2004年、F120、第59回行動展)


 11月14日~20日、函館市芸術ホール(函館市五稜郭町。道立美術館の隣)
 

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