(敬称略)
公立学校共済組合北海道支部などが主催し毎年1月に開いている総合展覧会。絵画、彫刻、工芸、書道、写真の5部からなる。
道内の公立小中高の教員(道教委にまわっている人も含む)が対象なので、私立中高や大学の先生たちは出品していない。
今年は、40回の節目ということで、これまでの会で賞を得て展覧会を運営・審査する側に回った人たちに加えて、すでに教壇を去った大先輩の教員OBにも声をかけたので、作品自体は見ごたえのあるものが並んでいる。
この展覧会タイトルで、日本を代表する書家の中野北溟や、釧路の日本画家羽生輝の作品に出合えると思う人はあまりいないのではだろうか。
実行委の方にお聞きしたら、60人余りの教員OBに声をかけ、そのうち三十数人から出品の快諾を得たとのことであった。
絵画は工藤善蔵、坂口清一、佐藤吉五郎、北山寛一、斎藤洪人、古屋五男、河瀬陽子、村谷利一、江川博、川西勝、近藤弘毅、高澤のり子、氏家功、藤井正治。彫刻は山下嘉昭と佐藤輝彦。工芸は飛鷹岸男、石水秀雄、山本恒雄、中瀬正道、伯谷巌、中畑洋、冨所義之である。
また、招待作品のほうも、道展や全道展、新道展の会員・会友クラスが多く、新作を発表してかなり見ごたえがある。
しかし、裏を返せば、書道・写真の2部はともかく、他の3部は一般出品者のほうが少なく、質の面でも、招待作品・入賞作と一般入選作とは相当の開きがあることの反映でもある。
絵画は24点、彫刻3点、工芸6点、書道79点、写真45点で、工芸は史上最少である。
出品者のうち優秀な層は道展などと重なっているし、アマチュアらしい作品を出している人々は忙しくてそうそう大作などにとりかかっている時間がないのかもしれない。
それを考えると、ことしの会場に大御所の作品が並んでいるからといって、単純に喜んでばかりもおれない。(第2室に、おもに賛助出品のOBが展示されている)
そもそも何の目的でこの展覧会が存在しているのかが問われると思う。
もうひとつ書いておきたいのは、以前もボヤイたかもしれないけど、みなさん本名で出品しているため、書の場合は、ふだん使用している雅号が使えないし、最近は絵画で、結婚前の姓を通称として使っている人が増えているため、「あれ、この作品誰だったっけ」ということがとても多いのだ。
ぜひ来年以降、本名以外の雅号・旧姓などの使用を認めるよう、検討してもらいたいと思う。
あと、映像とかインスタレーションといった分野はどうなるのか(版画もないし)といった当然の疑問もあるのだが…。
以下、個々の作品について簡単に。
ことしは、節目の年とあって、各部門ごとに「記念賞」が贈られた(ただし彫刻は該当なし)。
つぎの画像で、左手前に見えているのは、絵画部門の受賞作である工藤千波(札幌市立豊明高等養護)「ふたつめの言葉」。
日本画の大作である。
手前に羽の生えているウサギもいるし、動物と人物をダイナミックに配した構図はどう見ても駒澤千波さんなのだが。
この斜め向かいには、今橋香奈子「ひそやかな刻」(空知管内奈井江町奈井江中)が特選受賞作として展示されており(下の画像で、右から三つ目)、ことしは日本画が上位に目立つ。
もう1点の特選は、油彩で、西村徳清(留萌中)「生命の祭壇」。
つぎの画像、いちばん手前は、招待作品の竹津昇(東千歳中)「光陰」。
例によって農家の納屋を粘り強く描いている。彼は彫刻にも一般出品して、特選になっている。
奨励賞には、全道展入選の常連である中川浩(札幌・伏見小)と道展の川畑摩沙子(網走管内小清水小)。
一般入選では、南富幸(釧路工高)「厚岸風景」が、黒々とした輪郭線でじっくりと広がりある風景に取り組んでいる。
絵画の招待出品で目を引いたのが、土井善範(札幌・鴻城小)「ひとびと」。
ビニール傘とスパナを手にすわるスーツ姿の男、ポンプ式井戸、しま模様の三角帽子をかぶった犬、遠景にはふしぎなプールの岸辺にテントが立ち、縄跳びをしながら走る少女のシルエットが…。
満月が浮かぶ黄緑色の空も含め、夢幻的で、どこかとぼけた味わいは、独特のものだ。
彫刻は、1点をのぞいてすべて裸婦や首。
工芸は陶芸が大半で、壺が多い。
書道は、高谷義仁(札幌・南が丘小)の墨象「宙」が記念賞。
特選には、長岡真貴子(札幌藻岩高)のかなと、東方郁夫(名寄・風連日新小)、伊藤文江(旭川・聖園中)の近代詩文が選ばれている。
一般入選では、白石かずこの詩を題材に選んだ岸美千代(旭川商高)、雪をグラフィックにとらえた豊田未央(旭川・神居小)の冒険心が、心ひかれた。
協賛出品・招待出品は、道内書壇の中軸をなす層が出品しているので、この展覧会の白眉である。
中野友房、東志隆、須田廣己、羽毛國雄ら、いずれも作品を見ればすぐに雅号が浮かんでくる、豪華メンバーだ。
しかし、筆者が思わず足を止めたのが、柏聡(札幌開成高)の「争坐位文稿」。とても顔真卿の臨書とは思えない独特の書きぶりであり、およそ流麗ということを拒否するのが眼目であるかのように、ゴツゴツとした運筆であるが、それを見ているとあらためて「書ってなんだろう」と思えてくるのであった。
写真は安部紀江(千歳・東小)「秋眠」が記念賞。
生徒にレンズを向けた作品が意外と少なく、ネイチャーが多い。これも時代の流れか。
2010年1月9日(土)-13日(水)10:00-5:00(最終日-3:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
■第39回 ■続き
■第38回北海道教職員美術展
■第36回北海道教職員美術展
・地下鉄東西線「バスセンター前」10番出口から徒歩3分、同「菊水」駅1番出口から徒歩8分
・ジェイアール北海道バス、中央バス、夕鉄バス「サッポロファクトリー前」から徒歩7分(ファクトリー線は徒歩9分)。札幌駅・都心から現金のみ100円
・中央バス「豊平橋」から徒歩11分
=駐車場ありません
1月30日(土)-2月7日(日)9:00-5:00
知内町文化交流センター(渡島管内知内町森越103)
公立学校共済組合北海道支部などが主催し毎年1月に開いている総合展覧会。絵画、彫刻、工芸、書道、写真の5部からなる。
道内の公立小中高の教員(道教委にまわっている人も含む)が対象なので、私立中高や大学の先生たちは出品していない。
今年は、40回の節目ということで、これまでの会で賞を得て展覧会を運営・審査する側に回った人たちに加えて、すでに教壇を去った大先輩の教員OBにも声をかけたので、作品自体は見ごたえのあるものが並んでいる。
この展覧会タイトルで、日本を代表する書家の中野北溟や、釧路の日本画家羽生輝の作品に出合えると思う人はあまりいないのではだろうか。
実行委の方にお聞きしたら、60人余りの教員OBに声をかけ、そのうち三十数人から出品の快諾を得たとのことであった。
絵画は工藤善蔵、坂口清一、佐藤吉五郎、北山寛一、斎藤洪人、古屋五男、河瀬陽子、村谷利一、江川博、川西勝、近藤弘毅、高澤のり子、氏家功、藤井正治。彫刻は山下嘉昭と佐藤輝彦。工芸は飛鷹岸男、石水秀雄、山本恒雄、中瀬正道、伯谷巌、中畑洋、冨所義之である。
また、招待作品のほうも、道展や全道展、新道展の会員・会友クラスが多く、新作を発表してかなり見ごたえがある。
しかし、裏を返せば、書道・写真の2部はともかく、他の3部は一般出品者のほうが少なく、質の面でも、招待作品・入賞作と一般入選作とは相当の開きがあることの反映でもある。
絵画は24点、彫刻3点、工芸6点、書道79点、写真45点で、工芸は史上最少である。
出品者のうち優秀な層は道展などと重なっているし、アマチュアらしい作品を出している人々は忙しくてそうそう大作などにとりかかっている時間がないのかもしれない。
それを考えると、ことしの会場に大御所の作品が並んでいるからといって、単純に喜んでばかりもおれない。(第2室に、おもに賛助出品のOBが展示されている)
そもそも何の目的でこの展覧会が存在しているのかが問われると思う。
もうひとつ書いておきたいのは、以前もボヤイたかもしれないけど、みなさん本名で出品しているため、書の場合は、ふだん使用している雅号が使えないし、最近は絵画で、結婚前の姓を通称として使っている人が増えているため、「あれ、この作品誰だったっけ」ということがとても多いのだ。
ぜひ来年以降、本名以外の雅号・旧姓などの使用を認めるよう、検討してもらいたいと思う。
あと、映像とかインスタレーションといった分野はどうなるのか(版画もないし)といった当然の疑問もあるのだが…。
以下、個々の作品について簡単に。
ことしは、節目の年とあって、各部門ごとに「記念賞」が贈られた(ただし彫刻は該当なし)。
つぎの画像で、左手前に見えているのは、絵画部門の受賞作である工藤千波(札幌市立豊明高等養護)「ふたつめの言葉」。
日本画の大作である。
手前に羽の生えているウサギもいるし、動物と人物をダイナミックに配した構図はどう見ても駒澤千波さんなのだが。
この斜め向かいには、今橋香奈子「ひそやかな刻」(空知管内奈井江町奈井江中)が特選受賞作として展示されており(下の画像で、右から三つ目)、ことしは日本画が上位に目立つ。
もう1点の特選は、油彩で、西村徳清(留萌中)「生命の祭壇」。
つぎの画像、いちばん手前は、招待作品の竹津昇(東千歳中)「光陰」。
例によって農家の納屋を粘り強く描いている。彼は彫刻にも一般出品して、特選になっている。
奨励賞には、全道展入選の常連である中川浩(札幌・伏見小)と道展の川畑摩沙子(網走管内小清水小)。
一般入選では、南富幸(釧路工高)「厚岸風景」が、黒々とした輪郭線でじっくりと広がりある風景に取り組んでいる。
絵画の招待出品で目を引いたのが、土井善範(札幌・鴻城小)「ひとびと」。
ビニール傘とスパナを手にすわるスーツ姿の男、ポンプ式井戸、しま模様の三角帽子をかぶった犬、遠景にはふしぎなプールの岸辺にテントが立ち、縄跳びをしながら走る少女のシルエットが…。
満月が浮かぶ黄緑色の空も含め、夢幻的で、どこかとぼけた味わいは、独特のものだ。
彫刻は、1点をのぞいてすべて裸婦や首。
工芸は陶芸が大半で、壺が多い。
書道は、高谷義仁(札幌・南が丘小)の墨象「宙」が記念賞。
特選には、長岡真貴子(札幌藻岩高)のかなと、東方郁夫(名寄・風連日新小)、伊藤文江(旭川・聖園中)の近代詩文が選ばれている。
一般入選では、白石かずこの詩を題材に選んだ岸美千代(旭川商高)、雪をグラフィックにとらえた豊田未央(旭川・神居小)の冒険心が、心ひかれた。
協賛出品・招待出品は、道内書壇の中軸をなす層が出品しているので、この展覧会の白眉である。
中野友房、東志隆、須田廣己、羽毛國雄ら、いずれも作品を見ればすぐに雅号が浮かんでくる、豪華メンバーだ。
しかし、筆者が思わず足を止めたのが、柏聡(札幌開成高)の「争坐位文稿」。とても顔真卿の臨書とは思えない独特の書きぶりであり、およそ流麗ということを拒否するのが眼目であるかのように、ゴツゴツとした運筆であるが、それを見ているとあらためて「書ってなんだろう」と思えてくるのであった。
写真は安部紀江(千歳・東小)「秋眠」が記念賞。
生徒にレンズを向けた作品が意外と少なく、ネイチャーが多い。これも時代の流れか。
2010年1月9日(土)-13日(水)10:00-5:00(最終日-3:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
■第39回 ■続き
■第38回北海道教職員美術展
■第36回北海道教職員美術展
・地下鉄東西線「バスセンター前」10番出口から徒歩3分、同「菊水」駅1番出口から徒歩8分
・ジェイアール北海道バス、中央バス、夕鉄バス「サッポロファクトリー前」から徒歩7分(ファクトリー線は徒歩9分)。札幌駅・都心から現金のみ100円
・中央バス「豊平橋」から徒歩11分
=駐車場ありません
1月30日(土)-2月7日(日)9:00-5:00
知内町文化交流センター(渡島管内知内町森越103)